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2019.11.28

「コミック乱ツインズ」2019年12月号(その二)

 号数の上では今年最後の「コミック乱ツインズ」の紹介の後編であります。

『勘定吟味役異聞』(かどたひろし&上田秀人)
 紀伊国屋文左衛門に指嗾された尾張浪人たちの紀州吉宗の参勤行列襲撃が迫る一方、謎の刺客に襲われる聡四郎。さらに新井白石に命じられた長崎奉行減員の背後にあるのは白石に対する陰謀で――と、幾つもの事態が同時進行していく今回。
 それでも内容的には、聡四郎と謎の敵(にしてもあまりに怪しげな本拠の描写にびっくり……)の対決を除けば、かなりおとなしめの回ではあります。

 そんな中でも、聡四郎が家に帰ると夕飯作って待ってる紅さんの「俺の嫁」というより「あたしが嫁」っぷりが実に微笑ましくも美しいのですが――しかし彼女が予感するように、この先、聡四郎が巻き込まれるのは大きな運命の変転であります(そしてそれは紅自身をも巻き込むのですが、さすがにそこまでは予感していないか)。
 まさに今回は嵐の前の静けさだったといえるのではないでしょうか。


『宗桂 飛翔の譜 』(星野泰視&渡辺明)
 七冊の初代宗桂の棋譜を巡る暗闘の背後で糸を引くのが、義父となる武田典膳であることを知ってしまい、典膳子飼いの刺客に斬られた勝助。瀕死の状態で辛くも源内に助けられた勝助(ここで治療に当たるのはなんと!)ですが、典膳たちの暗躍はなおも続きます。
 宗桂と宗英の将軍家治御前での御城将棋が迫る中、手を組んでいた大橋宗順までに牙を剥き、さらに――と、主人公の宗桂の出番は少な目で展開していく今回ですが、初代宗桂の棋譜、というよりそこに隠された毛利秀元宛の密書争奪戦はいよいよヒートアップしていくことになります。

 が、今回描かれたある事実によってますます謎めいてくる典膳一味の行動。そもそも密書の正体からして謎だらけですが、さて――舞台はいよいよ江戸城に移り、事態は風雲急を告げる中、ただ一つだけわかるのは、どんな時であっても宗桂は自分の将棋を打つことであります。

 ちなみに途中で描かれる、御城将棋が時間通りに終わるように行う事前リハーサルというべき「下指し」というイベント(?)の解説も面白かった今回。面白いけれども、いかにもお役所らしいやり方だなあ。


『政宗さまと景綱くん』(重野なおき)
 秀吉への降伏が目前に迫る中、久しぶりに母・義姫と水入らずで対面する政宗。しかしそれこそは政宗暗殺の罠、義姫手ずからの料理には毒が――と、史上名高い悲劇に向かい突き進んでいく今回。
 そんな状況を描くのに、四コマで必ずオチがつくという、四コマ漫画の形式を生かして、少しずつ事態の進展を描いて緊迫感を高めていくスタイルには感心させられます。

 そしてついに毒を飼われる政宗ですが――その直前の彼の言葉で義姫が、というのは、ベタといえばベタではありますが、それでもやはり納得がいく、というよりこちらが期待してしまう展開ではあります。
 さて、その先に待つものは……


 次号は創刊17周年記念号。私もたぶん創刊直後から読んでいた読んでいたつもりですが、それにしてもこれほど長い時間が経っていたとは――まずはめでたい限りであります。


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