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2019.06.23

『鬼滅の刃』第十二話 「猪は牙を剥き 善逸は眠る」

 鼓の音で空間を操る鬼・響凱と、謎のイノシシ男に遭遇した炭治郎。見境無く襲いかかってくるイノシシ男と乱闘している間に再び別の部屋に飛ばされた炭治郎とてる子は、そこで探していた少年と出会う。一方、炭治郎とはぐれた善逸と正一も別の鬼と遭遇、追いつめられた末に寝てしてしまう善逸だが……

 小生という小説家みたいな一人称の割には諏訪部声でブツブツ喋るゴツい鬼と、やたらとテンションの高い猟奇イノシシ男と、閉ざされた和風建築で一、二を争うくらい会いたくない連中と遭遇してしまった炭治郎とてる子。鬼――響凱が身体から生えた鼓を叩けば部屋が回転し、文字通り振り回される炭治郎ですが、同様の状態のイノシシ男がてる子を踏みつけにしたことに激怒、足を捕まえて片手でブン投げるという、何気に怪力ぶりを発揮いたします。
 しかしこれが闘争本能に火をつけたか、鬼そっちのけで襲いかかってくるイノシシ男。さらに家の中で騒がれて腹を立てた響凱の攻撃まで繰り出され、大混乱の中、突然炭治郎とてる子は、別の部屋に飛ばされるのでした。響凱は鼓を叩いていないのに――と思いながら屋敷内を探検してみれば、部屋の一つには鼓を手にした少年が……

 一方、はぐれてしまった善逸と正一は、屋敷の中なのに縁の下があるという、冷静に考えたら妙な構造のエリアを(善逸だけが)パニックに陥りつつ歩き回るのですが――四つ目に長い舌の鬼が、縁の下からズリズリ出てくるという、ホラーゲームのような展開が!
 絶叫してわたわたと情けなく逃げまどいながらも、それでも決して正一の手は離さず、彼の身を案じて先に逃がそうとまでするところに人の良さが現れる善逸。しかしついに行き止まりに追いつめられたその時、善逸の中で何かがはじけた! ……と思ったらそのまま寝始めた善逸。正一だけでなく観ている側もどうリアクションしたらよいかわからなくなってきた中、鬼の舌が二人に迫る――と思いきや、いきなり舌の先が吹き飛んだ!

 鬼の舌を切り落としたのは寝ていたはずの善逸の刀――立ち上がった善逸は極端な前傾の抜刀姿勢のまま、口からはなんか蒸気まで吐き出して攻撃開始の構え。と、次の瞬間に繰り出されたのは、雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃! 走り抜けざまの神速の抜刀により、見事に一撃で鬼の首を切り飛ばした善逸ですが、しかし本人は眠っている=意識を失っているまま……知らぬは本人ばかりなり、正一がやってくれたと思いこむ善逸の途方もないナニっぷりに、再び正一だけでなくこちらも困惑するしかないのでした。
 ちなみにその頃、猟奇イノシシ男は絶好調で屋敷内を突っ走りつつ、出くわした見るからにモブい肥満鬼を一撃で叩き斬ったりしていました。

 そして炭治郎の方に戻ってみれば、彼らが出会った少年こそは、鬼にさらわれたという清。実は彼こそは稀血なる、読んで字の如しの血液の持ち主であり、鬼にとっては貴重な食料扱いだったのであります。そしてそれが災いしてまさに餌食になろうとしていた時、鬼同士の仲違いで響凱の鼓の一つが叩き落とされ、無我夢中でそれを拾って叩いてみれば、部屋をワープしたというのです。
 それを聞いて、何かあったらすぐ鼓を叩くように清とてる子に言いおき、二人を残して響凱退治に向かう炭治郎。そして今度は邪魔抜きで響凱と退治する炭治郎ですが――鼓によって左右前後に部屋が回転させ、さらに衝撃波を放ってくる響凱はやはり強敵です。

 それもそのはず、響凱は元・十二鬼月――と言っても一番下の下弦の陸であり、しかも人間を食べられなくなって無惨様に給食ハラスメントのような感じで地位を剥奪されたりしましたが(これくらいで済んだのは実はすごい幸運だと思う……)、それでも今の炭治郎には強敵であります。
 そう、前回は鬼滅隊公認の戦いでないためかロクに回復期間も与えられていない炭治郎は、体中の痛みに立っているのがやっとの状態。冷静に聞けば泣き言満載のモノローグを延々と続ける炭治郎ですが、しかし最後は半ばヤケクソ気味に自分自身を応援し始めて復活。何はともあれ、炭治郎の反撃はここからであります。


 ようやくペースアップし、原作三話分を消化した今回。三人三様の戦いが描かれましたが、その中で良くも悪くも目立っていたのはやはり善逸でしょう。
 今回観ていて「汚い高音だなあ――そういえば原作で(汚い高音)と書かれたのはこの辺りだったかしら」となどと思っていたら、まさにそのシーンがそれだったのには、声優さんの演技力に驚きましたが、それはさておき、滅茶苦茶なキャラクターの善逸が動き回ると、やはり物語に緩急が出てきて、これまでとはまた異なる楽しさがあります。

 しかし(汚い高音)といい、正一の内心描写といい、原作の面白いナレーション(?)がアニメ版ではことごとくオミットされているのは、やはりちょっと勿体ない……


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