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2020.07.18

『大江戸もののけ物語』 第一話「お雛の願い」

 寺子屋の師匠を務める一馬は、優しいが気は弱く、気の強い生徒のお雛に助けられてばかり。ある日、元気のないお雛の後を追った一馬は、廃寺で彼女が土器に祈っているのを目撃、そこにあった緑色の石を手にした時、土器が割れて一馬の前に天の邪鬼が現れた。天の邪鬼からお雛の願いを聞いた一馬だが……

 コンスタントに時代劇を放送しているBSプレミアムですが、この夏に放送されるのは『大江戸もののけ物語』――原作はありませんが、一時期ブームとなった妖怪時代小説を映像化したようなテイスト妖怪時代劇です。
 この妖怪時代劇は、妖怪の存在を見ることができる主人公が、彼らと力を合わせて様々な騒動を解決していく――というのが一つのパターンですが、本作はまさにそれを地で行く物語であります。

 主人公の一馬は武家の次男坊ながら、剣も苦手で気も弱い青年。普段は寺子屋の師匠を務めているものの、子供には舐められっぱなしという有様であります。
 そんな彼の密かな趣味は、妖怪研究――幼い頃に家の蔵で妖怪と出会ったことをきっかけに、妖怪のことを記した本を集め始め、今では厳格な父に隠れて屋根裏に妖怪研究室を作っているという、完全に(ちょっと困った類の)マニアであります。

 そんな彼がふとしたことから三人のもののけ――天の邪鬼、河童、猫又と出会ったことをきっかけに、教え子のお雛の願いを叶えるために奔走するというのが今回のお話。何だか共通点のない面子ですが幼馴染らしいこの三人、どうやら天の邪鬼だけ何者かに火焔土器の中に封じ込められていたようですが――その封印を破ったのが、一馬ということになるのでしょうか。

 それはさておき、火焔土器に祈っていたお雛の願いを聞いていた天の邪鬼が(その名前の通りの性格を逆手に取られて)一馬に教えたのは、死んだ母に会いたいというお雛の願いでした。
 普通であればさすがに無理だと思うところですが、ここで妖怪研究室の妖怪本を漁った一馬は、その中から一人の妖怪を見つけ出します。その名は「魂探し」――その名の通り、人の魂を集めている剣呑極まりない妖怪のようですが、一馬は天の邪鬼に頼んでこの魂探しを呼び出してもらおうとするではありませんか。

 そして一馬とお雛の前に現れた魂探しに、お雛の母を呼び出して欲しいと願う一馬。しかしその代償に、魂探しは一馬の魂を要求してきて……


 という、一種の人情ものの今回、母を亡くして悲しむ少女(普段のほとんど寺子屋の顔役みたいな強気ぶりとの演じ分けがお見事)を元気づける――というのは定番かもしれませんが、その解決のための手段が、母親の魂を呼び出すというのは、これは妖怪時代劇ならではの展開とというべきでしょうか。
 しかし魂探しという初めて聞く――のはともかく、何だかえらい剣呑で強力な妖怪の存在を調べ上げるとは、一馬のマニアっぷりは相当のもの。というよりあの妖怪本、火焔大魔王やコーンジョのことも載ってそうであります。

 ほかにも、そんな魂探しにあっさりと話をつける天の邪鬼や、○○○の○○○はそんなに大きくないよなあ――など、ツッコミどころは色々とあるのですが、感心させられたのは妖怪のデザインと造形の良さ。
 あまり妖怪っぽくないフォルムの猫又はともかく、やはり人間同様の姿ながら、上半身の各所に貼り付いた土器の欠片がデザインのアクセントとなっている天の邪鬼、逆に完全にクリーチャー状態の河童など、いい感じで親しみやすさと異形さが出ていたかと思います。

 本作の妖怪デザインは、2005年の『妖怪大戦争』でも妖怪デザインを担当した井上淳哉で、この辺りはなるほど――と納得させられたところであります(ちなみに本作のエグゼクティブ・プロデューサーは、『妖怪大戦争』の製作総指揮の角川歴彦で、この辺りちょっと興味深い)。


 今回はキャラクターや設定紹介を行う必要もあって、比較的シンプルなお話ではありましたが、まずは手堅い滑り出しという印象。それでもヒロインのおようの後をつける不気味な影や、何よりも記憶を失い廃寺に封印されて外に出られない天の邪鬼の存在など、この先の展開への引きもありました。
 全五回予定の本作、この先何を、どこまで描いてくれるのか――実はかなり珍しい妖怪もののTV時代劇ということもあり、楽しみにしたいと思います。


 と、ラストに妖怪に関する荒俣宏のミニコーナーがあるのですが、そこで「君たち子どもたち」という発言が。本作、子供向けだったのですね……


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