『鬼滅の刃』 第十六話「自分ではない誰かを前へ」
那田蜘蛛山に潜む鬼に操られる鬼殺隊士たちに襲われる炭治郎と伊之助。卑劣かつ非情な敵に怒りを燃やして進む二人の前に、首を持たない怪物が現れる。炭治郎の的確な指示で怪物を倒した二人は、その余勢を駆って母鬼をも倒すのだが……
敵に操られる隊士たちの襲撃を受けた炭治郎と伊之助(善逸はへたれて置いてけぼり)が、その敵の居場所を看破して――というところで終わった前回。しかし目の前には操られた隊士たちが立ち塞がって――というところでいきなり男を見せたのは、モブ隊士の村田さんであります。「ここは俺に任せて先に行け!」とやたらと格好良い台詞で二人を送り出します。
が、すぐに二人の前に立ち塞がったのは、操られるその他の隊士たち。肉体の限界を超え、体を損壊しつつも攻撃してくる者や、既に体中がずたずたになって殺してくれと訴えてくる者と、もう大変な鬱展開なのですが――ここでめげる炭治郎ではありません。
攻撃できず、そして糸を斬ってもすぐ繋げられてしまう状態――それなら糸を斬らずに動きを封じることができれば、というわけで、相手を捕まえて樹の上に投げ上げ、枝に糸を絡ませてしまおうという炭治郎の策は大成功。こういう変わったことには目がない伊之助も大喜びでチャレンジして成功、これで隊士たちを助けられる――と思いきや、怒った母鬼の手で隊士たちは全員首を捻られて……
さすがの伊之助も黙るほど怒りのオーラを漂わせる炭治郎。決意も新たに先に進む二人の前に現れたのは――母鬼の切り札、首のない肉体に、肘から先を昆虫めいた奇怪な刃に変えた異形の「人形」であります。冷静に考えれば鬼じゃないのだから首がなくてもまあ何とかなる気もしますが、しかし伊之助は急所が無ェと、ちょっとびっくりするほど大慌て。そこで炭治郎は冷静に、袈裟斬りにしてみてはどうかと提案するのでした(これはこれで怖い子だな)。
そこまで聞いていきなり突っ込む伊之助。しかし蜘蛛に動きを封じられ、身動きできずに目の前に迫る敵の刃――というところで割って入ったのはもちろん炭治郎。危機一髪のところを助けられて好感度ゲージがホワホワ上がる(まあ、より正確には人間との関係性ゲージなのだと思いますが)伊之助にダメ押しするように、炭治郎は力を合わせた攻撃を提案、さらに自分を踏み台にして跳べと促すのでした。
そして炭治郎が相手の足を斬れば、大ジャンプした伊之助は相手の巨体を袈裟斬りに――この見事なコンビネーションの源が、俺が俺がではなく、戦いの流れを見ている炭治郎にあるとと、さすがの伊之助もついに認めるのでした。(しかしこの「人形」、斬られるとボロボロになって消えたというのは鬼の死体を人形にしたということなのか?)
が、ここで素直になれない伊之助は、炭治郎を捕まえると上にぶん投げ、そのまま炭治郎は母鬼のところへ一気に到達。突然目の前に現れた炭治郎に、母鬼は反撃を――しない。もはや奥の手も尽きたのもさることながら、父鬼からことあるごとにDVを受け、他の家族からも白眼視されていた彼女にとっては、もはや死こそが救いだったのであります。
そして自ら首を差し出した母鬼の動きを察知し、咄嗟に繰り出す技を伍ノ型 干天の慈雨に変えた炭治郎。例によってナレーションが入らないためにわかりにくいかもしれませんが、この型は相手に苦痛を与えない慈悲の剣撃であります。母鬼はむしろ暖かさすら感じたまま崩れ去るのでした。その間際に、この慈悲を与えた炭治郎に対し、十二鬼月がいると言い残して。
そしてその頃善逸は、ちゅん太郎をお供におっかなびっくり山の中に歩を進めるのですが、その後ろには……
一話丸々、母鬼との戦いであった今回。上で述べたように、操られて襲いかかる仲間を救えるかと思いきや結局救えない鬱展開の上に、鬼側ではDVが行われている(またこの時の会話が妙にリアリティのある厭な描写)という、冷静に考えると非常に気の滅入る内容なのですが、比較的その印象が薄いのは、炭治郎と伊之助の関係性の変化を丁寧に描いていたためでしょうか。
考えてみればなし崩し的に行動を共にしているものの、鼓屋敷での蛮行はやはりドン引きものの上に、結局炭治郎とはぶつかってばかりの伊之助。その伊之助が、真に炭治郎と仲間になったのは、今回からと言えるのではないでしょうか。
まあ、その時暴力を振るった相手の善逸はここにはいないのですが……
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