« 『啄木鳥探偵處』 第六首「忍冬」 | トップページ | 田村ゆうき『戦国グリッドマン』第1巻 戦乱の世にハイパーエージェント登場!? »

2020.09.11

響ワタル『琉球のユウナ』第5巻 二転三転、真加戸vs北山国

 古琉球時代、伝説の尚真王・真加戸と、朱色の髪を持つ少女・ユウナのラブロマンスも、気付けばもう5巻目。王家の祝女(ノロ)に任命されたユウナは、真加戸のために北山国に向かうのですが、そこでまたも第一尚氏の残党の陰謀に巻き込まれることに……

 真加戸の力になるため、祝女として王城に入ったユウナ。閉鎖的な祝女の世界で苦労しながらも、徐々にその力を示していったユウナは、失われた七つの勾玉を求め、琉球の北部、かつて北山国と呼ばれた地域に向かうことになります。
 しかしこの地域こそは、かつて北山国を滅ぼした第一尚氏が治めていた、真加戸の第二尚氏にとってはいわば敵地。そこでユウナは、北山地域の祝女を束ねる存在・阿応理屋恵である真鶴と出会います。

 意気投合する二人ですが、しかしユウナの身分を――自分たち北山祝女と敵対する立場を知った真鶴は、その力を暴走させ、魔物・ピキンキルにユウナを襲わせてしまうことに……


 という前巻の展開を受けてのこの巻ですが、相変わらずユウナと真加戸に粘着する第一尚氏の生き残り・ティダだけなく、北山祝女と結んだ今帰仁城の裏切り者の策謀が、ユウナと真加戸を窮地に追い込むのでした。
 いやむしろ、真加戸がユウナを探してホイホイ北山に行幸してきたおかげで、北山の残党たちが好機と見て動き出すことになるのですが――しかしここで状況は大きく動き出すことになります。

 真加戸が呑気に今帰仁城に入ったところで、彼と夜斗らお付きの者たちを城内に閉じ込め、襲いかかる謀叛の兵たち。しかし、謀略によって王座に就かされ、以来周囲の悪意に晒されてきた真加戸が、いかにユウナのためとはいえ、これほど容易く罠にかかるものかどうか……?
 ここからの戦いは二転三転、力押しのようでいて、幾重にも策を用意しての真加戸の行動はなかなか痛快なのですが――しかし最も痛快なのは、これだけのことをしておいて、やはり目的は(少なくとも彼の言葉によれば)ユウナただ一人、という点なのは間違いないでしょう。

 そしてそんな激しい戦いの中でも、ユウナの存在が埋没することなく、同時に真鶴の心をも救ってみせるのもまた嬉しい。
 北山巫女の束ねとしての、第一尚氏の残党としての自分と、自由に生きたいという心の間で苦しむ真鶴の象徴であるピキンキルが、ユウナのサポートで人を救う力となるクライマックスには、いかにも本作らしい爽やかさがありました。

 もっともその一方で、真加戸の側近の大良金と、北山方の山賊の長・幸地里之子という、結構大事そうなキャラクターがいきなり(と感じてしまったのですが)登場したのはちょっと戸惑ったところではあります。
 幸地里之子はこのエピソードの舞台となった地域に伝説が残る悪名高き山賊だけに、ここでの登用はなかなか面白いのですが……
(もしかすると幸地里之子は、今後ユウナのルーツに絡んでくるのでは、という気もいたします)


 さて、この巻のラストエピソードは、これまで続いた少々重い展開から一変、華やかな新春の宴が描かれることとなります。
 相変わらず、王としての真加戸の存在に気後れしまくりのユウナですが、そんな彼女を連れ出したのは――というのも実にイイのですが、ラストにはもう君たちなんで結婚してないの、という気分に……

 冷静に考えるとまだまだ問題は山積なのですが、こんな甘々な展開も、やはり本作らしいものであるのは間違いないところでしょう。


『琉球のユウナ』愛5巻(響ワタル 白泉社花とゆめコミックス) Amazon

関連記事
 響ワタル『琉球のユウナ』第1巻 異能の少女と伝説の王が抱えた孤独感
 響ワタル『琉球のユウナ』第2巻 二人にとってのもっともやりにくい「敵」!?
 響ワタル『琉球のユウナ』第3巻 ややこしい琉球の、ややこしい人間関係
 響ワタル『琉球のユウナ』第4巻 もう一人の祝女、もう一人のユウナ

|

« 『啄木鳥探偵處』 第六首「忍冬」 | トップページ | 田村ゆうき『戦国グリッドマン』第1巻 戦乱の世にハイパーエージェント登場!? »