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2020.01.26

『無限の住人-IMMORTAL-』 十六幕「肢転 してん」

 狂気に陥った末、無数の被験者を犠牲にして実験を続ける歩蘭人。一方、捕らえられた夷作を救い出そうと奔走する凜と瞳阿は、同様に捕らえられた人々が不死力の実験に使われていると知り、地下道から江戸城に乗り込む。群がる役人たちを蹴散らしながら進む二人だが、ついに見つけた夷作の姿は……

 「相変わらず狂ってる歩蘭人の実験」「瞳阿と夷作の過去」「百琳と偽一の想い」「凜と瞳阿の救出作戦」と、一話で結構盛りだくさんであった今回。原作では単行本2巻分とあまり進んでいない気もしますが、前話があの調子だったので、非常に大きく話が動いたという印象であります。

 まず歩蘭人は――相変わらず無駄に気合いの入った演出でその狂人ぶりをアッピール。もうそれはええっちゅうんじゃ、と言いたくなるような心象風景ですが、今回はそれほど時間は長くなかったのが救いではあります。
 しかしその被害は甚大で、とんでもない分量の死体が遺棄されたり、江戸城地下がバイオハザード状態になっていたりとやりたい放題。一応裏があるとはいえ、鉤群もやりすぎなのでは……

 一方、これまでの気の強さはどこへやら、ほとんど共依存状態だった夷作がいなくなって瞳阿のメンタルはどん底。今回は幾度かに分かれて二人の出会いから旅立ちまでの姿が描かれますが、片やアイヌの村出身、片や外国人宣教師の息子と、二人ともこの時代のこの国においては異邦人であるだけに、肩を寄せ合って生きてきたことはよく理解できます。
(しかしこの二人を仲間に迎え入れた天津は度量が大きい――と思いきや、怖畔というさらにとんでもない奴がいるので、彼らはまだまだ目立たないだけかもしれませんが)

 そして百琳と偽一ですが――以前にちらりと仄めかされていましたが、逸刀流残党に捕らえられた際の暴行が元で、妊娠していた百琳。もう鬼畜(原作が)としか言いようがない展開ですが――生まれてくれば最悪の記憶を思い出させるであろう子供を堕ろそうとする百琳を偽一は静止するのでした。
 もちろんこれは百琳の気持ちを思えばあまりに無神経な行動であるかもしれません。しかし百琳がこの世界に入ることとなった理由が我が子を殺された怒りからであったことを思えば、そして偽一もまた病の息子のために――そしてその息子も世を去ったことを思えば、子殺しを止めようというのは、それなりに理解できるところではあります。

 そしてその百琳を頼るのは凜――ほとんど断片的な(描写しかない)情報で万次の、夷作の行き先を突き止めた彼女は、百琳に陽動を依頼。役人に捕らえられて連行された人々の家族たちを百琳が煽動して周囲を騒がしている間、ついに凜と瞳阿は江戸城地下に広がる迷宮に潜入することに――嗚呼、ここまでが本当に長かった。
 しかし無駄に露出の多い衣装で潜入したり、いきなりポッと出のキャラに捕まって凜が拷問受けたりブチ切れた瞳阿が皆殺しにしたり(怖畔の出番が……)、そこら中うろついているゾンビをダッシュ回避で先に進んだり、(たぶん果心居士のところからギってきた)火薬に黄金蟲で格好良く火をつけたら自分も巻き添え食ってダメージ受けたりと、これまでの鬱憤を晴らすような凜の大冒険活劇ぶりに、前回自分が見たものは何だったのだろう――と再び思わないでもありません。

 しかし今回の凜、非常に覚悟が決まっているようでいて、殺人は瞳阿に任せるという形になっているのがどうにもスッキリしないところで、その直後に瞳阿を庇って百叩きを受けたとはいえ、万次を用心棒に雇っていた時以上に、都合のよいスタンスが気にならないでもありません。
 とはいえ、その瞳阿も故あって途中で脱落し、ただ一人で先に進むことになった凜。やたらと暗い画面の中、先に進む凜という、何となく中途半端な場面で次回に続きます。


 ……今回万次の出番あったかしら?


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 無限の住人

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