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2019.06.09

『どろろ』 第二十一話「逆流の巻」

 醍醐と朝倉の緊張が高まる中、自分の体を求め、がむしゃらに醍醐領に突き進む百鬼丸。そんな百鬼丸を醍醐に仇なす者として、多宝丸は陸奥・兵庫とともに立ち塞がるのだった。三対一の戦いでも多宝丸らを圧倒し、追いつめる百鬼丸。しかしその時、思わぬ乱入者が現れ……

 前回、岩に挟まったどろろを助けることが出来ず、これまで以上に自分自身の体を取り戻そうという気持ちが高まった百鬼丸。時あたかも醍醐と朝倉が一触即発となり、いつ戦が始まってもおかしくない状況、多くの人々が醍醐を避ける中を、逆らうように百鬼丸は醍醐領を目指すのでした。
 親切心から醍醐に行くなと声を掛けた相手にまで刃を向けるほど、他のことが目に入らなくなっている百鬼丸を案じるどろろ。しかし百鬼丸のその行動の根底にあるのが、自分自身の手でどろろに触れたい、自分自身の目でどろろと同じものを見たいという想いであると理解できるだけに、強く百鬼丸を止めることはできません。

 その頃、醍醐領では迫る戦に加えて伝染病が流行し伝染を避けるために村ごと焼き払う一方で、戦のために人馬を徴用するなど、庶民にとってはあまりに残酷な状況が続きます。今も、百姓が可愛がっていた馬・ミドロ号が、子馬から引き離されて連れていかれることに……
 と、そんな状況に胸を痛めるのは、陸奥と兵庫(そういえば白骨岬で深手を負ったのかと思えば全然普通に登場)――かつて戦に巻き込まれて隣国に捕らわれ、非人間的な扱いを受けた過去を持つ二人は、戦を止めるため、主の多宝丸を助けて百鬼丸を討つことを改めて心に誓うのでした。

 そして醍醐軍が朝倉に向けて出陣する一方で、醍醐に迫る百鬼丸を迎え撃つ多宝丸ら三人。両者は、屍が累々と転がる谷間を望む道で対峙、鴉が一斉に舞い立つ中、ついに三度目の戦いが始まることとなります。――が、陸奥の弓を躱し、兵庫の大力もものとはせず、かえってそれぞれの片腕を叩き斬る百鬼丸。彼らがそれぞれ多宝丸の右腕と左腕を自称していることを思えば、あまりに残酷な皮肉ですが――もちろん百鬼丸がそれを知ることも気にすることもなく、兄弟は激しく刃を交えることになります。
 お返しのつもりか顔を狙う多宝丸の刃をギリギリのところで躱し、逆に再び多宝丸の顔に一太刀見舞う百鬼丸。もはや勝負あったかと思われた時、その場に乱入してくる騎馬の者たちが……。それは醍醐景光直属の隠密――これまでもしばしば顔を出して渋い動きを見せていた名もなき隠密ですが、今回は多宝丸を守るために、密かに伏せていたのであります。

 あのミドロ号に乗り、百鬼丸に迫る隠密。しかしミドロ号には、幾つもの爆裂弾がくくりつけられ――その爆裂弾に点火して自分は飛び降りた隠密は、無情にもミドロ号の尻に矢を打ち込み、百鬼丸に突っ込ませたではありませんか。暴走の末に哀れミドロ号は大爆発、百鬼丸も爆発に巻き込まれ、バラバラになったミドロ号もろとも、谷底に転落していくのでした。
 そしてなおも戦おうとする多宝丸を吹き矢で眠らせて連れ帰る際に、人質にとどろろをも連れ去る隠密。一方、谷底で転がるミドロ号の躯には幾つもの怪火が集まり、そしてそれが一つとなった時、そこには炎をまとった妖馬の姿が……


 残すところ、今回を含めてついに四話となった本作。今回はストーリー的にはある意味シンプルな内容ですが、しかしどう考えても誰も幸せになれそうにない結末(陸奥は疫病に感染している様子でもあり……)に向けてジリジリと物語が動いていく様には、大いに心をかき乱されました。

 そしてここでミドロ号が登場、原作で因縁のあった三郎太は前回死んでしまった上に、本馬もびっくりするくらい雑な形で殺されてしまうのですが――しかしミドロ号の場合、ここからが本格的な出番。百鬼丸もろとも谷底に転落したミドロ号には、どうやら次回、相当意外な場面が用意されているようであります。
(しかし原作で百鬼丸と戦った妖怪の中で、あと残すは、どんぶりばらと四化入道のみ。さすがにこの先登場するのは難しそうですが……)

 そして、百鬼丸と多宝丸の対決でえらくダイナミックで力の入った剣戟が描かれつつも、その他の場面の作画はかなりヤバ目だった本編に対し、EDではこれまでと映像が変化し、ラストに美しいどろろの顔が描かれることになります。
 百鬼丸の視界ということなのでしょう、これまでぼんやりとシルエットが映るだけだったEDで、ついにどろろの顔が描かれたことには如何なる意味があるのか――この光景を、本編でも百鬼丸が目にすることができるよう、祈りたいところであります。


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