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2020.09.23

久正人『ジャバウォッキー1914』第3巻 宿敵出現! 地底の激闘

 新たな人間と恐竜人の物語『ジャバウォッキー1914』もいよいよ後半戦。この第3巻では、アルプス山脈を巡る殻の中の騎士団との激闘が描かれることとなります。その中でいよいよ姿を現す積年の宿敵、そしていよいよ物語は核心に近づいていくことに……

 ベルギー・ドイツ・オランダの三国の国境が複雑に入り組んだヤンデホーフェンの街での仕事に当たるリリー、サモエド、シェルティ。そこでリリーの前に現れたのは、かつてイフの城でサバタと3人で任務に当たっていたブースロイド――今は道を違え、英国情報部のトップに収まっている彼は、@こと殻の中の騎士団を追ってこの地にやって来たのであります。
 そんな彼らの眼前で起動した@の巨大メカ・ダート竜は、ヤンデホーフェンの街を消滅させながらシェルティもろとも地中に消え去り……

 という展開から始まったこの第3巻には、一冊丸ごとアルプス編を収録。古式ゆかしいドリルメカであるダート竜の中に囚われたシェルティの運命は、果たして残されたサモエドとリリーは彼女を救い出すことができるのか。そして何よりもダート竜を操る地底恐竜オリクトドロメウスのダッケルの目的とは?
 ――と、サスペンスフルな展開が続きますが、しかし『ジャバウォッキー』読者としてやはり見逃せないのは、あのジャンゴの登場あることは間違いありません。

 @の前身である「有翼の蛇」教団の幹部であり、何よりもサバタの右手と妹を奪った宿敵であるアロサウルスのガンマン・ジャンゴ。前作ではサバタとの死闘の末に両眼を失いながらも、最終的な決着を見ることなく終わったジャンゴが、ここでついに登場するのであります。
 どうやら@においても高位にありながら、その言動により忌み嫌われているらしいジャンゴ。ダート竜と行動を共にしながらも、その目的は異なるらしい彼の真意こそが、この先の物語を大きく動かすことになるのです。

 この『ジャバウォッキー1914』という物語の冒頭で描かれた南極という地――ここで描かれるのは、その地でかつてサバタとジャンゴが対決したこと、そしてそこにもう一人のオヴィラプトルが――そう、サモエドの存在が関わっていたという事実。
 さらにはジャンゴの(さらにはもう一人の)目的が、そのサモエドであった、ということも明らかになるのですが……


 しかしこの巻のメインは、あくまでもアプリコット商会とダート竜の対決であります。ほとんど巨大ロボット状態のダート竜に、狭い地底トンネルの中で、拳銃一丁のみで如何に挑むのか――さらにジャンゴという強敵までもが立ち塞がる状態で。
 しかし、それでリリーが、サモエドが、シェルティがたじろぐはずもありません。この三人の力が合わさって繰り広げられる、いかにも本作らしい頭脳プレーがもたらす逆転劇は痛快の一言であります。

 さらにそこにブースロイドの部下であり、サモエドたちに味方する英国情報部のエージェント、ジョン・クレイトン(またの名をターザン!)とジャンゴとのバトルまで描かれるのですからいうことなし。
 さすがはビッグネームだけあってあのジャンゴを向こうに回して互角の大暴れ――前作に比べると実在の(?)人物の登場は少なめの本作ですが、そんな中でもこの戦いは、クレイトンのファイトが実に「らしさ」溢れるもので、本作でも指折りの名勝負の一つと言えるでしょう。

 もっともこれらのバトルの末の、ラストの展開はさすがにどうかなあ、と思わなくもありませんが……(一応後で理屈づけはされるのですが)


 何はともあれ、残すところはあと1巻。驚くべき大団円まであとわずかであります。


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