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2020.09.24

『啄木鳥探偵處』 第八首「若きおとこ」

 蝙蝠人間こと軽業師・鑑の墜死で逮捕された興行師・園部の釈放が話題となる中、脅迫状が届いたと啄木のもとに依頼に来た青年。喀血した啄木は一度は断るが、街を彷徨う中再会した青年に促され、依頼を引き受ける。青年は実は男装した園部の妻・環であり、脅迫状は鑑の弟から届いていると語るが……

 前回ラストで喀血し、医師の診断を受けることとなった啄木。その結果は京助には伏せたままですが、その前後の言動を見れば、どの程度のものか察することができます。そんなところに新たな依頼人を連れてきたという下宿の娘・加世ですが(というかちゃんとした依頼自体、久々にあった感)、啄木はあっさり断り、それどころか雨の中傘も持たずに飛び出してしまうのでした。
 もちろん慌てて探す京助ですが、ミルクホールに屯するいつものトリオ+芥川龍之介にはこれっぽっちも心配されず、いつものことと軽くいなされてしまうのは、これはもう残念だが当然というほかありません。

 もっともその頃啄木は一度は断った依頼人の青年と再会、促されるまま彼の屋敷に向かってみれば、相手は「彼」ではなく男装した「彼女」――いま巷で話題の、蝙蝠人間と呼ばれた軽業師・鑑を故意に墜死させた疑いで逮捕されたものの、裏で手を回して釈放された興行師・園部の妻・環だったのであります。
 そして彼女の依頼とは、園部と自分を殺すという鑑の弟から脅迫状の調査。実は鑑と密通していた環は、その弟の暴走を止めようとはしたものの、相手の行動はさらにエスカレートし、彼女の行動を事細かに記した、あたかも家の中から見張っているとしか思えない脅迫状が届いて……


 というところで今回はおしまい今回は謎の提示編といったところで、物語は大きく動かないこともあり、印象に残るのは死に怯える啄木と、周囲の反応でしょうか。

 享楽的・刹那的かつ露悪的な言動をしばしばみせる啄木。それが毎回評しているところのヒューマンダストっぷりに繋がっているわけですが、それはどこか彼の弱さ、というよりその弱さを自覚していることの裏返しのように思えます。

 今回はその部分が隠すことなく露わになった印象がありますが、しかしそれが京助以外には全く伝わっていないのは笑いどころでしょう。いや、普段は弱音を吐いて京助の気を引いていたところをしっかりと見抜かれているところなど、胡堂たちはしっかりすぎるほどよく見ていたわけで、今回ばかりは自業自得というほかありません。
 とはいえ今回の依頼人・環が女性と知るや、何だかボーッとなっている辺り、やっぱり今回もきっちりヒューマンダストなわけですが……

 しかし今回の事件、浅草で評判を取った飛行ショーの芸人の死が発端となっているということで、原作のエピソード「鳥人」がベースとなっているのかと思いましたが、登場人物の名前も含めて全然違うなあ――と思っていたら、環の登場で何だか雲行きが怪しく感じられてきました。
 あり得ないほど詳細な脅迫状、姿なき脅迫者、体に傷を負った妖しげな美女――どうもこの流れ、どこかで見たことがあるような気がいたします(特に脅迫状の中の、「コルクの小片がグラスに」云々の部分)。これはまたあのパターンでは、とイヤな予感がしますが、その辺りは次回明らかになることでしょう。正直なところ、外れていることを祈ります。


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