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2019.12.15

森野きこり『妖怪の子預かります』第2巻 まだまだ読みたい漫画版完結


 第1巻と同様、ほぼ時を同じくして原作最新巻が刊行された廣島玲子の『妖怪の子預かります』、その第1作の漫画版である本作も、この第2巻で完結。思わぬことから妖怪の子預かり屋を勤めることになった弥助の過去の因縁が、ついに描かれることとなります。

 盲目の美青年・千弥と暮らす少年・弥助。過去の記憶を持たず、千弥以外の人間とはろくに口も利けないほど引っ込み思案の彼は、ふとしたことから妖怪・うぶめの棲み家である石を壊してしまうのでした。
 その罰として妖怪奉行所の奉行・月夜公から、うぶめに代わり、妖怪の子預かり屋となることを命じられた弥助。かくて夜な夜な現れる奇怪な妖怪たちの子供に悪戦苦闘することとなった彼は、何故か助っ人を買って出た女性妖怪・玉雪の助けもあって、妖怪の子預かり屋としての日々を送るのですが……


 というわけで、何とも奇怪な運命に巻き込まれてしまった弥助。子供が(知らぬこととはいえ)妖怪を怒らせたために恐ろしい罰を与えられる――というのは洋の東西を問わず存在する物語類型かと思いますが、しかしその中でもこれほど奇妙な罰もないでしょう。
 この漫画版では、その奇妙な罰の奇妙たる所以――預けられる妖怪の子供たちの姿を、時にユーモラスに、時に恐ろしく描いてきました。

 そしてそれはもちろん、この第2巻に入っても変わることはありません。酒に目がない酒鬼の子、あの月夜公の甥・津弓、そして伝説の妖鳥の子だという雛の君――どれも個性的なのですが(特に原作ではレギュラーとなる津弓は、期待通りの可愛らしさ)、その中でも雛の君との出会いが、弥助の運命を大きく動かすことになります。

 そもそも通常のルート(?)とは異なり、傷だらけの妖怪から卵を託されたことで弥助のもとにやってきた雛の君。妖怪を食らうという恐るべき妖怪・冥波巳に狙われている彼女が、成長して力をつけるまで守る羽目になった弥助ですが――それが彼の、そして彼の周囲のある人物に関わってくることに……


 ここから先は本作の核心に触れる展開なので詳細は伏せますが、弥助の秘められた過去と千弥との出会い、そしてついに姿を現した冥波巳との対峙――と物語的に大いに盛り上がるクライマックスを、この漫画版は巧みにビジュアル化しています。
 特に冥波巳のおぞましい姿は、このために森野きこりを起用したのではないか――と思ってしまうほどであります。
(ただ、弥助が初めて○○を上げるシーンは、原作と読み比べてみると、もっとテンションを上げて良かったのではないかな、という気も)

 一方、原作ではそこまで強い印象はなかったのですが、この場面の前、千弥と久蔵が酒を酌み交わすシーン――そしてそこで語られる久蔵と千弥、そして弥助が初めて出会うくだりは、ビジュアルがついてみるとなかなか印象的に感じられたところであります。
 特にちょっとホラーが入ったかつての千弥の行動など印象的で、これは嬉しい驚きだったのですが――この辺りはやはり、第1巻の紹介でも強調したとおり、森野きこりによる違和感ゼロのビジュアルによるところが大と言うほかありません。


 さて、これでこの漫画版は完結とのことですが、やはり漫画化が原作1巻までというのはあまりにもったいない。あの美しくも恐ろしい妖怪の姫君たちや、千弥とあいつの感情が重すぎる過去、そしておぞましく歪みを抱えた妖怪たちなど、まだまだ描いてほしいキャラクターや場面は数多くあるのですから……
 まだまだ漫画で(も)この微笑ましくも恐ろしい、暖かくもヒヤリとさせられる世界を見てみていたい――そんな気持ちにさせられた漫画版であります。


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