« 『無限の住人-IMMORTAL-』 九幕「群 むら」 | トップページ | 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第18巻 鬼の過去と、人の因縁と »

2019.12.07

賀来ゆうじ『地獄楽』第8巻 人間の心、天仙の心

 島から生きて戻るため、一丸となった死罪人と浅ェ門たちの戦いもいよいよクライマックスであります。島の中枢である蓬莱に突入した画眉丸たちの前に立ちふさがるのは、最強の天仙たち。自分たちを遙かに上回る力を持つ相手に、画眉丸たちの戦いは如何に……

 自分たちが送り込まれたこの島が、あの徐福が作った一種の実験場――真の不老不死を生み出すための場と知った死罪人と浅ェ門たち九人。この地から脱出し、そして自由を手にするため、彼らは仙薬、そして脱出口を求めて蓬莱に突入することになります。
 しかしその行動はすべて読まれ、三方に分かれた九人の前に立ちふさがるのは、彼らを自分たちの修行の贄に変えんとする天仙たち。

 画眉丸と杠の前には蘭が、厳鉄斎と付知、桐馬の前には菊花と桃花、そして弔兵衛が、士遠とヌルガイの前には朱槿が――分断され、強敵と対峙することになった彼らは、しかし敢然とこの強敵に挑むことを決意。
 そして一番手たる画眉丸と杠は、体術の達人であり、無機物を自在に操る蘭を追いつめるのですが……


 というわけでこの巻の始まりは、鬼尸解――怪物化した蘭と、画眉丸・杠の決戦から。どう考えても時代劇のキャラではないその巨大さと異形ぶり、それ以上に即死攻撃と異常な回復力を持つ鬼尸解は、天仙の中で最初に撃破された牡丹ですら6人がかりで、しかも1人犠牲を出したほどであります。
 その怪物に挑むのは画眉丸と杠――ともに忍びでありながらも、どこまでもストイックな画眉丸と、快楽主義者の杠と、水と油の二人。噛み合えば強い(かもしれない)が、本当に噛み合うのか疑わしいコンビであります。

 とはいえ九人の中でも最強クラスの能力の持ち主であり、何よりも真っ先に「氣」に目覚めた二人だけに、相手が氣の扱いに長けるのを利用した「一の手」でダメージを与え、鬼尸解に追い込むのまでは早かったののですが――しかしさすがにそこからは荷が重い。二人ともほとんど致命傷を食らった身で、画眉丸が繰り出した「二の手」とは……

 ここから先の展開は伏せますが、二の手の内容は、言われてみれば充分あり得たものの、普通であれば流石にそこまではするまい――と思うような、凄絶きわまりないもの。
 それであっても、生きて妻に会うために「命を懸けるつもりなど毛頭ない」「だから命以外は全て懸ける」と迷いなく告げ、その二の手を使ってみせる画眉丸の姿を何と評すべきか――しかしその選択は、ある種逆説的な意味ながら、極めて人間的だとも感じられるのであります。


 そして最初の戦いが大波乱のうちに決着した後に描かれるのは、厳鉄斎・付知・桐馬vs菊花・桃花・弔兵衛の一戦、なのですが――まあ、あの賊王が、弟もろとも世界を花に変えようという連中につくかどうか――いや、相手が誰であれ、人の下風につくか考えれば、展開は明らかでしょう。

 何はともあれ、この集団戦の中で最初に描かれるのは、厳鉄斎・付知組と桃花の対決。
 よく考えてみれば、この島に送り込まれた当初の死罪人と浅ェ門の組み合わせて、二人が生きて行動を共にしているのはこの組み合わせのみですが――しかしこの二人、バトルマニアと解剖マニアと、無茶苦茶な組み合わせであります。

 そんな二人と、天仙の中でも賑やかしとお色気担当であった桃花の異次元対決がここで繰り広げられるのですが――しかしこの戦いを通じて、少々意外とも思えるものが描かれることになります。
 それは味方側でも一番目に見えるものしか信じないように思われた付知の意外な心と、そしてそれ以上に尋常な心などないように思われた桃花、そして菊花の中の心なのです。

 確かに彼らも決して名乗っているほどの絶対的な存在でも、迷いない存在でもないことは、これまでもほのめかされていたものの、ここまで真っ正面から、天仙たちの想いが描かれるとは――と驚かされますが、敵の背負うものが明らかになったことで、戦いがより盛り上がることは間違いありません。

 そしてその一方で、厳鉄斎が実にこの男らしいやり方で「八洲無双の剣龍」ぶりを見せてくれるのも嬉しい。「氣」の概念が登場してから、誰もが「氣」を用いて戦うことで、バトルの興が削がれるのでは――と懸念しておりましたが、ここでの厳鉄斎のように、その中であくまでも自分らしさを発揮して戦う姿を見れば、杞憂とわかります。


 そしてついにこの戦いも第二段階に突入するのですが、そこに現れたものは――と、まだまだ盛り上がる本作。(またもや追加組が忘れ去られていたりもしますが)やはりいま一番先の展開が気になる作品であります。


『地獄楽』第8巻(賀来ゆうじ 集英社ジャンプコミックス) Amazon

関連記事
 賀来ゆうじ『地獄楽』第1巻 デスゲームの先にある表裏一体の生と死
 賀来ゆうじ『地獄楽』第2巻 地獄に立つ弱くて強い人間二人
 賀来ゆうじ『地獄楽』第3巻 明かされゆく島の秘密、そして真の敵!?
 賀来ゆうじ『地獄楽』第4巻 画眉丸の、人間たちの再起の時!
 賀来ゆうじ『地獄楽』第5巻 激突、天仙対人間 そして内なる不協和音と外なる異物と
 賀来ゆうじ『地獄楽』第6巻 怪物二人の死闘、そして新たなる来訪者
 賀来ゆうじ『地獄楽』第7巻 決戦開始、前門の天仙・後門の追加組!

 菱川さかく『地獄楽 うたかたの夢』 死罪人と浅ェ門 掬い上げられた一人一人の物語

|

« 『無限の住人-IMMORTAL-』 九幕「群 むら」 | トップページ | 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第18巻 鬼の過去と、人の因縁と »