「コミック乱ツインズ」2020年6月号(その二)
「コミック乱ツインズ」6月号の紹介の後編であります。
『政宗さまと景綱くん』(重野なおき)
東北の動乱、そして伊達家のお家騒動を収め、ついに秀吉と対面を果たすこととなった政宗。しかし相手は天下人、選択を一歩誤れば、政宗はおろか、伊達家そのものが――という状況であります。
さて現れた秀吉の言葉は――というわけでついに秀吉が本格的に登場したわけですが、その対面の模様は、ほぼ「史実」どおりに描かれることになります。
その意味ではあまり意外性はありませんが、しかしあの有名な政宗の白装束をネタにとんでもないギャグを入れてきたり、秀吉の仕打ちに対して人間的な成長を見せる政宗(とどさくさに紛れてアピールかます景綱)など、アレンジの加え方はいつものことながら巧みであります。
また、いかにも傲慢な天下人然とした態度を見せる秀吉が、年を取って偉くなってもやっぱり「あの」秀吉なのだなあ――と思わされるくだりは、あちらの作品のファンとしては大いにホッとさせられました。
そして、その秀吉に対して政宗が語る東北の姿とは――次回最終回となっても驚かない盛り上がりぶりであります。
『いちげき』(松本次郎&永井義男)
単行本第6巻発売&最終章突入ということでセンターカラーの今回。相楽総三暗殺の最終作戦に失敗して一撃必殺隊の大部分は壊滅、隊の抹殺を狙う勝が送り込んだ隠密によって指揮官を失い、友も失った丑五郎。もはや帰る家もない彼は、唯一残ったソノに会うため女郎屋に向かうも、そこには宿敵の薩摩藩士・伊牟田が……
と、牛五郎の最後の戦いが描かれるであろうこの最終章。導入となる今回は、その大部分を費やして、女郎屋に立て籠もった伊牟田が生み出した惨状が描かれることになります。
自らも戦いの中で数多くのものを失い、そして深手を負って命も遠からず尽きる伊牟田。その彼が女郎屋で追っ手の薩摩藩士を相手に繰り広げた大立ち回りの凄まじさは、まさしく死屍累々という言葉が似合うほどであります。その惨状が、丑五郎が一歩一歩確認しながら奥に進むに連れて描かれていく様はただ圧巻と言うべきでしょう。
(ただ一人生かされてその惨劇を目の当たりにしたソノが、尋常なようで訳のわからないことを口走る辺りの厭なリアリティ……)
しかし今回何よりも印象に残るのは、丑五郎と伊牟田の顔に浮かんだ「死相」の凄まじさでしょう。女郎屋の外で丑五郎を呼び止めた益満の「人は心労がたたり精も根も尽きると特徴的な人相になる」という言葉をこの上もなく再現してみせた二人の表情には言葉を失います(と、当の益満も周囲からそう思われているのが笑える)。
果たして死相を浮かべた二人の対決の行方は――どちらに転んでもただで済むはずがありません。
『カムヤライド』(久正人)
ヤマトに侵入したアマツ・ノリットとアマツ・ミラールの二人に対し、それぞれ戦いを挑むカムヤライドとオトタチバナ・メタルの二大戦士。しかし幹部格の敵を相手にしては彼らも分が悪く、一度は相手の力を封じたかに見えたものの、反撃によって二人は深手を負うことになります。果たして二人の、ヤマトの運命は……
と、猛烈に盛り上がってきたヤマト編。これはもうパワーアップでもしなくて無理なのではないか、という状況ですが、しかしそんな安直な展開ではなく、人間の底力を――それも二人ではなく、周囲の人々が見せる流れとなるのがたまりません。
アマツ・ノリットの見えない攻撃の正体はわかったものの、それを打ち破る手段を見いだせず大苦戦を強いられるモンコ(そもそもあれが応急処置になるのかしら)。そんな彼を救ったものは――ここでこう来たか、という展開ですが、これが実に熱い。いつの世もヒーローが孤独に戦う姿は良いものですが、それが人々に受け入れられた姿というのは、さらに良いものであります。
一方、アマツ・ミラール戦では、深手を負ったオトタチバナに代わり、ヤマトタケルが黒盾隊を率いて大反撃。技のカムヤライド、力のオトタチバナに対して、知のヤマトタケルという印象ですが、これまでの死闘を糧にした彼の成長が窺える姿は、オトタチバナも惚れること間違いなしでしょう。
そしてそんなヤマトタケルがミラールに見事な一撃を放つものの、しかし――と、まだまだ波乱含みの展開は続きます。
次号は表紙は『鬼役』、巻頭カラーは『勘定吟味役異聞』、隔月連載の『はんなり半次郎』が登場とのこと。
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