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2020.08.01

『大江戸もののけ物語』 第三話「新海家の秘密」

 父・源之進から勘定奉行・池田の一人娘との縁談を持ち込まれた一馬。寺子屋の師匠をやめるよう厳命され、悩む一馬だが、突然一之進が、自分が代わりに養子に行くと言い出す。普段優しい兄の突然の行動を不思議に思う一馬は、兄と母の会話から思わぬ真実を知ってしまう。そして源之進の選択は……

 あらすじを見ると全く妖怪要素のない回に見えますが、実は前半はほとんどそのとおりの今回。全五回の中盤ですが、正直色々とすっきりしない回であります。

 前回以来、お雛の偽手紙(気付けよ……)による逢引もどきもあって距離が縮まる一馬とおよう。しかしそこに源之進がいきなり養子の口を持ち込んだことで、一馬の周囲は一気に複雑な状況となります。
 この養子、いつもながら封建家長主義の権化のような源之進の強引な行動――に見えますが、一応旗本であってもどう見ても金のない(使用人見たことない……)新海家に厄介叔父を養う余裕がないのは明らかで、しかもその養子先が三千石の勘定奉行・池田家とは、とてつもない幸運であることは間違いありません(源之進は勘定方らしいので、一気にトップの跡継ぎを輩出することに)。

 しかし源之進と一馬以外が見ればどう考えても裏があるとしか思えないこの話、勝手に武家の事情に首を突っ込むお雛と、妖怪本を捨てなければいけないために(いうだけではないですが)ブルーな一馬を見て探りに来た河童が見た結婚相手は、酒は飲むタバコは吸うと絵に描いたような不良娘。
 それでもそんな状況であろうとお家のために受け入れるのが武士と、話は粛々と進み――と思えばそこに待ったをかけたのは、兄の一之進であります。突然自分の方が三千石に相応しい、お前ではだめだと言い出す一之進ですが、これまで出来の悪い弟にも優しかった彼とは思えぬ言動に、これはもしや――と思えば、ここで明らかになるのがタイトルの「新海家の秘密」です。

 その秘密とはほかでもない、実は一之進は子供のなかった新海家に来た養子であり、一馬はその後に生まれた実子だったのであります(あ、それで二人とも名前に「一」の字が――と感心)。
 そしてその真実を知って自分が養子に行くと言い出した一馬の覚悟を、木刀を交わして確かめる一之進や、涙ながらに一之進も自分の子だと告げる母、そして息子たちの想いのぶつけ合いを黙って受け止める源之進と、出演者の熱演もあって、普通にいい時代劇していたのですが……


 しかし、ここで意を決して縁談を断った源之進に対して恨みを抱いた池田に、百鬼がちょっかいをかけたことで一気に雰囲気が怪しくなります。百鬼に妖気を植え付けられた(取り憑かれた?)池田は、家臣を率いて帰り道の源之進を襲撃。そこに悪い予感がして駆けつけた一之進・一馬兄弟も加わって、全く刀を抜くことに禁忌のない連中(一馬、前回もすぐ刀抜いてたからな……)の斬り合いがスタート。

 一之進を助けるために飛び出した猫又の奮闘(河童は速攻で逃げました)があるも、さらに何もそこまで――と言いたくなるくらいに火の玉をブッ込まれた池田様は落ち武者スタイルで一馬たちに襲いかかり……
 と、もちろんここで頼りは天の邪鬼なのですが、例によってお堂には結界が。何とか体当たりで抜けようとするも、結界は手強く――と、そこにどこからか七支刀が出現! 何だか雑なパワーアップを遂げた天の邪鬼は戦いの場に駆けつけると七支刀一閃! 池田様は火の玉を吐き出して倒れるのでした(死んでないよね?)

 というわけで、何となく一馬とおようの距離もまた縮まり、新海一家も絆が深まってめでたしめでたし――と言いたいところですが、結局源之進は勘定奉行に睨まれたままだし(悪くすれば刃傷沙汰で目付に絞られるし)、池田家の方も大勢で刃傷沙汰を起こして、跡継ぎ以前の問題でお家の存続が危ういのでは――と心配になります。
 しかしこの状況、別に百鬼が手を下さなくとも刃傷沙汰以外は変わらなかったわけで、言い替えれば今回妖怪ものである必然性がほとんどなかったのが大いに引っかかるところではあります(これが池田家の娘の素行が妖怪のため――とかであれば納得なのですが)

 さらに気になってしまうのは、友達友達言いつつ、結局一馬たちと天の邪鬼たちのどの辺りが友達なのか、説得力がない点で――特にお雛のジャイアン的な一方的友情の押し付け描写はかなり不快であります――猫又が新海家に肩入れする理由は見えてきましたが、あとは河童のように気まぐれに手伝うくらいは納得できるところで、なぜ天の邪鬼が一馬にあそこまで肩入れできるかの説得力は感じられません。

 どうやら次回、その辺りの関係性が語られるようではありますが――さて。


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