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2020.05.13

久正人『カムヤライド』第3巻 激突二大ヒーロー! そして敵幹部襲来!!

 日本最古の変身ヒーローアクション漫画も第3巻――表紙の方はフェティッシュにもほどがありますが、物語の方はいよいよ佳境、驚くべき事実が次々と明かされるヤマト編に突入であります。紆余曲折を経てヤマトに到着したモンコを待ち受けるものとは、そして迫り来るものとは……

 出雲に次いでモンコたちが訪れた難波の湊に出現した国津神を粉砕した第二のヒーロー、ヤマトの精鋭・黒盾隊の隊長・オトタチバナが変身する黒金の戦士オトタチバナ・メタル。
 モンコとは全く異なる戦闘スタイルのオトタチバナですが、その矛先はモンコとヤマトタケルにまで向かい、KOされた二人は緊縛スタイルでヤマトに連行されることに……

 というわけで辱め担当のヤマトタケルだけでなく、モンコまで縛りを入れられてのヤマト入りとなりましたが、もちろん皇子がいつまでも縛られているはずもなく、早々に解き放たれた二人。
 そして大王への献上品を作るために、モンコはハジ一族の工房に向かうのですが――そこに現れたのは何処かで見たような名前と顔の男・トレホ! 

 というのはさておき、モンコの顔を見たトレホは驚愕の表情を浮かべます。そしてその驚きは、オシロワケ大王も同様に、そしてより強い形で示すことになります。「ノミの宿禰」という名前とともに!


 と、この巻の最大のサプライズが、ついに明かされた(?)モンコの正体。モンコが何故カムヤライドに変身できるのか、そもそも彼は何者なのか――それはこれまで伏せられてきましたが、その後者の謎の一端が、ここで明かされたことになります。

 しかし言われてみれば埴輪の生みの親であり、そして蹴りを主体としたファイトスタイルとすれば、なるほど土師氏の祖にして埴輪の生みの親――そして当麻蹴速と蹴り合いの末に踏み殺した野見宿禰以外にはいないでしょう。
 連載時にこのくだりを目にした時、何故気付けなかったか――と口惜しく感じた気持ちが甦ります(もっとも、ヤマトタケルと野見宿禰は、記紀の上ではかなり時代的に離れているのですが……)

 何はともあれ、ここから展開するのは、再びノミの宿禰の、すなわちモンコの命を奪おうという大王の命を受けたオトタチバナとモンコの――オトタチバナ・メタルとカムヤライドの二大ヒーローの激突。
 技のカムヤライドと力のオトタチバナ・メタル――史上最古のヒーロー同士のバトルの行方も気になりますが、それだけでは終わりません。

 そこに襲来したのはさらに恐るべき敵、あのウズメの同胞であるイシコリドメとコヤネ――ウズメと同様の強大な力を持つと思われる幹部クラスの魔人が、それも二人もヤマトに現れたのであります。


 実にこの第3巻の冒頭で描かれるのは、本拠地と思われる地に潜む彼ら――ウズメ、イシコリドメ、コヤネ、そしてタマノヤとフトタマの姿。
 それぞれに人間の姿を取りながらも、人間と異なるメンタリティを持つ彼らは、二百年前――天孫降臨の際に高千穂に落下し、人間たちに奪われたと思われる存在・ニ=ギの体を求めて暗躍していることが、ここで語られることになります。

 なるほど、彼らの名の元となった天鈿女命・石凝姥命・天児屋命・玉祖命・太玉命は、瓊瓊杵尊の天孫降臨に従った五伴緒と呼ばれる神々。先に述べた野見宿禰と同様、このような形で神話と平仄を合わせてくるとは――と驚かされるばかりです。

 しかし如何に神々(と同じ名の存在)が出現したとはいえ、「今」は神々の時代ではなく、人の時代。そしてヤマトはその人々が生きる地であり――カムヤライドがその境界を守る地であります。
 果たしてその地で、真の敵というべき相手と二大ヒーローがいかに戦うのか――これからの盛り上がりを期待するなという方が無理というものでしょう。


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