« 鬼頭えん『地獄の釜の蓋を開けろ マビノギオン偽典』 | トップページ | 「コミック乱ツインズ」2020年3月号 »

2020.02.16

皆川亮二『海王ダンテ』第9巻 驚異の乱入者!? エジプト編完結!


 若き日のネルソン(=ダンテ)が、超古代文明の遺産を巡ってナポレオン(ナポリオ)と世界を股にかけた冒険を繰り広げる――という枠では括れなくなってきた本作、長きに渡って展開してきたエジプト編もいよいよ完結。各人各勢力入り乱れたバトルには、意外すぎる乱入者も登場して――!?

 ナポリオを追ってエジプトに向かった末、共に地底世界「冥界」に引きずり込まれることとなったダンテたち。そこで管理者の人造人間・セトに歓待される一行ですが――しかしセトの狙いはダンテの魔導器でありました。
 ナポリオの持つ「構成」の書によって超古代に造り出されたものの、既に限界が近づき、マグマ溜まりに沈もうとしていた冥界。魔導器の無尽蔵のパワーを用いてこの都市を救おうとするセトですが――そこにナポリオが、そしてダンテたちの運命を密かに操っていた不死人コロンバスらが乱入したことにより、混乱はいよいよ大きくなります。

 乱戦の末、冥界を埋め尽くす怪物の群れから逃れるために宝物庫に逃げ込んだ人々を待つのは、セトによって配置された迷宮と罠の数々。魔導器を取り返すため、冥界から脱出するため、そして魔剣フラガラッハに倒れたパトリックを救うため、ナポリオと手を組んで先を急ぐダンテですが……


 というわけで、バトルまたバトルだったここ数巻の展開を引き継ぎ、この巻もまた超絶バトルの連続である本作。メインだけで10人近いキャラクターたちが、三つ巴・四つ巴になって大混戦を繰り広げてきましたが、宝物庫の迷宮もゴールに近づき一時休戦した末に、目の前の障害を乗り越えるべく最後の戦いを繰り広げる様は、個性の塊のようなキャラクター揃いなだけに、まさに圧巻であります。

 ダンテとナポリオのほかに、超武闘派少女考古学者のカーター、相変わらずアクションの派手なオルカと彼とは因縁浅からぬ中だった黒ひげティーチ、地底世界でもその動物使いは健在のアルビダ、皆川作品名物の実は滅茶苦茶重い過去を背負った美形のジョゼ、そして名前が同じだけかと思えば本当に新大陸を発見したあの人物だったコロンバス……
 これまで積み上げてきた物語を彩ってきたキャラクターたちが、その持てる力を振り絞って戦う様は、ある意味本作の総決算と言えるでしょう。

 そしてそこに、ビジュアルといい戦闘能力といい、もはやオーバーテクノロジーどころではない存在となったセトが襲いかかる――と思いきや、その前に立ち塞がった影一つ。
 彼を生み出した存在が、ここに来てまさかの参戦を遂げるのですが、その姿は――いやいやいや、これはズルい、反則としかいいようがない。

 これはこの巻最大のサプライズのため、その姿については伏せさせていただきますが(こちらの作者のツイートを見れば瞭然ではありますが)、そのビジュアルインパクトもさることながら、そこから繰り出すアクションは、さすがは作者ならではとしか言い様のない凄まじいキレなのがたまらない。
 正直なところ、あからさまにウケを狙ってきたようでちょっと複雑ではありますが、ギャグにしか見えないものを超画力で成立させてしまうのは、これも作者の作品ならではの魅力であることは間違いありません。『D-LIVE!!』での武装したベンに並ぶ、新たな伝説の誕生を目撃させていただきました。


 と、そんな面白展開に目を奪われる一方で展開するのはダンテの――いやドゥランテのドラマ。ドゥランテとは魔導器を操る力を持つ種族という事実が以前語られましたが、その遙かな祖先(?)として、あのモーゼが回想シーンで登場。
 なるほど、エジプトといえば――ですが、この風呂敷の広げぶりもまた痛快ですらあります(しかしエジプト産なのにフラガラッハというのだけはいただけない)。

 そして最後の最後まで勢いの衰えぬまま、いくつかの謎を残してエジプト編は完結することになりますが――ラストに予告される次にダンテが向かうべき場所、おそらくは次の舞台には驚かされます。
 言われてみれば超古代文明の本場(?)でありながら、しかし本作でお目にかかれるとは思ってもみなかったかの地。そこで何が待っているのか――この巻の興奮も冷めやらぬところではありますが、早くも新展開が楽しみになるのであります。


『海王ダンテ』第9巻(皆川亮二&泉福朗 小学館ゲッサン少年サンデーコミックス) Amazon
海王ダンテ (9) (ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル)


関連記事
 皆川亮二『海王ダンテ』第1巻 二人の少年が織りなす海洋伝奇活劇
 皆川亮二『海王ダンテ』第2巻 いよいよ始まる異境の大冒険
 皆川亮二『海王ダンテ』第3巻 植民地の過酷な現実と、人々の融和の姿と
 皆川亮二『海王ダンテ』第4巻 新章突入、新大陸で始まる三つ巴の戦い
 皆川亮二『海王ダンテ』第5巻 今明かされる二人のルーツ、そしてこれからの戦い
 皆川亮二『海王ダンテ』第6巻 オーストラリア編完結 動物軍団大暴走!
 皆川亮二『海王ダンテ』第7巻 大乱戦、エジプト地底の超科学都市!
 皆川亮二『海王ダンテ』第8巻 秘宝争奪戦! 四つ巴のキャラが見せる存在感

|

« 鬼頭えん『地獄の釜の蓋を開けろ マビノギオン偽典』 | トップページ | 「コミック乱ツインズ」2020年3月号 »