高橋留美子『MAO』第4巻 現代-大正-平安 1000年を結ぶ謎と呪い
『犬夜叉』続編アニメ化が話題となりましたが、同じ作者の大正伝奇アクションも好調に巻を重ねて第4巻。関東大震災の業火の中で明らかになった因縁、そして平安時代の摩緒の兄弟子の出現と次々と新たな事実が判明する中、摩緒と菜花の戦いは続きます。
関東大震災の混乱の最中、封印から解かれた猫鬼の呪いを受けながらも、その器として生かされたことが明らかになった菜花。
その一方、摩緒の前には数百年前――彼が呪禁道を継ぐ御降家で修行中だった頃の兄弟子・百火が現れ、摩緒が師匠の娘・紗那を殺したと詰るのでした。
御降家の弟子の中でも末席でありながら、紗那の婿に選ばれ、破軍星の太刀を与えられた摩緒。しかしその実、彼は御降家に伝わる呪禁の秘宝の後継者選びの生贄として――百火をはじめとする五人の弟子のターゲットとされていたのであります。
お人好しの百火とは和解(?)した摩緒ですが、しかし残るのは幾つもの謎。紗那を殺したのは本当に摩緒なのか、百火が不死身――いや死んでも生き返ってしまう理由は何なのか。そしてその他の兄弟子たちはどこにいるのか……
と、現代と大正の約90年どころか、大正と平安の約900年にもわたるスケールの伝奇ものとしての色彩を強めてきた本作。
最大の敵と思われた猫鬼もある意味何者かに利用された存在であり――その意味では、摩緒だけでなく菜花も利用されていることになります。それが何者かはまだわかりませんが――この巻で描かれるのは、新たな兄弟子(と思われる者)との戦いの始まりであります。
前巻ラストで登場した、慇懃無礼な美青年・朽縄。植物を自在に操る彼の正体は、やはり摩緒の兄弟子、木属性の陰陽師である華紋でありました。
今はその術を用いて殺し屋紛いのことまでして暮らす華紋と、摩緒たちとの戦いが始まるか――と思いきや万事拘りの薄そうな華紋はあっさりと摩緒を見逃し、その場は収まったのですが、しかしすぐに襲いかかる新たな敵。何者かが式神を使役して人々を次々と蛙人間に変え、摩緒と百火を襲撃してきたのであります。
これを退けて新たな攻撃を迎え撃つ摩緒の前に現れたのは、悍ましい姿をした巨大な魔物。そしてその正体は――兄弟子ではない!?
という捻りも面白いのですが、ここで語られるのは、平安時代の御降家にまつわる更なる謎。果たして御降家を――摩緒を真に狙い、害しようとしているのは何者なのか? 状況は、いよいよますます混沌としてきました。
そんな中で、菜花はともかく摩緒が受け身の状態になっているのが気になるところですが――強気ヘタレとも言うべき百火のような面白いキャラクターも登場したことでもあり、ここからの更なる盛り上がりに期待したいと思います。
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