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2020.07.17

川崎いづみ『大江戸もののけ物語』(小説版) 妖怪時代劇、まずは小説で登場

 本日からBSプレミアムで放送開始の『大江戸もののけ物語』を、脚本家自身がKADOKAWAの児童文庫レーベル「角川つばさ文庫」でノベライゼーションした一冊――寺子屋の先生と三人のもののけが様々な事件に挑む、にぎやかな物語であります。

 優しい心を持ちながら気が弱く、教えている寺子屋の子どもたちからもなめられている武家の次男坊・新海一馬。そんな彼の密かな楽しみは、もののけに関する書物を読むこと――実は彼には、幼い頃にもののけと出会った過去があり、それ以来、家族に隠れてもののけに関する書物を集めていたのであります。

 そんなある日、いつも自分を助けてくれる気の強い教え子のお雛が沈んでいるのが気にかかった一馬は、彼女がとあるお堂に祀られた古い器に祈っているのを目撃することになります。お雛が去った後にその器に載せられていた緑の石を手にした一馬ですが、その彼の前に、天の邪鬼、猫又、河童の三人のもののけが現れたではありませんか。
 どうやら緑の石を手にした時にもののけを見ることができる力が自分にあると知った一馬は、もののけたちの力を借りて、お雛の悩みを解決しようとするのですが……


 というTV第1話の内容とほぼ同じエピソードから始まる本作は、そのキャラクター配置や物語を見れば瞭然なとおり、いわゆる妖怪時代劇――江戸の町を舞台に、主人公が妖怪たちと協力して事件解決に奔走するスタイルの物語であります。
 この妖怪時代劇は、少し前までは文庫書き下ろし時代小説では結構な点数が刊行されていましたが、内容的には「人情もの」が基調といえます。

 本作でも、冒頭の、上で紹介したお雛のエピソードはまさにそうした「人情もの」のフォーマットですが、それ以降は、人の命を奪う帳面を持つ一つ目小僧との対決、そしてさらなる強大な敵との対決と、妖怪退治もの的な展開となっていく点は、なかなか興味深く感じられました。
 特に一つ目小僧のエピソードは(最初のエピソードも少しそうした性格がありますが)、一種の能力バトル的展開となっているのが、実に面白いところであります(この一つ目小僧の能力、突飛なようですが、人間の一年の落ち度を記録して疫病神に報告するという伝承から来ているのでしょう)。


 このようにユニークな点はあるのですが、このノベライゼーションは児童向けであることから、かなりシンプルな書き方になっている――のは仕方ないのですが、それでも正直なところ、個人的には首を傾げる部分、食い足りない部分が少なくありません。

 特に終盤の、何故一馬と天の邪鬼が重要なのか、物語の中心となるのかという部分は、もう少し描く必要があったのではないかと思いますが――この辺りは、ドラマの方でもう少し掘り下げられるのではないかと期待します。
(あと、ヒロインのはずのおようの主役エピソードがノベライズされていないので、お雛の方がヒロインっぽく見える――というのは仕方ないとは思いますが)

 もっともこれは大人の、マニアの目線ではあり、妖怪時代劇がTVで放映され、そしてそれが児童向け文庫でノベライゼーションされるというのは、何とも嬉しいことではあります。
 本作で予習が出来たことでもあり、次はTVの方で楽しませていただこうと思います。


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