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2020.09.09

おおはし『じごくらく 最強の抜け忍 がまんの画眉丸』 公認パロディ!? 強烈なキャラ変で辿る地獄楽

 最近は公式スピンオフばやりではありますが、『地獄楽』にもこのスピンオフが登場であります。それも、意外にも公認パロディとでも言うべき形で――あの地獄の島での死罪人と浅ェ門たち、そして天仙たちの死闘が、破壊的なギャグで料理される、とんでもない作品であります。

 様々な処刑手段を以てしてもその身に傷一つつけられない元・石隠れ衆の忍び・画眉丸。その彼の前に現れた、恐るべき剣技を持つ御試御用の打ち首執行人・山田浅ェ門佐切は、ある島に存在するという不老不死の薬を持ち帰れば無罪放免になると、画眉丸に告げて……

 という導入部だけ見れば『地獄楽』本編と変わりませんが、本作の画眉丸は、「がらんの画眉丸」ではなく、どれだけいたぶられても動じないがまん好きの超ドM「がまんの画眉丸」。そしてその彼を振り回しまくる佐切は、鉄面皮で冷徹な超ドS――と、とんでもないアレンジを加えて、物語は進んでいくことになります。

 その物語自体は、基本的には原作をなぞる形で展開――すなわち、はじめは死罪人同士の潰し合いが展開されていたものが、やがて島の奥に進むにつれてメイや木人と出会い、そして天仙と遭遇して、という物語のダイジェストが描かれます。しかしその展開が原作をほとんど再現したものであればあるほど、その中の登場人物たちのパロディ度合いが、より強烈に感じられるのであります。

 上に述べた画眉丸と佐切だけでなく、マイペースで超自己中の杠、彼女のトップオタで自称神絵師の仙汰、超ブラコンで中二病の弔兵衛、超ナルシストの桐馬、ウェイ系でパリピの典坐とダジャレマニアの士遠、その師弟へのツッコミに疲れ気味のヌルガイ、異常なまでの子供好きおじさんの厳鉄斎……
 強烈に個性的だった原作のキャラクターを、よくもまあさらに強烈な形にキャラ変した、というか変なキャラにした、とここまでくると感心するしかありません。

 そしてそんなキャラクターたちが、原作での印象的なアクションや大ゴマのパロディを大真面目に(?)演じるのも面白すぎるところで――特に、メイを捕らえようと蔦をダイナミックに操ってみせる画眉丸のアクションのオチには爆笑――この辺りはパロディ漫画としては当たり前ではありますが、原作が基本的にシリアスで殺伐とした展開が続く作品だけに、ある意味ホッとさせられる部分もあります。
(実際、web連載時はご丁寧に原作と同じタイミングでの更新だっただけに、原作のショッキングな展開の後に本作を読むのが一種の救いでありました)


 ただ残念なのは、本作は本書一冊で完結――原作でいえば牡丹戦のあと、佐切たちと画眉丸たちが合流し、生き残りのために死罪人たちと浅ェ門たちが手を組むことを決意した辺りまでで終了となることであります。
 天仙たちとの決戦に入る前、追加上陸組の本格登場前に終了、となってしまったわけですが、この辺り、やるのであれば原作と並行して最後まで突っ走ってほしかった、と心から思います。

 ……が、この単行本では、何と途中の、そして巻末のおまけページで、原作のその後(それこそ本作と同時発売の単行本第11巻収録分に至るまで)の部分もフォロー。天仙や追加上陸組のナニっぷりも存分に描かれているのは、これは大いに嬉しいプレゼントであります。
 さらに第二のおまけとして、巻末には原作者である賀来ゆうじ拵え(バージョン)の『じごくらく』という、どう考えても反則級の作品まで掲載。一瞬自分がどちらを読んでいたかわからなくなる上に、メタな描写まで用意されているのが楽しく、もう一つの『地獄楽』たる本作を締めくくるにも、相応しい内容であったと思います。


 が――もともと本作の登場人物のうち、七割くらいは原作でもそんなキャラのような気がしてきたところに、だんだん佐切って原作でもそうなんではとか、厳鉄斎はむしろこっちに寄ってきたのでは、などというさらに不穏当な感想が浮かんできてしまった……
 というのは、これはナイショにしておきます。


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