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2019.12.12

響ワタル『琉球のユウナ』第4巻 もう一人の祝女、もう一人のユウナ

 古琉球時代を舞台に描かれる、霊力を持つ朱色の髪の少女・ユウナと若き日の尚真王・真加戸の物語も、順調に巻を重ねて第4巻。互いに惹かれ合いながらもなかなか縮まらないどころか様々な障害続きの二人ですが、それでもユウナは真加戸のため、失われた伝説の勾玉の求める冒険に出ることに……

 生まれついての不思議な力のために周囲に忌避されてきたユウナと、叔父から奪った形となった王位を孤独に守ってきた真加戸。互いの欠落を補い合う二人は、その絆をいよいよ強めていたのですが――そこに現れたのは、かつて真加戸の父によって滅ぼされた第一尚氏の生き残り・ティダでありました。

 復讐のため、ことあるごとに真加戸の前に立ちふさがるティダと何度も対峙することとなるユウナ。さらに(?)真加戸の従姉であり許嫁である居仁まで現れ、ユウナと真加戸の周囲はいよいよ波乱含みに……


 というわけで、前王家の末裔に許嫁にと、真加戸とユウナそれぞれに大変な相手が登場することとなった本作。
 もっとも居仁の方は許嫁の立場を迷惑がっている上に、ちょっと特殊な(ある意味お約束の)趣味だったこともあって、意外とあっさりと問題は解決するのですが――しかしティダの方は、そうそう簡単に解決するものではありません。

 折しも琉球の聖地・琉球開闢七御嶽で異変が起きる中、第一尚氏の秘宝であり、今は失われた七つの太陽の依り代の勾玉をティダが取り戻そうとしていると知ったユウナ。
 彼女は、真加戸のために勾玉を追いかけようとするのですが――しかし真加戸が、想う相手をみすみす危険な場所に向かわはずもないのであります。

 それでも懸命な想いでそれを乗り越え、ついにユウナは王家の祝女(ノロ)に任命されたユウナは、周囲の嫉妬と蔑視にもめげることなく、ついに七御嶽の一つ、安須森御嶽の調査を許されることになるのですが……


 さて、分量的にはここまででこの巻の三分の二(3話収録の2話分)となるのですが、しかし個人的にはこの先の物語は、内容的にはその分量以上にはるかに大きなウェイトを占めるものとして感じられます。
 何故なら、ここでユウナが出会うのはもう一人の彼女ともいうべき存在なのですから。

 そもそもユウナが向かった安須森御嶽があるのは、琉球の北部、かつて北山国と呼ばれた地域。琉球の中でも紛争・内乱が相次いだこの北山国を滅ぼした第一尚氏はこの地を治めるため北山看守という役職を配置――そしてティダの先祖こそが、その役目を務めていたのであります。
 そして到着早々マジムンに襲われたユウナが出会ったのは、この北山地域の祝女を束ねる阿応理屋恵である真鶴。強い霊力を持ちながら、それ故にこの地に縛られた存在であり、そしてそれ故に己の心を閉ざしていた――真鶴はそんな少女であります。

 生まれついての霊力故に、周囲からその力を利用され、普通の生き方を望んでも得ることが許されない――その点において、ユウナと真鶴はまさに近しい存在と言えます。
 そしてそんな互いのことを知った二人は(コミュ障気味同士)たちまち意気投合するのですが――しかしそれでも、二人の間には決定的な違いがあります。

 それは言うまでもなく、二人が拠って立つものの違い――第二尚氏の王である真加戸のために行動するユウナと、第一尚氏の流れを汲む巫女である真鶴と、その立場はあまりに大きく異なります。
 そして何よりも、ユウナには真加戸がいるのに対して、真鶴には自分に勇気という力を与えてくれる相手が(今は)いないことも。

 そんな二人の違いは、やはり聖地に勾玉を求めてやってきたティダの存在により、よりはっきりと示されることになるのですが……


 古琉球という、我々の多くにとっては馴染みの薄い、それだけに新鮮で魅力的な世界の歴史を描く物語(上で触れた北山国なども非常に興味深いところであります)であると同時に、等身大の少女の成長物語でもある点が、大きな魅力である本作。

 今回登場した真鶴は、そんな物語の主人公であるユウナと好一対――大変申し訳ない表現ですが――彼女のネガとも言うべき存在であります。
 そんなもう一人の自分を通して、ユウナは何を見るのか、感じるのか。そしてもう一人の自分を救うことができるのか……

 何だか明らかにマズい感じのことを言い出したティダとの関係も含めて、先の展開が気になるところであります。


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