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2020.02.17

「コミック乱ツインズ」2020年3月号


 雑誌では当たり前とはいえ、一足早く3月号というのを見るとちょっとドキリとさせられる「コミック乱ツインズ」3月号。表紙も一足早い桜色を背景に『鬼役』が飾っています。巻頭カラーの『勘定吟味役異聞』ともども、春ののどかさとは無縁――というのはさておき、今回も印象に残った作品を紹介します。

『勘定吟味役異聞』(かどたひろし&上田秀人)
 というわけで巻頭を飾った本作は、今回から後半戦の第5章「地の業火」に突入。といってもまだ冒頭のためか、いきなり聡四郎が資格に手裏剣を投げつけられた以外はほぼアクションなし。紅さんの出番もなし。
 その一方で、御三家筆頭の尾張家では、前章で散々バカ殿ぶりを見せた藩主・吉通がいきなり毒殺され、お家の内部も血で血を洗う状態に――と、凄惨な状況が描かれます。

 聡四郎はその話を新井白石から聞かされるのですが、吉通を八代将軍に考えていたことを仄めかし、将軍本人の命よりも、将軍の権威こそを重視すべきと語る白石。この辺り、上田作品ではお馴染みの、というよりいつの世も変わらぬ役人の思考という感じですが、前章辺りから見えてきた白石の限界がついに露わになったと言えなくもありません。
 だとすれば聡四郎の方も色々と困ったことになるわけですが、さて……


『暁の犬』(高瀬理恵&鳥羽亮)
 父を斃した謎の刺客の剣の正体もわからず、今のままでは勝てないという怯えと焦燥感を抱えたまま朝からずっと刀を振っていた佐内。道場の床には無数の巻き藁が転がりますが、巻き藁もタダではないだろうに、幾らくらいするのかなあ――と思いきや、きっちりツッコんでくれるおしまさんが素敵です。

 さて、そんなところにやって来た剣客狸おじさん・根岸によって連れ出される佐内。根岸によれば、同業で獰猛な犬を使う男がいるとのことで、その犬をけしかけてターゲットの太刀筋を見ようというのであります。そして登場した新キャラ・瓢三は、裏稼業の人間に相応しい昏く荒んだ目つきの男。そして瓢三を連れ三人で、最初のターゲット・鳥居を待ち受ける佐内たちですが――ここで血気に逸る犬を見て、自分たち剣客も犬と同じだ、と自嘲するのが今回のハイライトであり、そしてタイトルの意味を語ったものなのでしょう。
 たとえ敵わない相手でも、相手に怯えを抱いていても、目の前に立ちふさがる相手には牙を剥き出さずにはいられない――そんな猛々しくも虚しい存在である自分たちのことを語る佐内の瞳もまたどこまでも昏く、おしまと話している時の明るい瞳とは(さらに言えば相変わらず長い睫毛とも)裏腹の、この彼の目には大いに惹きつけられるものがあります。セクハラ的な意味ではなく。

 そしてラスト、犬をけしかけられてついに鳥居が刀を抜くのですが――この迫力も素晴らしい場面でもって次回に続きます。


『はんなり半次郎』(漫画:叶精作/原作:篁千夏)
 貸元の依頼で、寺で開かれた賭場の壷振りを務めた半次郎(しかし何でもやるな……)。ところがこの貸元が何者かに殺され、溜め込んでいたはずの銭も行方不明に――という事件が発生。かくて半次郎は空の千両箱三つに残された数枚の花札を頼りに、銭の隠し場所と下手人を推理することに……

 というわけで一種の暗号ミステリ的な展開を見せる今回。それぞれの千両箱に、こいこいの役を作って入っていた花札から京の名所を推理していく様は、現代の花札の知識ではわからないような謎掛けもあったりして、なかなかに楽しめるところであります。もっとも謎解きには(特に下手人探しには)ちょっと首を傾げるところもありましたが。
 ラストは半次郎の大立ち回りもあり、思わぬオチも合わせて、なかなか楽しいエピソードでした(何より余計なエロがないのが――というより、刃物を妙なところに隠して大丈夫なのか心配に)


『政宗さまと景綱くん』(重野なおき)
 全ての決着をつけるために、白刃を手に対決することとなった政宗と小次郎。景綱ら重臣たちは決闘の場に立ち入らず、外で待つのみ――と、この緊迫した状況下で、待っている面々を使って遊んでみせるのはさすがとしか言いようがありませんが、しかし決着がついた後の展開は、本作がギャグのみの作品ではないことをきっちりと示してみせます。
 特に、先に出てきた小次郎に背を向けた肩を掴まれながらの景綱の台詞は、その画も相まって本作屈指の名シーン。そしてさすがに政宗共々重い重い気持ちになったところで、ラストの一コマで泣かせてくるのも心憎いところであります。


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