「コミック乱ツインズ」2020年6月号(その一)
号数の上では今年ももう半分過ぎたことになる「コミック乱ツインズ」誌、表紙&巻頭カラーは単行本第7巻が発売された『仕掛人 藤枝梅安』、センターカラーは同じく第6巻が発売された『いちげき』であります。掲載作品はレギュラー陣のみですが、今号はかなりの充実ぶりという印象であります。
『仕掛人 藤枝梅安』(武村勇治&池波正太郎)
梅安vs白子屋の激突を描く「梅安乱れ雲」編もこれで第3話、冒頭でようやく彦さんが登場して安心しましたが、メインとなるのはようやく出会った梅安と小杉さんであります。
出会うなり痛烈な顔面パンチを食らわせる梅安ですが、これも友を思うが故。暴走する小杉さんを引き留めて、のんびり二人で温泉に浸かりながら江戸に帰ることにした梅安ですが――そこに忍び寄るのは山城屋の配下五人であります。
呑気に温泉に浸かっていて丸腰どころか丸裸の状態では、さしもの手練れ二人も大ピンチ――というところで次回に続きます。
ところで二人で温泉といえば思い出すのは(思い出すな)、一部で話題の白子屋の刺客カップル・北山&田島ですが、故あって今月は別行動。これが後々思わぬ事態を招くのです――それはまた今後のお楽しみであります。
『勘定吟味役異聞』(かどたひろし&上田秀人)
本人の任とはほとんど無関係なところで、将軍位を巡って紀伊と尾張で繰り広げられる暗闘に巻き込まれることになった聡四郎。しかし今回正式に白石からの命で尾張吉通を暗殺した側女と側用人を追うことになるのですが――やはりどう考えても勘定吟味役の任ではないものの、何はともあれ(紀文たちが密かについてきたとも知らず)京都出張へ……
と、聡四郎の出立とほぼ時同じくして江戸で荒れ狂うのは鬼伝斎の邪剣。次々と道場破り――というより道場潰しを繰り返す鬼伝斎に、ついに無手斎は果たし状を叩きつけ、最後の戦いに臨むことになります。
ここで印象に残るのは、決闘の前に相模屋を訪れた無手斎を前にした紅さんの応対。死闘を目前に控えた相手への細やかな気遣いはさすがというべきで、師も弟子の嫁と太鼓判を押すのももっともだと思います。
(しかしこの会話が、ある意味今後の伏線ではあるのですが……)
『軍鶏侍』(山本康人&野口卓)
軍鶏侍最初の活躍の相手であった親友・秋山精十郎の忘れ形見・園に仇として刃を向けられた源大夫――という場面から始まった今回ですが、源大夫がこれくらいで動じるはずもなく、むしろ園の方が躊躇い、刃を引くことに。
そしてその園の前に現れたのは、(おそらく前回「凄腕の刺客」とだけ呼ばれていた)秋山家からの刺客。ポッと出のわりには異常に強く、丁寧な口調でキャラ立ちしたこの刺客は、園を子供扱いすると源大夫に挑戦を……
というわけで源大夫が女性に刃を向けるはずもなく、源大夫が秘剣「蹴殺し」を披露するのは刺客相手となった今回。弟子二人に秘剣の正体を教えつつ、真剣勝負に臨むという余裕っぷりですが、ここで描かれる秘剣の姿にはなるほど、と思わされます。
が、むしろ源大夫の教えはここから。一般に剣豪ものであれば何よりも尊ばれる「秘剣」を、彼は何と評したか……その内容には大いに唸らされましたし、今回の結末の爽やかさも、そんな源大夫の精神性ゆえと言ってよいのでしょう。
次回に続きます。
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