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2019.09.18

皆川亮二『海王ダンテ』第8巻 秘宝争奪戦! 四つ巴のキャラが見せる存在感


 ダンテ=若き日のネルソンが、超古代文明の遺産の謎を求めて世界を股にかけた大冒険を繰り広げる『海王ダンテ』のエジプト編はいよいよ絶好調――エジプトの地底に広がる超古代文明の地下都市でのバトルは、三つ巴・四つ巴の秘宝争奪戦に突入することになります。

 宿敵ナポリオ(若き日のナポレオン)が怪しげな行動を取っているとの情報に、仲間たちとエジプトに飛んだダンテ。彼らが案内役と女性考古学者ジェーンとともに引きずり込まれた地底世界・「冥界」こそは、ナポリオが持つ「構成」の書がかつて作り上げた超古代の超科学文明都市でありました。
 そこで少年姿の管理者・セトに歓待されるダンテたちですが、しかしセトの真の狙いはダンテの書。さらにダンテを追うようにナポリオが、そしてナポリオの兄・ジョゼと死んだはずのダンテの育て親・コロンバス、そして不死人オルカとアルビダが乱入し、冥界は大混乱に陥ることになります。

 魔剣の刃に倒れた仲間の治療法が眠るという宝物庫の奥を目指すため、目的地が同じナポリオと一時的に手を組むダンテ。そしてセトによって死の罠の地下迷宮と化した宝物殿を進むダンテたちを待つ者は……


 これまでの主たる舞台だった大海原を離れ、砂漠――の地下都市「冥界」で展開するエジプト編。その2巻目となる本書では、冒頭からラストまで、ド派手なバトルと冒険が繰り広げられることになります。
 それもこれまでのダンテvsナポリオという構図とは異なり、冥界そのものが敵に回る上に、これまで物語の中で少しずつその姿を見せていた第三勢力までもが、本格的に参戦することになるのですからたまりません。

 その戦いに参戦するのは、
・ダンテ&ナポリオ&ジェーン
・コロンバス&ジョゼ&ティーチ
・オルカ&アルビダ
・セトと冥界の怪物たち
という、いわば四つのチーム。
 彼らそれぞれの個性と技、そしてやりとりを見ているだけでも実に楽しいのですが――この中で最も気になるのが、ダンテたちのチームの動向であることは間違いありません。

 何しろダンテとナポリオは、物語始まって以来の宿敵同士。いわば呉越同舟ということになりますが――しかしそれでも幼なじみだけにどこか心が通じ合っている様子なのがいい。特にこれまでは憎たらしい敵役だったナポリオは、前巻でその覚悟が描かれたこともあり、これまでとは少々違って見えてくるところです。

 そしてそれだけでなく、各チームの各メンバーがそれぞれに生き生きと魅力的に見えてくるのが、このエジプト編の見事な点であります。
 アクション面ではほとんど主役級のオルカ、手負いながらもあの能力は健在のアルビダ、これまであまり目立たないと思いきや超有名人で実力者(そしてある人物との意外な因縁が)のティーチ――と実に楽しいのですが、しかし中でも今回特に印象に残ったのはジョゼかもしれません。

 ナポリオの兄であり、生命の書の主であるジョゼ。そのビジュアルといい暗躍ぶりといい、いかにも真の敵然とした印象のキャラクターですが、このエジプト編では、さらに黒幕のコロンバスが登場したことで、いささか影が薄くなった印象がありました。

 しかしこの巻で描かれた彼の過去は壮絶の一言。本作の不幸枠はこの人だったか!(ビジュアル的にもそんな感じではあります)――というのはさておき、これまでの彼の印象がガラリとくる展開には驚かされます。
 そしてそんなジョゼの前に姿を現した生命の書のビジョンがまた泣かせるのですが――さて、ここからは、彼の存在が一つの鍵になるようにすら思われます。

 何はともあれ、皆川作品の魅力は、その派手なアクション描写もさることながら、何よりも、キャラクターたちの存在感――特にその強い意志の力にこそあるのではないかと、この大乱戦の中で改めて確認させられたところです。


 そんなそれぞれの思惑が絡み合いながらも、まだまだ戦いは続くエジプト編。
 ダンテたちヒーローだけでなく、哀しくも狂気の企みを巡らせるセトの行動の向かう先は、やはりあの人物であったコロンバスの狙いは、そしてどう考えてもまだ生きてるあいつは……

 と、悪役サイドも気になることだらけで、この先待ち受けるクライマックスがいよいよ楽しみになるのであります。


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