『無限の住人-IMMORTAL-』 四幕「斜凜 しゃりん」
万次に稽古をつけてもらったものの、全く及ばず思い悩む凜。そんな中、偶然天津影久が一人でいるところに遭遇した凜は影久に襲いかかるも、あっさりとねじ伏せられてしまう。しかし凜を殺そうともしない影久は、彼女ががむしろ自分たちに近いと語るのだった。そして影久が思い出す己の原点とは……
凜と天津の遭遇――そして天津の口から、彼の行動原理と、それに基づいたとも言える凜の父を殺した理由が語られる今回。殺陣はほとんどない静かな回ですが、天津と逸刀流の――すなわち本作で描かれる剣士の一つの理が描かれる、重要なエピソードと言えるでしょう。
影久の語る剣士の在り方――強くなる事に心を砕いた者のみが優れた剣士と呼ばれるべきというそれ――は、(その成果が人格破綻者も少なくない面白剣士集団となったことを思えば)歪なものかもしれませんが、しかし少なくとも一面真実であることも確か。
そしてそれと対峙し、打ち破るべき者が、スタイル自体はほとんど逸刀流と同類である万次ではなく、その理によって全てを奪われた凜である――というのは一種美しい形ではありますが、その彼女もまたその同類に近づいているという皮肉さは、今見ても見事だと感じられます。
この構図をこの先どのように膨らませていくのか、そして今回あまりにも弱く、甘かった凜がどのように変わっていくのか――本作の向かう先を示してみせたエピソードと言えるでしょう。
(ちなみにこのエピソード、以前のアニメ版では実質最終回となっていて、それはそれで納得できるものでした)
が、そんな回のわりには作画がちょっと微妙――なのはさておき、物語としてそれだけに留まらず、過去編を色々と織り交ぜてきたと構成は、原作との比較の点でも、ちょっと面白いところであります。
前回語られなかった影久と槇絵の過去と、彼女を挟んでの影久と祖父・天津三郎の対峙、半ば狂気の祖父に見切りを付ける影久と黒衣、そしてそんな影久への妬心から斬ろうとしていたところを逆に旧友の阿葉山宗介に斬られる三郎……
というある意味過去編のパッチワークなのですが(特に阿葉山のシーンは原作では相当後だったように記憶)、まとめることで上述の影久の思想が成立するまでを一つの流れとして見せているのには納得であります。
しかし黒衣、凶(たぶん)と、回想シーンに登場していた腹心とも言える初期メンバーが万次に次々と撃破された影久、それは確かに万年胃痛のような表情になるかもしれません。
しかしAmazonのあらすじ、「逸刀流どころか万次にすら遠く及ばなかった」ってちょっとひどくないでしょうか。
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