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2020.08.08

『大江戸もののけ物語』 第四話「騙された清庵」

 ある日突然、原因不明の病に罹り、明日をも知れぬ状態になってしまった一馬。それは名前を書かれた者は命を落としてしまう死怨帳を持つ一つ目小僧の仕業だった。自分が一つ目小僧に操られ、一馬の名を書いてしまったことを知った清庵和尚は、命を賭けて一馬を救おうとするのだが……

 ノベライゼーションの時点でなかなか面白いエピソードだったので期待していた今回、期待通りにドラマ、アクション等、充実の内容でした。

 冒頭、阿漕な質屋が苦しみ抜いて死んだ場でほくそ笑む編笠の法師――それこそが今回の敵妖怪・一つ目小僧。名前を書かれた者は、三日三晩苦しみ抜いた末に命を落とすという死怨帳なる黒い帳面を持ち、犠牲者の断末魔の姿をその一つ目で眺めるのが何よりも楽しみという、剣呑過ぎる妖怪であります。
 いや、デスノ持ちの一つ目小僧なんて聞いたことがない! と言いたいところですが、伝承の中には師走に一つ目小僧が人々の落ち度を調べて帳面につけ、疫病神に報告して災難をもたらすというものがあるので、本作はそれをベースとしたものなのでしょう。完全オリジナルよりも好感の持てる設定であります。(しかし死怨帳のことまで載っている一馬の妖怪図鑑とは……)

 さて、例によって蝋燭を前に凄む百鬼様が、この一つ目小僧に一馬抹殺の命を下したことにより危機が迫るわけですが――実はこの死の帳面、一つ目小僧自身では相手の名前を書けないという制限があります(冒頭の質屋も、恨みを持つ者に名前を書かせた)。
 それ故、一馬の周囲で恨みを持つものを探す一つ目小僧ですが――おように対して無神経な一馬に憤るお雛に接近した時には、一方的に一馬のグチを聞かされて退散、次に出会った寺子屋の子供を饅頭で釣って、一馬に虐められたという証言を引き出すのでした。

 そしてそれをネタに清庵和尚に近づいた一つ目小僧は、和尚に一馬の名前を書かせることに成功し、一馬は人事不省の状態に陥ることになります。
 しかしあれだけ一馬を信頼し、一馬から敬愛されている和尚が、子供の嘘に釣られて一馬の名を書くかなあと思いますが、実際には一つ目小僧の妖力に操られて――というのがちょっと残念なところで、これがアリなら、結局一つ目小僧は自分で帳面に名前を書いているも同然では――と思いますが、これはまあ、子供の嘘とそれを庇って謝った一馬の行動から生じた心の隙を突かれたということなのでしょう。

 というのも、以前からただものではない雰囲気を漂わせていた和尚はやはりその印象通りの人物。死の床の一馬の姿からただ一人妖気を察知し、お雛の訴えを受けて訪れた猫又の正体も受け入れた上に、一つ目小僧の居場所を見破り、体術や法力でたじろがせるという強キャラぶりを発揮するのであります。

 今回ダウンしっぱなしということもあって、もうこれ一馬いらないのでは――という気も一瞬しましたが、一馬の呪いを引き受けて今度は和尚がダウン、ここぞとばかりにオーバーアクトで苦しむ和尚を救うために一馬と妖怪たちが一つ目小僧に挑む、という流れになります(ここで驚くほど素晴らしいヒーロー立ちを見せる天の邪鬼)。
 しかし先程は油断しただけなのか、正面からの戦いでは天の邪鬼を圧倒する一つ目小僧。圧倒というより、ほとんど瞬間移動の神出鬼没ぶりに、天の邪鬼も手が出せないのですが――友のピンチに一馬が覚醒! 一つ目小僧の動きを悉く先読みして天の邪鬼に指示、勝利を収めるのでした。


 というわけで、ゲスト妖怪の設定(アレンジ)の面白さと、ちょっと能力バトル風味もあるラストの対決の盛り上がりという妖怪関連だけでなく、病に倒れた一馬に父が真情を吐露したり、寺子屋の生徒たちが見舞いに押しかけることで一馬と生徒たちの絆や慕われぶりを示したりといった、キャラクター面の描写を通じた人情ものとしての側面もあり、前回の微妙さが嘘のようだった今回。こういう話が観たかった、という気分であります。

 そして盛り上がったところで次回は最終回――早くも自ら出陣を決めた百鬼と、一馬・天の邪鬼の対決が描かれるようですが、今回も幾度か語られたように、一馬が人間と妖怪の架け橋であるという設定の意味や理由がきちんと語られるのか、その点のみが気にかかるところではあります。
(普通の人間には見えない妖怪たちが、人間たちに迫害されている、という設定もひっかかるところでもあり――まあこれは自然破壊で住処が、というアレだと思いますが)

 もちろんこれは大人のマニアのひねた目ではありますが、そんな人間も納得させてくれれば言うことなし――最終回も楽しみにしたいと思います。


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