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2020.07.23

出口真人『前田慶次かぶき旅』第4巻 開幕直前 いくさ人・武芸者オールスター戦!

 関ヶ原の戦後の前田慶次が九州に渡って大暴れの『前田慶次かぶき旅』、第4巻では天草での騒動に本格的に慶次が首を突っ込むことになります。さらにあの男をはじめ敵味方とんでもない面々が次々と加わり、事態はオールスター戦の様相を呈することに……(内容の詳細に踏み込みますのでご注意下さい)

 肥後の加藤清正の下での南蛮海賊と地元民の争いを、御前試合という思わぬ手段を提案して解決に導いた慶次。しかし争いの背後に九州で乱を起こさんとするキリシタン勢力の暗躍があることを知った慶次は、当然のようにその本拠・天草に乗り込むことになります。
 天草のキリシタンを操るのは、御前試合で弟を立花宗茂に斬られたガルシア神父。そして彼に忠実に付き従うのは、巨大な長巻を自在に操る佐々木小次郎(初代)! そしてその小次郎が慶次の前に姿を現して……

 という一触即発の状況から始まるこの巻ですが、悠揚迫らぬ態度の慶次に対して、真っ先に小次郎に突っかかっていったのは――そして燕返しで斬られたのは柳生兵庫助。本作の兵庫助はそういう役回りですが、そこで立ち上がったのは、兵庫助の付き人を務めていた謎の巨漢・左兵衛であります。

 まさしく獅子吼というべき凄まじい気合いとともに小次郎の前に立ち塞がった左兵衛。覆面に隠されていたその正体とは――死んだはずの島左近!
 ……兵庫助の近くにいて名前に左の字がつくという時点でまず間違いなくそうだろうと思っていましたが、やはり慶次とSAKONの競演はテンションがあがります(いや、あちらの左近とは一応無関係なんですが)。

 そして慶次方に思わぬ強敵がいることを知ったガルシア神父と、小次郎に命を下す謎の老人――その正体は丸目蔵人佐(!)が、さらに戦力を増強するために招いたのは、新免無二斎、そしてその息子・弁之助。
 一方の慶次側は、慶次・兵庫助・左近に加え、ガルシアに弟の仇討ちという名目で引っ張り出された立花宗茂と、こちらももの凄い顔ぶれ。もはやこの時代の名のあるいくさ人(牢人)・武芸者オールスター戦状態なのであります。


 と、実際にはこの巻では敵味方が揃って次巻に続く、まさに顔見世というところなのですが、しかしやはりこれだけの面子が揃えば、それだけでテンションが上がることは間違いありません。
 本作では慶次はほとんど鬼札状態であって、自分ではほとんど動かない状態ですが、それに代わって、彼の廻りに数々のキャラクターを設定するのは、これはこれで大ありと言うべきでしょう。

 しかしこの巻で一番のクライマックスは、実は上で触れた左近と、清正・宗茂の対面のくだりと感じます。
 言うまでもなく左近は関ヶ原の戦で西軍を指揮した石田三成の軍師。一方、清正は関ヶ原では東軍に属した、三成のある意味宿敵ともいうべき存在であり――そして宗茂は西軍で戦い、戦の後も清正と矛を交えた男と、実にややこしい間柄の面子であります。
(さらにいえばその時、西軍と連動して出羽で暴れていた慶次)

 そんな面子が一堂に会した時、何が起こるか? ……言うまでもありません、いくさ人はいくさ人を知るのであります。そんな豪傑たちが肝胆相照らす姿は、兵庫助でなくとも泣けるものがあるのです。


 史実との整合性などは一旦置いておいて、この時代にこの面子でこういう物語が見たい、というのにきっちり応えてくれる本作。それはそれで、大いにアリと言うべきでしょう。
 いわば現代の講談として――この先の展開も大いに期待しているところであります。


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