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2019.11.16

『お江戸ねこぱんち 猫遊びの巻』


 猫を題材とした時代コミック誌という無二の個性を持つ「お江戸ねこぱんち」誌。私も創刊時から全号読み、ほぼ全号紹介してきましたが、今回大幅なリニューアルが行われました。さて、その結果は……

 このリニューアル、web上の紹介文を引用すれば「長期に渡り続いてきたお江戸ねこぱんちを大幅にリニューアル! 判型、表紙、執筆陣のラインナップを大きく変えて若い女性読者をターゲットに再始動!」とのこと。

 ここで個人的にまず驚かされたのは、若い女性読者をターゲットに――という点で、読者コーナーを見れば、同誌は実はかなり読者の年齢層が高いことが窺われるからであります(実際、リニューアル前の葉書を掲載した本号の読書コーナーも結構年齢層が高い)。
 それを若い女性読者を――というのは思い切ったものだと思わされますが、もちろんこれはこちらがあくまでも読者コーナーのみを見ているからであって、ターゲットを切り替える根拠というのがそれなりにあるということなのでしょう(そもそも私は前からターゲット外の読者ですが)。

 しかし一番ショックだったのは、執筆陣のかなりが入れ替わり、作品においては総入れ替えとなった点であります。もちろん毎号読み切りが売りの同誌ではありますが、しかし続きものもそれなりにあった中で、問答無用で総入れ替えというのは、かなり残念に感じます(かなり長期に渡って連載していた作品もあったのに……)。

 それではどれくらい変わったのか、とこちらも少々意地になって、かなり雑ながら、掲載15作品の傾向を調べてみると――
新妻もの 3
お仕事もの(奉公もの含む) 2
ファンタジー要素ありの恋愛もの 2
ファンタジー要素ありの人情もの 2
男性職人もの 2(どちらもファンタジー要素少しあり)
タイムスリップもの 1(ある意味お仕事もの)
隠密もの 1
猫主人公のギャグ 1
絵コラム 1

 と、リニューアル前とそれほど変わったかなあ――という気もするラインナップ。強いていえば、新妻ものが3作品あったり、他の分類に入れたものも含めればお仕事ものが6作品と一番多かったりと、何となく頷けるところもあるのですが……
 その意味では、謳い文句を見て覚悟していたほどではないかな――というのが、正直な感想であります。もちろん、上で述べた連載(連作)作品がほぼ全てなくなったのはショックなのですが。
(特に、史実とのリンクありの作品がほぼ完全になくなったのは個人的に残念)


 さて、繰り言が多くなってしまいましたが、印象に残った作品が少なからずありますので、挙げていきましょう。

 『縁結びの猫』(ひるのつき子)は、縁を呼ぶという猫がいる茶屋の娘を主人公にした物語です。
 猫が持ってきたかんざしをきっかけに、その持ち主である美しいけれどもちょっと浮き世離れした娘と知り合った茶屋娘。好いたヒトがいたが縁談が来てしまったという娘の正体は――と、よくある恋愛ものかと思えば、思わぬ方向に転がっていくのがなかなか楽しい作品であります。(さりげない言葉遣いが伏線になっているのが嬉しい)

 また、今回唯一の伝奇的(?)な作品である『又七股旅忍び旅』(ひのや)は、さる藩に潜入した隠密――山猫ならぬ化け猫廻しの又七郎と猫の紅虎が、何事かを企んでいるという家老に迫る物語。
 と思いきや、半ば強引に協力者となった、家老に襖絵の依頼を受けた絵師のキャラクターがエキセントリックで、かなりそちらに持っていかれた印象。シリアスかと思えば間の抜けた展開もあって、ちょっとどっちつかずな気もしますが、楽しめる作品であります。

 その他、木戸番をしている(ちゃんと焼き芋を売っている)しゃべる猫を狂言回しとした『木戸ニャン太郎』(月みとう)は、亡き夫/父との再会を願う一家を描く人情ものですが、死者との再会という題材のためか、夜の闇の深さの描写が印象に残ります。
 また、『猫間師匠の江戸噺』(桐丸ゆい)と『風来坊の忠治』(きっか)は、それぞれ絵コラムとギャグ漫画という全く異なる内容ながら、古参の安定感が素晴らしい作品であります。


 と、色々言いつつも、今回もきっちり読んでしまった「お江戸ねこぱんち」。この先どのような展開があるのかわかりませんが、こうなったらとことん付き合いたいと思います。


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