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2020.06.22

『五右衛門vs轟天』 二大ヒーロー夢の対決、そして大混戦のオールスター戦

 悪の組織ブラックゴーモン壊滅のため、彼らの先祖である五右衛門を倒さんとするインターポールによって400年前に送り込まれた剣轟天。その頃、五右衛門は絵図に示された風魔忍軍の秘術を探し出そうとしていた。五右衛門と轟天、二人の対決は秘術の力によって思わぬ展開を見せることに……

 『偽義経冥界歌』が東京公演途中で中止、40周年記念の『神州無頼街』も中止と、劇団☆新感線ファンにとっては、辛いことが続く昨今。そんな中、ニコニコ動画で「SSP動画祭り」と銘打って、未ソフト化の公演が動画配信されることとなりました。
 その第4弾が、劇団☆新感線35周年オールスターチャンピオン祭りと題して五年前に公開された『五右衛門vs轟天』であります。

 五右衛門とは言うまでもなくあの石川五右衛門――『五右衛門ロック』シリーズで大活躍する、近年の古田新太の当たり役。釜茹でにされたはずの彼が海の向こうに脱出、世界を股にかけて大暴れ――という大活劇シリーズの主役を務める好漢であります。
 一方の轟天は、新感線の一方の柱であるネタものの雄『直撃! ドラゴンロック』の主人公である、異常にワイルドな風貌の武術達人にして、異常なまでの女性(の下着)好きという変態。橋本じゅんといえばこれ、と言うべきあまりにも濃すぎるキャラクターです。

 奇しくもこれまでに新感線での主役作品が三本ずつのこの両雄が、ダイナミックな感じでvsする本作、何故か(?)ソフト化もされていなかったのですが、今回このような形で配信されたのは望外の喜びです。


 さて本作は、悪の組織の手に落ちかかっている現在を救うため、五右衛門の○○を叩き潰す指名を帯びた轟天がタイムスリップ、五右衛門と対決するのが縦糸。そして五右衛門と女盗賊・真砂のお竜、からくり戯衛門(その実は……)と、風魔忍群、五右衛門の宿敵・マローネ侯爵夫人一味が繰り広げる三つ巴の争いが横糸の物語であります。
 設定的には、『五右衛門ロック』シリーズ三部作の後の時系列に轟天が乱入した形になるのですが――さらにそこにその他の新感線作品のキャラクターたちがスターシステムで次々と顔を出すという、実に豪華かつ混沌とした内容の作品です。

 そんな俺が俺がの状態の本作で、主役二人以外に強烈な印象を残すのは、何といってもある意味この混戦の元凶である、謎のビジュアル系忍者・ばってん不知火。
 『レッツゴー! 忍法帖』で池田成志が演じて大暴れした怪キャラクターですが、本作でも自分自身で何をやっているのかわからない、というノリで場を引っかき回し、こちらを大いに抱腹絶倒させてくれました。

 また同じ『レッツゴー! 忍法帖』からは、中谷さとみ演じる風谷のウマシカが登場。マローネに支配されたぬらくら森に住む青き衣をまといし少女で、実は本作のヒロイン枠の一人なのですが――名前からわかる通り、実にマズいキャラ。
 初登場作品の頃からマズかったのですが、今回はそれにさらに拍車がかかり、ラストバトルに森の仲間たちと参戦した時の姿は完全にアウト。本作がソフト化されないのはもしかして――という疑惑も浮かびます。


 その他、陰険メガネと長髪美形と一粒で二度美味しい粟根まことの熱演や「ふんどしと呼ばれる男」の客演など、実に賑やかな本作なのですが、しかし一番感心させられたのは、マローネ役の高田聖子でした。

 マローネ自身は、これまでシリーズ二作品に登場したお馴染みのキャラクターなのですが、本作では中盤にとんでもない大異変が起こり、大きくその立ち位置が変わることに。
 そしてそこからの展開はほとんど古田新太との演技合戦――長年新感線を引っ張ってきた二人ならではの応酬には、ただ感心させられるばかりであります(この辺り、この展開を用意した脚本も流石です)。

 もっとも、そのおかげでというべきか、中盤は轟天の影がちょっと薄い印象もあるのですが――まあ存在しているだけで濃いの轟天というキャラで、もちろんクライマックスではお馴染みの(?)最低過ぎる格好で大暴れ。
 これまでのシリーズであれば五右衛門が務めていた役割を見事果たして、両雄の大暴れに繋がっていく展開には、ただ笑顔で拍手するしかありません(しかしこうして見ると、五右衛門は新感線作品の主人公の中ではかなり常識人だったのだな――と再確認)。


 そしてラストには、五右衛門といえばこれ! という展開からの最高の見得切りで幕――と、大満足の本作。五右衛門シリーズとしてもきちんと(?)成立しているだけに、やはりソフト化されていないのは残念ですが、ここしばらくの鬱憤を吹き飛ばすことが出来た快作であることは間違いありません。


関連サイト
 新感線・シンパシー・プロジェクト

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