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2019.10.16

「コミック乱ツインズ」2019年11月号(その二)


 「コミック乱ツインズ」2019年11月号の紹介の続きであります。


『かきすて!』(艶々)
 成年(青年)コミックを中心に活躍する作者の新連載は、一言で表せば艶笑もの――というべきでしょうか。富士川の渡しで、伊勢参り帰りの二人連れ・おゆきとおはるに出会った、焼津から江戸まで一人旅の娘・ナツ。二人に江戸まで同行することになったナツですが、そろそろ渡し舟が向こう岸に着こうという時、岸を見れば何やら男どもが集まっているではありませんか。
 流れが急なため、「こべり」(船縁)が高い富士川の渡し舟。実はそのため乗り降りする女性は足を高く上げざるを得ず、その時の様子を覗こうというクz――不届き者たちが集まっていたのであります。何とか無事に岸に下りようとする三人ですが……

 という、何というか実にしょーもない(悪口ではありません)お話。一歩間違えれば悪い意味で厭らしい話になりかねないところを、ディフォルメされた絵柄と、すっとぼけた明るさで描くのは、これはこれでアリなのかもしれません。
 ちなみにラストには柳水亭種清と恋川笑山が(実にしょーもないペンネームで)発表した「旅枕五十三次」を引用して、今回のようなことが実際にあったと語っているのも、面白いところです。


『カムヤライド』(久正人)
 色々あった末にヤマトに到着し、ヤマトタケルの口利きで彼の父・オシロワケ大王に埴輪の売り込みに出かけたモンコ。しかしモンコの顔を見た大王は、彼のことを意外な名前で呼ぶのでした――「ノミの宿禰」と!
 一方、ハジ一族の親方・トレホ(名前まんまの外見)から、そのノミ親方に起きた異変を聞くヤマトタケル。かつて天才的な工人であったノミは、ある日先代の大王に呼ばれて宮殿に上がり、別人のように変貌してしまったというのであります。そのトレホが目撃したノミと当麻のケハヤの対決の行方は、そしてそのノミの姿は……

 というわけで、ある意味本作始まって以来の驚愕の前回ラストから引き継いでの今回。ノミの宿禰=野見宿禰といえば、確かに土師氏の祖であり、そして当麻蹶速と相撲してこれを蹴り殺したという逸話を持つ人物。そう考えれば、埴輪造りを得意としてキック主体の戦いを繰り広げるモンコと重なることに、不思議ではない――というより何故思いつかなかったかと臍を噛むばかりであります(ただし、「史実」であれば100年近く前の人物のはずですが、それはさておき)。

 しかし今回(トレホの口から)語られた過去の出来事は、また想像を絶する内容の物語。ノミを変貌させたもの――彼が宮殿で見たモノは、これまでの物語を見れば何となく想像できますが、さてそこからここまでどのように繋がってくるのか。そして現在、思わぬ窮地に陥ったモンコの運命は――気になり過ぎる展開はまだまだ続きます。
(それにしてもノミが着ていたもの、何となくウ○○○○ンスーツのように見えなくもない……)


『政宗さまと景綱くん』(重野なおき)
 秀吉の、いや天下の軍勢による小田原攻めが始まり、ついに秀吉への恭順を決めた政宗。実質的に彼の天下獲りの野望が潰えた瞬間ではありますが、彼を含め、周囲も結構サバサバした表情を見せるのがらしいところであります。政宗が秀吉との対面を楽しみにする理由もスゴいですし。

 しかし史実ではその前に大きな悲劇が彼を待ち受けているのはご存じのとおり。政宗の存在が伊達家を潰すと考えた母・義姫は、政宗の弟・小次郎とともに政宗暗殺を企み――と、作者が密かに得意としているような気もする病みキャラと化した義姫が怖いのですが、さて……
(しかしそんな妹の行動を一刀両断する最上義光はさすがだと思います)


 その他『軍鶏侍』(山本康人&野口卓)は、逆恨みしてきた町道場主の兄との決着戦。やっぱり悪役面はやられ役でしたが、以前披露した「蹴殺し」はバリエーションの一つで、今回ついにその本来の姿が――という展開は、その描写も相まって大いに盛り上がりました。

 また『いちげき』(松本次郎&永井義男)は、襲撃を失敗して市中を逃げ回る一撃必殺隊の残党は思わず――と、予想通り厭な展開に。しかしそれ以上の闇がこの先に待ち受けている様子で、いよいよ重い展開になるばかりであります。


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