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2020.04.15

白石純『魍魎少女』第3巻 乱入する第三勢力、その正体は――

 奪われた師匠の体を求めて数百年の旅を続ける「魍魎屋」の少女・林檎丸が、大正時代を舞台に大暴れを繰り広げる『魍魎少女』の第3巻であります。ついに師匠の心臓の在処を知った林檎丸ですが、その前に思いもよらぬ第三勢力が……

 この世に巣くう魍魎を「種」に変えて人に売る魍魎屋を営む林檎丸――見た目は十代前半の少女である彼女の正体は、師匠の雪之丞に作られた魍魎の自動人形・魍魎少女であります。
 親友であった男・八房によって戦国時代に七つに引き裂かれた雪之丞の体を探す彼女は、大正時代にまで至り、ようやく三つまで取り戻したのですが――残るうちの一つの心臓が、八房に仕える少年・チカの中に埋め込まれていることを知るのでした。

 自分とある意味対になる存在であるチカとの死闘を心待ちにしつつ、八房の根城に乗り込む林檎丸。かくて、大鋸を振り回す剣呑な美少女と、日本刀を自在に操る鉄面皮の美少年の激突再び――と思いきや、林檎丸は屋敷魍魎とも言うべき奇怪な相手の内部に捕らえられてしまうのでした。
 しかし事態はそれに留まらず、謎の西洋人たちが屋敷を襲撃。彼らこそは、八房の不死身の肉体を狙うアメリカのマフィア・ウルバーニ一家で……


 というわけで、存外早く雪之丞・林檎丸師弟の宿敵が登場し、過去の因縁も判明と、かなり展開が早い――と思いきや、思いもよらぬ新たな敵が飛び出してきたこの第3巻。
 それも魍魎絡みではない普通の(?)マフィアというのは少々どころではなく意外ですが、これがなかなか手強い――というより、街中で警官は殺す、ダイナマイトやショットガンを振り回すと、ある意味林檎丸並みに無茶苦茶な連中であります。

 もちろんそれで林檎丸が手加減するはずもなく、生身の人間相手でもお構いなしに大鉈ならぬ大鋸を振るうのは、ある意味痛快かもしれませんが――しかしやはり敵としては物足りないというのが正直なところであります。
 いや、あまりに自信満々に出てきたので、てっきり異能の持ち主とか実は同類とかそういう展開を期待したのですが――(今のところ)戦闘能力の高いただの人間というのは、意外性はあるし、バトルのバリエーションにはなるけれどもやはりどうなのかなあ、と感じたところです。

 もっとも、この巻の終盤ではマフィアらしい(?)厭らしい動きも出てきて、これから本領発揮というところかもしれませんが……


 そんなわけで物語的には脇道に逸れた感がなきにしもあらずですが、その一方で今回なかなか面白かったのは、単発エピソードである「有り余る私」であります。
 一旦旅に出た林檎丸たちがその先で出会った、彼女も大ファンの怪奇探偵小説作家・米津。引っ越してきたばかりの彼の家が幽霊屋敷だという訴えを聞いた林檎丸は、退治を引き受けるのですが……

 というこのエピソード、ここで登場する人型の襤褸切れのような「幽霊」の不気味さと、浮世離れした米津のキャラクター、さらには魍魎はいるけれども幽霊はいない(見たことがない)という世界観も面白いのですが――しかし印象的なのはクライマックスの展開。
 「幽霊」の正体が実は――というのはそこまで意外性はないのですが、それを描くビジュアルがなかなかに雰囲気が出ていて、実に味があります。

 派手なアクションが繰り広げられる一方で、、一種幻想的な描写が描かれるのも本作の魅力の一つであると、再確認させられた次第です。


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