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2020.06.08

賀来ゆうじ『地獄楽』第10巻 三つ巴の大乱戦の果ての更なる混沌と絶望

 狂気の島での天仙たちとの死闘もついに決着――と思いきや、待ち受けていたのは更なる混沌と地獄。先発上陸組の死罪人と浅ェ門、天仙、そして追加上陸組の浅ェ門と石隠れ衆――三つ巴の死闘が繰り広げられる中で生み出された更なる混沌を前に、果たして人間たちに打つ手はあるのか……

 四人の天仙との死闘――辟餌服生の斎での決戦を、誰一人欠けることなく(一人欠けたと思ったらちゃっかり戦線復帰して)勝利した先発上陸組。
 後は仙薬を奪取して脱出するのみ――と思いきや、天仙たちのリーダー・蓮の真の目的は、日本全土の人々を丹に変え、完璧な丹を作り出す神獣「盤古」を生み出すことにあったことを佐切は知ることになります。

 そしてそんな中、ついに追加上陸組――山田浅ェ門殊現・十禾・清丸・威鈴、そして石隠れ衆が蓬莱に乱入。悪を斬ることに狂的な情熱を燃やす殊現の指揮の下、圧倒的な数と力を持つ彼らは、天仙や怪物たち、さらには先発上陸組にまで襲いかかって……


 というわけで、第4巻ラストでの登場以来、先発上陸組の物語が進むのと並行して、各巻のラストに顔を出すのが定番(?)となっていた追加上陸組が、この巻でついに本格始動。
 普段の顔は好青年ながら、悪を前にすれば狂人としか言いようのない苛烈さを見せる殊現以下、実力のみで選ばれた四人の浅ェ門と、命令とあらば平然と死を選ぶ石隠れ衆――殺意の塊のような面々を前に、既に満身創痍の先発上陸組は不利というも愚かな状況であります。

 そしてついにその殊現の前に立つのは、既に片手片目を失った厳鉄斎。剣豪として、ある意味浅ェ門たちと最も近い存在である厳鉄斎ですが、それだけに殊現の贄(つまり噛ませ)に最も相応しい彼の前に、ついに殊現の真の力が示されることになります。
 絶対的な力の差に圧倒される厳鉄斎の運命は……


 という一方で、三つ巴の大混戦をさらに混沌としたものと変えていくのが、石隠れ衆のリーダー的存在である「画眉丸」――もちろんあの画眉丸ではなく、彼の次の代の画眉丸――の存在です。
 実は一人の名ではなく、いわば屋号であった「画眉丸」の名。石隠れの筆頭、そして象徴として、代々受け継がれてきたのが、その名だったのであります。

 そして抜け忍となった当代の画眉丸を殺し、正式に画眉丸の名を継ぐために次代の画眉丸は動いているのかと思いきや――彼の目的はただ、最愛の画眉丸を里に連れ戻すこと。
 そう、次代の画眉丸=シジャこそは、画眉丸に異常な執着と愛情を持ち、画眉丸を殺し画眉丸に殺されることを夢見る正真正銘のド変態。それ以外には使命も主命も人類の運命も関係ない、彼の重すぎる愛の暴走は、この戦いの大きな不確定要素として機能することになります。

 しかし、事態をさらに混沌とさせ、絶望的なものに変える存在が、この巻の終盤に出現することになります。

 先発上陸組も追加上陸組も、全ての人間の努力を無にするかのような――いや、天仙たちの思惑すら粉砕してしまうような――存在を、極楽浄土と地獄が同時に現出したかのような状況を前にして、はたして打つ手はあるのか?
 ここからが真のクライマックスであります。(と、断言できないところが本作の面白くも恐ろしいところではありますが……)


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