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2020.04.06

「サムライねこぱんち 花の陣」(その一)

 「ねこぱんち」誌の時代漫画増刊シリーズの最新刊「サムライねこぱんち」が刊行されました。これまで人情ものがほとんどだった「お江戸ねこぱんち」から、タイトル通りサムライが主人公の漫画ほぼオンリーの内容であります。ここでは掲載作品を可能な限り紹介していきましょう。

『猫目見花行路』(ひのや)
 無実の罪を着せられて逃走したところを追っ手に斬られた父の仇を討つため、討手の家に女中に化けて潜り込んだ少年・花寿馬。しかしその討手は父の親友だったという豪放磊落な男で……

 巻頭に収められた本作は、ある意味非常にわかりやすい侍ものというべき仇討ちが題材。
 ユニークなのはわざわざ主人公が女装して仇のもとに潜り込むという点ですが、それに何故かくっついてきた家の猫が主人公ではなく仇の方に懐き、仇討ちを妨害して――というのが本作の猫時代漫画としての側面でしょうか。

 当然、父が斬られた真相は――となるのですが、意外性はないものの、整った絵柄と心理描写が好印象の作品でした(ただ、父の着せられた罪状はちょっと乱暴ではないかなあ――と思います)。
 何はともあれ、現在発売中の「ねこぱんち」163号にスピンオフが掲載されているとのことで、そちらも読んでみたいと思います。


『猫目侍』(ほおずき)
 辻斬りが町を騒がす中、拾った財布を持ち主の元に届けたことがきっかけで、思わぬ騒動に巻き込まれた浪人の半助。家を放逐された半助が抱える屈託とは……

 本誌の表紙を担当する作者による作品は、気弱な浪人の青年・半助を主人公とした物語。「心弱き者」として家から追い出された半助ですが、拾い猫を猫質に取られて、なけなしの勇気を振り絞って――と、悪役は非常に類型的な造形ですが、クライマックスで半助の過去と絡めた一ひねりがあるのに感心しました。

 絵柄的にもさすがに本誌で一、二を争う完成度で、「ねこぱんち」の次号(164号)に掲載される続編(?)も気になります。


『武士ねこ始末記』(市川おわ)
 若い頃からその剣の腕で「情け無用」と恐れられながら、奉行から拝領した太刀で猫を斬るよう上役から迫られ、拒んで左遷された奉行所同心の難波。半ば隠居したような姿の彼に、周囲の者たちは苛立ちを隠せないのですが……

 本誌では唯一の奉行所ものである本作。舐めていた老人が――ものの変奏ではありますが、彼の相棒となる猫(彼に斬られかけた猫)の貫禄十分の姿が印象に残ります。
 ただ、主人公は人を斬りまくってきたという設定なのですが、奉行所の同心がそんなに斬るかなあ――という素朴な疑問が浮かぶのと、悪役が愚かすぎるのがちょっと乗れなかったところです。本作も「ねこぱんち」次号に掲載予定とのこと。


『猫衛門もののふ手控帖』(桐丸ゆい)
 お江戸漫画という点では本誌一のベテラン作家による本作は、猫武士と町娘をナビゲーターにした絵コラム。二人のやりとりから当時の武士の風俗・文化がわかるという仕組みですが、あまり時代ものに接したことのない方でもわかりやすく紹介された内容はさすがであります。

 読んでいて一番時代もの(?)として安心できる内容だったのは確か――というのは当たり前といえば当たり前ですし、褒め言葉になっていないかもしれませんが……


 その他、『刀と髑髏猫』(月みとう)は、歴史の表に出ず、影から国を守る剣術集団・影岡流の当主決定の儀かつ魔封じの儀式を描く物語。
 設定的には大好きな部類ですし、魔の封じられた場所も非常に面白いのですが、しかしバトルものとしても熱血ものとしてもまだまだ――という印象が残りました(こちらも「ねこぱんち」次号にスピンオフが掲載されるようですが……)


 長くなりましたので次回に続きます。


「サムライねこぱんち 花の陣」(少年画報社にゃんCOMI) Amazon


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