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2020.04.20

スエカネクミコ『ベルサイユオブザデッド』第4巻 大混乱、天使と悪魔の間に……

 不死者が徘徊するフランスで繰り広げられる異形のドラマもいきなりクライマックスであります。ついに復活を遂げたジャンヌ・ダルク。しかし彼女は復活を見守った人々の前で思わぬ変貌を遂げ、そして天からは天使の軍勢が。混沌を極める物語の向かう先は果たして……

 不死者の群れの襲撃の最中に命を落とした姉マリー・アントワネットの身代わりとなった弟・アルベール。しかし彼に憑いた謎の存在に、警護役であるバスティアンをはじめとする周囲は翻弄されることになります。
 そんな中、次代の王であるオーギュスト(後のルイ16世)は、この国の状況を救うため、謎の「宝石」の力で、ベルサイユ宮殿の地下に眠るジャンヌ・ダルクの復活を決意。目的のために見境のなくなった彼が、不死者を操るナポレオン一党を招き入れたことによって、宮殿は大混乱に陥るのでした。

 そんな状況の中、ついに復活したジャンヌ・ダルク。その姿に昏い喜びを見せるアルベールの中のモノですが……


 というクライマックス感溢れる展開から始まったこの巻ですが、しかしここからさらに物語はとんでもない展開を迎えることになります。

 ジャンヌ・ダルクの中から現れる、生前の彼女に憑いていた存在・ミカエル。その強大な力は、彼の宿敵を称するアルベールの中のモノ(ミカエルの宿敵といえばやはり……)もろとも彼を粉砕、周囲を圧倒します。
 さらに天から現れた天使の軍勢が、宮殿を徘徊する死者の群れを粉砕し、ミカエルの前に向かうのですが……

 いやはや、大体においてフィクションにおいては天から天使の軍勢が下りてくるとほとんど最終回ということが多いように思いますが、本作もここで!? と思いきや、そこから描かれるのは、さらに想像を絶する展開であります。
 もはやアルベールもオーギュストもナポレオンも、すなわち人間の出番はないような展開には、ただ呆気にとられるばかりなのですが――しかし物語はまだまだ終わりません。

 大混乱が去った後、あまりにも冒涜的な方法で、ついに「マリー・アントワネット」となり、享楽に明け暮れるアルベール。そしてそんな「彼女」に翻弄されるバスティアンの前には、ミカエルを探す天使が――と、物語は天使と悪魔の戦いに焦点が移っていくのであります。

 タイトルが指す存在かと思っていた不死者たちが、ごく僅かの例外を除いて姿を消した中、果たして物語がどこに向かうか、これまで以上にわからなくなってきた本作。しかし、一度は完全にレールを外れるかに見えた史実の流れに危ういところで踏みとどまり、(見かけの上では)元に戻ったのもまた事実であります。
 そして天使と悪魔の動きだけでなく、表面上は目的を達成できずに一旦地下に潜ったナポレオンたちの動きも含め、人間たちの動向も気になるところですが――もちろんその筆頭は、より史実の、というか我々のイメージ上の姿に近づいた「マリー・アントワネット」であることは言うまでもありません。

 とはいえ、史実でいえば現在は1774年、あの運命の時まではまだ20年近くあることを考えれば、この先の物語が、史実をなぞっていくかどうかはまだまだわからないのですが――いずれにせよ、作品世界はいよいよ混迷の度合いを増していきます。
 繰り返しになりますが、どこに向かうか全くわからなくなったこの物語。それだけに、物語の結末が気になってしまうことは、間違いありません。


『ベルサイユオブザデッド』第4巻(スエカネクミコ 小学館ビッグコミックス) Amazon


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