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2020.01.19

「コミック乱ツインズ」2020年2月号(その一)


 実質今年初めての号となる「コミック乱ツインズ」2月号は、何かと話題が多い『暁の犬』が表紙&巻中カラー、そして『鬼役』が巻頭カラーであります。今回もまた、印象に残った作品を一つずつ紹介します。

『鬼役』(橋本孤蔵&坂岡真)
 今回は原作の『鬼役外伝』からの漫画化とのことですが、主人公は蔵人介の養母・志乃であります。
 質屋の帰り、絡んできた破落戸を叩きのめしたことがきっかけで、とある仏具屋の主人に声をかけられた志乃。なりゆきから相手の相談に乗ることになった志乃は、武家との縁談を嫌がっているという娘の相談に乗ることになるのですが……

 普段から鬼役のお勤めより悪人殺しに精を出している印象のある本作ですが、今回は町人の悩み相談まで!? と思いきや、その相談にしっかりと理由と必然性があるのが楽しい今回。しかもクライマックスでは、蔵人介(今回は義母にこき使われる一方なのも愉快)が鬼役としての姿を、しかし意外なところで見せてくれるのに感心いたしました。
 外伝ならではのエピソードかもしれませんが、このような物語をもっと読みたいところであります。


『勘定吟味役異聞』(かどたひろし&上田秀人)
 今回で『相剋の渦』編は最終回――といっても結局聡四郎は自分では謎を解けず、冷静に考えれば妙な形で尾張浪人たちの吉宗暗殺計画に割って入ることになります。
 野良犬よりも狼でありたいと妙にカッコいいことを言う(しかし言うだけ)の浪人たちに対して、生存者バイアスバリバリで言い返す――これはまあ、上田作品定番ですが――のも、あまりスッキリしないところであります。

 そんな中で一人気を吐いていたのは、言うまでもなくまだ紀州公の吉宗。気さくなようなふりをして実はブラックさの片鱗を見せつつ、聡四郎とのファーストコンタクトを飾ることになります。何だかあらゆる点で聡四郎を上回っている感が強いこの相手と、聡四郎はこの先どう関わっていくのか――何だか一部では不幸の手紙扱いされている聡四郎の明日はどちらでしょうか?


『いちげき』(松本次郎&永井義男)
 もはや一撃必殺隊は指揮官に至るまで任を解かれ、ほとんど実体を失った中で残された男たちを(敵を含めて)描く本作。自分たちが初めから生きては帰れない捨て駒だと知った丑五郎と市造は、復讐のために指揮官だった島田を襲撃しようとするのですが――同士討ちという迷走の極みというべき展開の中、彼らを巧みに操り、争いを生み出した者が、この戦いを利用すべく動き出します。

 島田にとって市造と丑五郎を捌くのは雑作もないこと、しかしそこにもう一人、さらにトリッキーな相手が加われば――絶体絶命の緊迫感とスピード感溢れる決闘シーンのアクション描写にはシビレます。
 しかしまだまだ油断はできない展開、果たして生き残るのは誰なのか――やるせない戦いはまだ続きます。


『暁の犬』(高瀬理恵&鳥羽亮)
 胴斬りの暗殺者を仕留める依頼に加え、その暗殺者の可能性がある遣い手三人も斬ることとなった小野寺佐内。そこに現れたのは、同じ益子屋に周旋を受けたご同業の剣士で――と、孤独な暗殺者という風情だった左内に、味方が登場するのですが、これがまたこれまで本作にはいなかったタイプのキャラクターであります。
 見た目はタヌキのような中年で、酒好き女好き、さらにやたらと口数が多いという、いや本当に正反対のキャラなのですが、しかしいざ刀を構えれば一目で遣い手とわかる――これはもちろん、それをしっかりと描いてみせる作者の筆力によるものですが――実に味のあるおっさんキャラです。

 が、そのおっさんによってまた「芳町」「寺小姓」「衆道」などという語を正面からぶつけられる左内――もはや彼がセクハラを受けるのは本作の名物というべきなのでしょうか。しかし冷静に考えると、本当に女性っ気の少ないお話ではありますが……

 そんな賑やかな展開でニコニコさせつつ、後半で描かれるのは、父が富田流の必殺剣を出しながらも全く及ばなかった相手に怯える左内の姿。イメトレでも自分が惨死する姿しか見えないという重症ぶりですが、さて――この先の三番勝負が彼を変えてくれるのでしょうか?


 次回に続きます。


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