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2020.09.21

唐々煙『煉獄に笑う』第12巻 最終決戦開始! 大団円への前奏曲

 実に『曇天に笑う』本編の倍の巻数を費やして描かれてきた本作も、いよいよこの巻より最終決戦に突入であります。本能寺の変で「織田信長」が炎に消えた今、果たして大蛇は誰なのか。あまりにも残酷な真実が明らかになったかに見えたまさにその後から、本当の戦いが始まることになります。

 明智光秀が本能寺に織田信長を襲撃、弑した本能寺の変。しかし本作において本能寺の炎に消えたのは、信長の影武者である比良裏でありました。
 そしてこの変を受けてのいわゆる中国大返しの最中に、それぞれ安倍晴鳴と国友勇真の襲撃を受けた佐吉と芭恋。救援に現れた弦月により晴鳴は倒されたものの、佐吉は一時的に失明、そして執念の勇真に追い詰められた芭恋に対し、勇真は「お前が大蛇や」と冷たく告げて……


 という引きで終わった前の巻。正直なところ大蛇の正体についてはこれまでもフェイクがありましたし、『曇天に笑う』でも大きなドンデン返しがあったことを考えれば、素直に芭恋が大蛇とは考えにくい――と思われたものの、その芭恋の周囲には、不気味なヘドロの如き物質が蠢き、何よりも芭恋のトレードマークである眼帯の下には、蛇の鱗の痣が潜んでいたではありませんか。

 まあ確かにここで芭恋が大蛇になると、佐吉との関係でも阿国との関係でもドラマチックだし――などとメタいことも頭をよぎりますが、しかしそんなことを考えた罰が当たったか、山﨑の戦いにおいて、物語は最悪の事態を迎えることになります。芭恋と阿国の対決という形で……
 互いの想いの丈をぶつけ合った末、佐吉が到着する寸前に悲しい結末を迎える双子の戦い。しかし、これこそが本当の戦いの始まりだったのであります。

 ある意味予想通りと言うべきか――あの城に潜む男の身を依り代に、ついに降臨した大蛇。しかしその力はまさしく空前絶後、他の時代に復活した大蛇とは桁違いの力(秀吉への攻撃にはさすがにびっくり)を以て天地を蹂躙することになります。
 この怪物を阻むには、一人の将だけでは足りない――と、三人の将がまさかの集結。さらにこのまま消えるとは思えなかったあの男と配下たちも参戦! そして佐吉もまた、逆転に向けた最後の希望を求めて、仲間たちと動き出すことに……


 と、何だかぼやかした表現ばかりで恐縮ですが、善魔まさに役者は揃ったという状況で決戦に雪崩れ込むという、この最高の盛り上がりばかりは、実際にその目で確かめていただきたい、というのが正直なところであります。
 これまで長きに渡って描かれてきた物語に登場してきたほとんど全ての生き残りのキャラクターたち(正直なところ、忘れていた奴も……)が一堂に会し、結末に向けて動き始める姿は、まさしく伝奇ものの興趣横溢というほかありません。

 もちろん、まだ大蛇との決着に向けては一波乱も二波乱もあるでしょう。そして何よりも、この決戦の場に真っ先に加わるべき男がもう一人、まだ姿を見せていないのであります。
 そんなわけでまだまだ先は見えませんが、しかしこの巻の盛り上がりを見れば、最高の結末を期待してよいのではないか――そんな大団円への前奏曲ともいうべき第12巻であります。


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