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2019.09.30

『鬼滅の刃』 第二十六話「新たなる任務」

 不甲斐ない十二鬼月の下弦解体を宣言する無惨。次々と下弦が殺されていく中、下弦の壱のみは許され、更なる力を与えられる。一方、訓練を終えた炭治郎たち三人は蝶屋敷の人々に別れを告げ、炎柱・煉獄と合流するために鬼が出没するという無限列車に乗り込む。そこで彼らを待つものは……

 最終回の今回、OP抜きでわちゃわちゃとなんだかんだで楽しそうな三人組が描かれたと思いきや、いきなり舞台は数ヶ月前、空間が歪み縦横が入り乱れた屋敷とも迷宮ともつかぬ場に移ります。そこに集まった、いや集められたのは十二鬼月の下弦――倒された累以外の五人。そして彼らの前に現れたのは異様に迫力のある美女――の姿に何故か変じている(本当に何故だ)鬼舞辻無惨であります。

 そしてここから始まる無惨名物のパワハラ独演会。何故お前らはそんなに成績が悪い(=柱に勝てない)のか、十二鬼月になって安心するのでなくもっと上を目指せ云々と、何だかサラリーマンの心に異常に刺さるお説教が繰り広げられるのですが――しかし無惨様の恐ろしさはここからなのです。
 余計なことを考えただけでも殺す。言うことをちょっと否定しても殺す。逃げても殺す。何か要望しても殺す――役に立たない下弦解体宣言をした無惨様に容赦とか道理とかいったものは一切なし。無惨から放たれる異常にCGっぽい鬼の腕とも触手ともつかぬものによって、下弦は次々と惨殺されていくことになります。しかし最後に残された下弦の壱は、他の鬼たちの断末魔を聞けた上に自分の事を殺してくれるなんて――むしろうっとり。その変態ぶりを気に入った無惨は、壱に自分の力を与え、パワーアップさせるのでした。

 そして時間は現在に戻り、四十人以上の行方不明者が出ているという無限列車(運行止めようよ)に向かえという指令を受けた炭治郎・善逸・伊之助。実はこの任務を推薦したのはしのぶ(ということは間接的に煉獄さんをアレしたのはしのぶということに……)ということのようですが、そうとは知らず、炭治郎は世話になった蝶屋敷の人々に別れを告げることになります。
 途中、なんか妙にゴツく目つきのおかしなモヒカン(一応同期)とすれ違うも無視されたのはノーカンとして、アオイさんとカナヲに挨拶をする炭治郎なのですが――アオイさんの想いは俺が戦いの場に持っていく、カナヲは自分の心の声をよく聞いて心のままに生きること、などと二人がそれぞれ心の奥底で望んでいたようなことを的確に突いてフラグを立てていく炭治郎は、ちょっと凄いと思います(たぶん善逸が見たらまた刃物振り回す)。

 そして三人娘の前で見事に巨大瓢箪に息を吹き込んで破裂させる炭治郎・善逸・伊之助。善逸と伊之助がそれぞれに別れを惜しむ中、炭治郎の前に現れたのは義勇さん!
 当たり障りのない言葉を贈る義勇さんに対し、目を輝かせて禰豆子のために腹切りを賭けてくれたことに礼を言う炭治郎。しかし義勇は大したことではないなどと、言うだけ言ってヒュンと消えてしまうのでした――ってこの人、これだけのために出てきたのか!(ちなみにここアニメオリジナルシーン) この先もこの調子で出番増やしそうだな……

 何はともあれ、無限列車に乗るために駅にやってきた三人組。伊之助と炭治郎が初めて見る機関車に明治初期の人間のようなリアクションを見せたり、思い切り刀を持ち歩いていたおかげで警官に追いかけられるなど色々とありましたが、何とか動き出した列車に飛び乗った三人――いや禰豆子も入れて四人は、OP曲に乗せて決意を新たにするのでした。
 そしてその列車には煉獄さんが、そして下弦の壱が――と戦いの予感を漂わせ、今回のアニメ、竈門炭治郎立志編(初めて知った!)は完結することになります。


 というわけでこのアニメ版『鬼滅の刃』も最終回――無限城(という名称は出ていませんが)内部や炭治郎とカナヲのやりとりなど、妙に作画が良い部分はありましたし、ところどころに入るオリジナルシーンも目を引いたのですが、まずは無難に終わったかと思います。
 無難と言ってもそれは原作に比べてという意味で、ようやく下弦を一人倒したと思ったら、残る下弦は一人を残して癇癪を起こした親玉に皆殺しにされるという展開は、やはり今見ても斬新といえば斬新であります。

 さて、最後にスタッフロールの後に「特報」と出たので、お、やはり第二期か――と思いきや、何と「無限列車編」映画化決定! 
 ……え、無限列車での戦いはTVでやらないのかしら、そもそも無限列車(その後の戦いも含めれば)だけで結構な分量の気がするのですが――などと思いましたが、今回も第1-5話分がTVに先駆けて劇場公開されたわけで、まずは続報を気長に待ちたいと思います。


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