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2020.05.21

和月伸宏『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚・北海道編』第4巻 尋問試合!? 次なる実検戦闘は何処

 この夏に実写映画完結編を控えた『るろうに剣心』の続編たる『北海道編』も気が付いてみればもう第4巻。正体は判明したものの、いまだその全貌を見せない劍客兵器に対し、剣心たちも助っ人を召集。いよいよ全面対決か――という前に、捕らえた劍客兵器への尋問が始まるのですが……

 元寇の際に戦った鎌倉武士を源流とし、歴史の陰でその力を蓄えてきたという武装集団・劍客兵器。「実検戦闘」の第一弾として箱館山を襲った一団の将たる凍座白也は捕らえたものの、斎藤一は凍座との戦いで傷を負い、剣心は歴戦の影響で体力が著しく落ちた状況であります。

 そんな中で、想像以上の規模を持つ劍客兵器に立ち向かうため召集されたのは、過去の恩讐を超えたドリームチーム――すなわち杉村義衛こと永倉新八、もと十本刀の悠久山安慈と瀬田宗次郎、さらに沢下条張・本条鎌足・刈羽蝙也の面々。
 役者は揃った! と言いたいところですが、しかし劍客兵器は神出鬼没。その全貌は、次の実検戦闘の舞台は――それを知らずしてはいかに戦力が整っても戦いはできません。

 そこで凍座を尋問することとなった剣心たちですが――しかしそこで凍座が指定した条件というのが奇っ怪至極。何しろ、自分と剣心が手合わせしている最中に限り、尋問を許すというのですから。
 かくて始まるのは、剣心と凍座の奇妙な戦い。完全に倒してしまっては話は聞き出せず、かといって斎藤一を苦しめた相手を、手を抜きながら戦えるとも思えない。一方の凍座の方も、一応は囚われの身でどこまで力を発揮できるものか……

 お互いハンデを背負ったこの状態、一歩間違えればとんでもない塩試合になりかねませんが、これが妙な(?)形で噛み合い、戦いは白熱することになります。
 相手の闘いに於ける本質が動物や神魔の姿で視えるという「闘姿」なる能力(?)を持ち、未だ正体のわからぬ異常なまでの頑丈さと膂力を発揮する凍座。そんな相手に如何に剣心とて手を抜くわけにはいかず、ちょっと大人げない大技ラッシュ!

 いやいやこれは尋問ではないのですか、とつっこむ間もなく繰り広げられる技の応酬の末、剣心たちが掴んだ次なる実検戦闘の場とは、なんと二箇所……


 というわけでチームを二つ、いや待機組も含めて三つに分けることとなった剣心。その中で剣心・左之助・アの三馬鹿こと明日郎・阿爛・旭の三人が向かう先は小樽であります。

 そしてニシン漁で沸き立つ彼の地で彼らを待っていたのは、思いもよらぬ事態で――と、これが実検戦闘に関わるかはまだわからないものの(関わらないとは思えませんが)、これまでとは全く異なる、搦め手とも何とも言いがたい展開には少々驚きました。
 剣心vs凍座の尋問試合の剛速球ぶり(もちろんこちらもシチュエーションはかなり変則なのですが)に比べて、この辺りのきっちりギャグも交えて変化球を投じてくる硬軟の使い分けには、やはり巧いなあ――と感心させられるばかりであります。

 もっとも、これは些か気になってしまうのは、物語展開――というより発表ペースの遅れ(それと関連しますが、単行本ではさすがに修正されていたものの、連載時にはちょっと悪い意味で驚かされる仕上がりの回もあり)なのですが、こちらは腰を落ち着けて待つしかないのでしょう。
 少なくとも、待っただけのものは確実に見ることができる作品なのは間違いないのですから……


『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚・北海道編』第4巻(和月伸宏&黒碕薫 集英社ジャンプコミックス) Amazon

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