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2020.05.11

細川雅巳『逃亡者エリオ』第3巻 そして物語は逃亡者の過去へ!

 監獄帰りの好漢エリオ・サンチェスが、無実の罪を着せられた少女を助けて逃避行を繰り広げる本作も急展開。カスティージャの王位を巡る争いに巻き込まれたエリオと仲間たちの運命は、そしてついに語られるエリオの過去とは……

 地獄の監獄から自由の身になった直後、殺人者の汚名を着せられた貴族の少女・ララを助け、二人で逃避行することとなったエリオ。その戦いは、やがてララの父の友人の騎士・ゴルディ、ララを追ってきた警吏長バルド、暗殺者デボラをも仲間に加え、ララの異母兄である時のカスティージャ王・ペドロ1世を敵に回したものとなっていくことになります。

 そして同じくララの異母兄であり、ペドロ1世と対立するトラスタマラ伯エンリケに手を貸し、処刑寸前のエンリケの母を救出に向かったエリオ一行ですが、目的は果たせず逃亡することに。
 しかしその前に、ゴルディと因縁を持つペドロの腹心・アルブルケルケが、そしてデボラの暗殺術の師である「先生(マエストロ)」が立ち塞がることに……


 そんなわけで逃亡の意味がこれまでとは大きく変わることとなった本作ですが、新たな仲間たちも早速因縁の対決を迎え、主人公であるエリオの出番が減ってしまったように感じられます(デボラと先生戦できっちり存在感を見せるのですが)。
 しかしこの後、物語は第2章とも言うべき展開に突入することになります。何とかペドロ1世の追っ手を振り払い、エンリケのもとに身を寄せたエリオが、求めに応じて語り始めた過去――いわば彼が逃亡者になる前の物語が、ここから始まるのです。

 「現在」から5年前、父・ビクトルの下で弟のパブロとともに、王族の護衛たる武術のプロ「王衣」になるべく修行を続けていたエリオ。父に似て人助け好きのエリオと、自分以外のために力を振るうことに否定的なパブロ――対照的な二人は、ともに王衣選抜の闘技会に参加することになります。
 そこで待ち受けるのは、名門の武人や歴戦の傭兵をはじめ、いずれも一癖も二癖もある腕利きたち。そして候補者たちによるトーナメント開催――と思いきや、そこに自由を餌にされた武装囚人たちが乱入、一転バトルロイヤルに……


 と、本作らしくあれよあれよという間に物語は進み、気が付けばこれまた本作らしく、人の命が何よりも軽いバトル展開に突入していくのにはさすがに驚かされましたが、なるほどこう来たか、と感心させられたのも事実です。

 段々「逃亡者」のタイトルが重くなってきた感もありますが、この舞台でどこまで少年漫画的なバトルものを描けるか――これはこれで楽しみなところではあります。


『逃亡者エリオ』第3巻(細川雅巳 秋田書店少年チャンピオン・コミックス) Amazon

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