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2020.07.01

久正人『ジャバウォッキー』第6-7巻 エジソンと石油と来るべき「明日」と

 リリー・アプリコットとサバタ・ヴァンクリフの冒険も、いよいよ最後のエピソードを迎えることとなりました。第6巻から第7巻にかけて収録の「ETERNAL FLAME」――ラストに相応しく繰り広げられる壮絶な三つ巴の死闘とその先の巨大な陰謀の物語の紹介であります。

 アメリカとの休戦協定調印のためにニューヨークを訪れたイフの城のトップ、モンテ・クリスト三世を襲った何者かの銃弾。その犯人がルイジアナ州のモンコなる地に関係していると知ったリリーとサバタは、早速現地に飛ぶことになります。
 途中出会ったバッファロー・ビル(!)のワイルド・ウエスト・ショー一座に潜り込んだ二人は、「何か」を採掘して潤っているという新興の町外れにあった秘密工場に潜入。しかし潜入者は彼女たちだけでなく、バッファロー・ビルたちも既に潜入していたのであります。

 彼らの正体はアメリカのスパイ組織CIA――Crusaders In Americaのメンバー。このモンコで石油を使った「何か」を造り出そうとしている者がいること、そしてそれが宿敵・有翼の蛇教団であることを知った二人は、CIAと手を組み、探索を始めるのですが……
 果たして「役に立たない」石油を使って恐竜たちが何をしようとしているのか? その謎に辿り着く前にエジソンの放った産業スパイ・99部隊が工場を強襲、イフの城&CIA・有翼の蛇教団・99部隊の三つ巴の大乱戦が始まるのですが……


 西部劇(というよりイーストウッド)味漂うこのエピソードで展開するのは、エジソンをゲストに迎えての、石油とそれを用いる「ある発明」を巡る戦い。
 いかにも本作らしく、史実で伝わるネガティブ面をぐぐっと広げて造形されたエジソンの姿は、むしろ痛快ですらあるのですが――しかしそんな彼の行動が、物語の、いや歴史の行方を大きく変えることになるとは!

 「ある発明」の正体については中盤で判明するのですが、しかしそれはまだ物語の謎の半分。それでは何故有翼の蛇教団が(彼らにとっては不要である)それを発明していたのか――その真実はまさに圧巻というほかありません。
 このエピソードのタイトルであるETERNAL FLAME――永遠の火種とは何なのか、そしてそれが燃え移った先にあるものは――これまでも任務を成功させながらも苦い後味が残るエピソードはありましたが(やはり未来に繋がる物語であった「RED STAR」など)、しかしここで描かれたものは、かつてないスケールでもって、我々の(そう、我々自身の)「明日」にも重くのし掛かってくるのであります。


 とはいえリリーとサバタはひとまずは任務を終えて生き延び、途中ギクシャクした二人の関係も明るい「明日」を予想させて――本作はここに結末を迎えることとなります。

 正直なところ、有翼の蛇教団との、そして何よりもサバタの宿敵中の宿敵であるジャンゴとの決着はついておらず、その点には――掲載誌が途中で休刊、その後は配信にて連載という状況はあったものの――食い足りなさは残りますが、この結末は、これはこれで「らしい」と言うべきかもしれません。

 もっとも、ここで燃え移った火種の辿り着くところ、そしてジャンゴの「20世紀が楽しみだ」という言葉の意味は、続編・後日談である『ジャバウォッキー1914』で描かれることとなるわけですが――それはまた、時を改めてご紹介させていただきます。


『ジャバウォッキー』(久正人 泰文堂アース・スターコミックス) 第6巻 Amazon / 第7巻 Amazon

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