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2020.09.10

『啄木鳥探偵處』 第六首「忍冬」

 想いを寄せていた女給の季久から、人気役者の橘乙次郎殺害の疑いで逮捕された恋人の無実を証明してほしいと頼まれた吉井勇。巷では乙次郎は毎夜外を徘徊する活人形・金銀花に噛み殺されたと評判だが、勇はその噂の真相を暴き、季久の心を手に入れようと啄木に協力を持ちかけるが……

 原作小説の第2話がベースの今回は、夜歩く人食い人形という、何ともおどろおどろしい題材の事件。しかし原作と異なり、今回の啄木の相棒は、(京助さんに愛想を尽かされたので)吉井勇が務めることになります。

 この事件を持ち込んできたのは、前回登場して勇や朔太郎、牧水らが鞘当てを繰り広げたミルクホールの女給・季久。彼らの努力も虚しく、恋人がいることが判明した彼女ですが、その恋人が殺人事件の犯人として逮捕されたというのであります。そしてその事件こそは、新聞紙上で評判の猟奇事件――人気役者の橘乙次郎が活人形の「金銀花」に噛み殺されたというものなのでした。
 あまりの出来栄えに、夜毎街を徘徊しているという噂すら立っているこの金銀花が、乙次郎の死体の上に乗っていたためにこんな記事が書かれたようですが、警察はまあ当然ながらそんなことはスルーして後輩役者の結城泉若を逮捕。既に泉若は自白もしているようですが、季久は人形が犯人に違いない、と勇に頼ってきたのでした。

 希久に縋られて二つ返事で引き受けた勇と、京助さんに見捨てられて金がなくミルクホールで働いていた啄木がこの事件に挑むことになるのですが――しかし勇の真意は、人形が犯人なわけはなく、泉若が犯人に違いないのだからそれを明らかにして、傷心の季久に言い寄ろうというもの。それを看破した啄木も報酬上乗せで仲間に引き入れるのですから、啄木ともども、とんだヒューマンダストであります。
 何はともあれ、乙次郎宅を調べた勇と啄木は、そこで乙次郎が収集した異常な数の人形を目撃。さらに浅草の傀儡館に向かった二人は、そこで館主が夜毎一座の者を締め出してなにかしているという話を聞くのですが――勇は夜毎徘徊する人形の正体は、話題作りのために変装した館主に違いないと推理して、季久はもう自分のものと得意顔であります(あくまでも人形の無実(?)を明らかにしただけではないかと思いますが、勇的にはイコール泉若が犯人ということなのでまあいいのでしょう)。

 そして館主が戻ってきたところを捕らえようと傀儡館で待ち伏せする勇と啄木ですが、しかし啄木はまた違うことを考えている様子で……


 というわけで、原作でも最も怪奇色が強かったこのエピソードですが、このアニメ版ではかなり入り組んでいた原作の人間関係をばっさりカットすることにより、真犯人とその動機は同じものの、事件の内容としてはほとんど別物となっているのがユニークなところであります。この辺りは賛否あるかと思いますが、個人的には、泉若の事件への関わりに結構無理があるように感じられるのを除けば、これはこれはアリではないかな、と思います(また○○が探偵にわざわざ接触してくるパターンなので、個人的にはそもそもの点数が低いというのもありますが……)

 もちろん、このアレンジのおかげで、啄木による真犯人の推理、さらには泉若の真の役割の推理が、むしろ推論・推測レベルになってしまっているのは非常に苦しい(おかげで真犯人の自白をほとんど命懸けで引き出す羽目に)ところではあります。
 しかし正体を現した真犯人が、無表情であたかも人形のような動きで、不気味に二人に襲いかかる演出は悪くありませんし、またクライマックスの舞台となる午前三時の浅草というのも、非常にムードがあってよろしい――本作、この辺りの情景描写を含めた演出はなかなか良いと思います――と思います。

 むしろ、今回わざわざ原作を改変して、勇が登場する必然性があまり感じられなった点こそがいかがなものかと思いますが――もしかして勇はある意味主人公コンビの当て馬役だったということなのでしょうか。だとすればそれはそれで、勇は二重の当て馬扱いということになって、皮肉が効いていて面白くはあるのですが。
(あと、平井太郎の出番は結構無理やりだった気もしますが、あれはまあ「ひとでなしの恋」と言わせるためでしょうから……)


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