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2020.03.26

梶川卓郎『信長のシェフ』第26巻 ケンと村上父子の因縁、決着!?

 自分自身が生き延びるためから、信長を生かすために目的を変え、なおも続くケンの戦い。その目的のために、この2、3巻の間続いてきた村上水軍との対決(?)も、ついにこの第26巻で、一つの決着を見ることになります。

 歴史を変えて信長を生き延びさせるため、この世界においては異物である自分たち現代人の、最後の一人である望月を探し出そうとするケン。
 しかし望月は四国の三好家に身を寄せていたことしかわからず、ケンはその手がかりを知るため、瀬戸内海を拠点とする村上水軍に近づこうとするのですが――しかし彼らは織田家の大敵である毛利家と結んでいる状態であります。

 そんな中、木津川口の戦いに絡んでにケンは村上家の当主・武吉の息子・元吉と奇妙な縁を結ぶことになるのですが――しかしいまだに求める情報は得られぬ状態。そもそも相手は瀬戸内海、ケンは安土と行動エリアも全く重ならないわけであります。
 しかしそれが今回、病床の竹中半兵衛の配慮により、ケンは再び元吉に接近することに……


 と、この巻の大半を費やして描かれるのは、ケンと元吉、ケンと武吉、そして信長と村上水軍との因縁の決着編。木津川口の戦いを経て、織田家に大きく傾きつつある元吉と、慎重な武吉――この親子の間に、ケンは挟まれることとなります。
 だとすればケンにできることは、料理を通じて武吉を動かす以外ありませんが、しかし面白いのはここで前哨戦とでもいうべき展開があることです。そう、元吉に接近したところを見とがめられ、元吉によって咄嗟に門付け芸人であると庇われたケンですが、それでは芸を見せてみろ、ということになってしまったのであります。

 もちろんケンは料理人であって芸人ではありません。しかし芸を見せなければ間者として殺されかねない絶体絶命の窮地で、さてケンにできるのは――と、ここでのケンの行動は予想がつく方も多いのではないかと思いますが、しかし画として見てみるとやはり実に面白く、これはこれで期待通りと言うべきでしょう。

 そしてついに武吉と一対一で対峙することとなったケンが、武吉に出す料理は――これぞケン、と言いたくなるようなユニークかつ含意に富んだもの。それに対する武吉のリアクションも洒落ていて、まずは村上水軍編(?)も大団円、といったところであります。
(が――その後に語られる村上水軍の「未来」の描写が、どちらとも取れるものなのが心憎いところであります)


 しかし、このように本作らしい味わいはきっちり見せてくれたこの巻ではありますが、前の巻の後半で如何にも意味ありげに描かれたイエズス会回りの展開は今回はほとんどお休み、肝心の望月の行方の方も――と、物語としての進みはほとんどなかったのも、正直なところであります。
(竹中半兵衛の死が一つの山ではあるのですが、実はそこまでケンと半兵衛の接点は大きくなかったという印象もあり……)

 実は史実では、この辺りは信長にはあまり目立った出来事がない時期ではあります。それだけに、難しいところだとは思いますが――まだもう少し先であろうクライマックスに向けて、もう一山二山、あってほしいところではあります。


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