« 小山ゆう『颯汰の国』第1-2巻 颯爽たる国造りの物語、始まる | トップページ | 「コミック乱ツインズ」2019年11月号(その二) »

2019.10.15

「コミック乱ツインズ」2019年11月号(その一)


 2号連続増ページと、なるほどずっしりくる『コミック乱ツインズ』2019年11月号は、表紙が橋本孤蔵『鬼役』、巻頭カラーが星野泰視『宗桂 飛翔の譜』という構成。また、艶々『かきすて!』が新連載となります。今回も印象に残った作品を一つずつ紹介しましょう。

『宗桂 飛翔の譜』(星野泰視&渡辺明)
 大橋分家の天才児・宗英の昇段試験の相手となった宗桂。しかしあくまでも試験ということで宗桂は角落ち、互角の二人にとってこれは決定的な差になるかと思いきや、宗英も自ら角を封じて対等の勝負を望むのでした。
 しかし初めから角がない者と角を封じた者の違いが勝負に思わぬ影響を与え、勝負は見えたかに思えたのですが……

 宗桂が宗英に勝てば大橋分家が宗桂暗殺に動くという裏のあったこの一戦、もちろん二人はそんな事情は知らないのですが(知っていても宗桂は本気で打つと思いますが)、二人のそれぞれの個性が出て意外な好勝負に。
 しかし宗英の実はかなり悲惨な過去がカットバックされる中で宗桂が勝つのは――と思いきや(まあそれでも宗桂は本気で勝ちに行くと思いますが)、なかなか面白い形で決着が着くことになります。

 これでホッとしたのは、裏の事情を知っていた勝助ですが――しかしその陰謀の一端を担っていたのは、自分の婿入り先の義父。そしてその義父が、かつて初代宗桂の棋譜を巡って剣を交えた謎の男と接点があることを知ってしまい――と、思わぬ展開で続くことになります。


『暁の犬』(高瀬理恵&鳥羽亮)
 連載第2回にして、いま一番気になる作品の一つである本作。殺しを裏の生業とする主人公・佐内が、かつて同じ生業だった父を殺した必殺剣「二胴」を使う謎の刺客の殺しを依頼され――というところで第1回は終わりましたが、今回はこの依頼の裏の事情が語られることになります。

 実はこの事情というのが時代小説ファンにはお馴染みの、唐津藩主時代の水野忠邦の猟官運動――老中首座を狙う忠邦が、その障害となる唐津藩からの国替えを画策したというアレ。簡単に言ってしまえば、この忠邦の行動を支持する江戸家老と、反対する城代家老の暗闘が背景にあったのであります。
 佐内とその父は江戸家老側の刺客として、そして「胴斬り」の剣客は城代側の刺客として動いていたということなのですが――さてそれでは敵は何者なのか、というのが大きな謎。それを探るべく、佐内は動き出すのですが……

 思ったよりもあっさりと明かされたこの暗殺合戦の裏側。ということはそれはあくまでも物語の背景で、本題はやはり謎の剣客の正体探しということなのかもしれません。
 そちらはまだまだこれからと言ったところですが、今回の見所は、やはり佐内の人物像でしょう。前回も、暗殺者とごく普通の若者としての顔が印象に残りましたが、今回見ることができるのはそんな彼の様々な表情――ゾッとするような昏い殺人者の目を見せることもあれば、母親代わりの女中に見せる飾り気のない顔、そして父の死を前に見せるある意外な感情と、彼の複雑なキャラクターが、やはり大いに気になるところであります。

 そしてラストに登場する水野家側の協力者の侍もなかなか気になるキャラクターで、相変わらず先が楽しみな作品であります。(しかし佐内、公式で女顔の美形なのですね)


『勘定吟味役異聞』(かどたひろし&上田秀人)
 柳沢吉保の命で残忍な道場破りを繰り返す邪剣士・浅山鬼伝斎と、三十年来の決着をつけるべく急ぐ入江無手斎。かつては無手斎が勝利したこの対決ですが、復仇の念から腕を磨いた鬼伝斎の技は凄まじく――と、今回は冒頭から達人同士の息詰まる死闘がたっぷりと描かれることになります。
 無手斎も十分コワい顔をしていると常々思ってきましたが、彼のそれがが武芸者としての厳めしさであるのに対して、鬼伝斎は人殺しとしての凶悪さ。その描き分けも見事ですが、その二人の激突は迫力十分。スピーディーかつ緊迫感溢れる殺陣にシビれますが、個人的にはその直前の静の場面、特に二人の足運びをアップで描いた画の巧みさが印象に残ったところです。

 と、師匠が大変な一方で、聡四郎は紅さんのところにお呼ばれ。二人の仲睦まじい姿が描かれる一コマは、これがもう実に絵になります。にしても母の形見の小袖をプレゼントとは、もう完璧に俺の嫁状態ですが、しかしいざ紅さんがそれを着ていても――というところに聡四郎のキャラクターがすごく出ているのも、愉快なところであります。


 長くなりましたので次回に続きます。


「コミック乱ツインズ」2019年11月号(リイド社) Amazon
コミック乱ツインズ 2019年11月号 [雑誌]


関連記事
 「コミック乱ツインズ」2019年1月号(その一)
 「コミック乱ツインズ」2019年1月号(その二)
 「コミック乱ツインズ」2019年2月号
 「コミック乱ツインズ」2019年4月号
 「コミック乱ツインズ」2019年5月号
 「コミック乱ツインズ」2019年6月号
 「コミック乱ツインズ」2019年8月号(その一)
 「コミック乱ツインズ」2019年8月号(その二)
 「コミック乱ツインズ」2019年9月号
 「コミック乱ツインズ」2019年10月号(その一)
 「コミック乱ツインズ」2019年10月号(その二)

|

« 小山ゆう『颯汰の国』第1-2巻 颯爽たる国造りの物語、始まる | トップページ | 「コミック乱ツインズ」2019年11月号(その二) »