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2020.09.26

白石純『魍魎少女』第4-5巻 次々登場、新たなる敵! そして最後のパーツ

 大正時代を舞台に、奪われた師匠・雪之丞の体を求める「魍魎屋」の少女・林檎丸の大暴れを描く本作も気が付けばもう第5巻まで刊行されました。雪之丞の体も三つまで揃ったものの、次々と登場する新たな敵を向こうに回し、状況はいよいよ混沌としたものに……

 数百年前に共に不死となりながら、親友の八房によってその身を八つ裂き――いや七つに裂かれ、以来、己のパーツを求めてきた男・雪之丞と、彼を師匠と慕う魍魎少女・林檎丸。
 大正時代に至り、八房と彼に仕える少年・チカや、様々な魍魎との戦いを繰り広げた末、雪之丞の左目・左腕・背骨と手に入れた林檎丸ですが、そこに予期せぬ敵――不死の肉体を狙うマフィア・ウルバーニ一家が現れ……

 というわけで第3巻から第4巻にかけて描かれるのは、このウルバーニ一家との対決であります。
 街中でマシンガンをぶっぱなすことも辞さない凶暴な連中によって奪われた雪之丞の足を奪還すべく、同じくらい凶悪に暴れまわる林檎丸。如何にマフィアとはいえ、不死身の林檎丸を向こうに回しては分が悪いところですが――ここで搦手に出てくるのが暴力のプロの恐ろしいところであります。

 彼らによって捕らえられ、拷問を受ける羽目になった、林檎丸たちとは腐れ縁の私立探偵・鷹ノ助。彼の手元にあるのは、声の録音・再生しかできないちっぽけな魍魎一つに過ぎません。
 それでも同じ腐れ縁の僧侶・典妙の力を借りて鷹ノ助が脱出を試みる一方で、アジトに殴り込みをかけてきた林檎丸の大暴れが始まり――と、林檎丸とマフィアの決戦が繰り広げられることになります。

 正直なところ、第3巻の時に受けた印象は変わらず、結果としてみれば、やはりマフィアといっても普通の人間には分が悪すぎる戦いだったのですが――しかし戦いの終盤で、不死を求めるウルバーニの狂的な想いと、彼の娘のマリアとの繋がりを描き、そしてそこに上で触れた鷹ノ助の魍魎が意外な役割を果たすという結末は悪くありません。

 バトルのバリエーションという意味でも、なかなか面白いエピソードではありました。


 そして第4巻の後半から展開するのは、またもや第三勢力との戦い――しかも今度は常人ではなく、同じ魍魎屋、しかも中国からやって来た敵であります。
 新装開店した中華料理店・飛龍楼を営む青年・ルイ。強大な怪物・饕餮を身に宿し、日本の魍魎屋を掌中に収めんとする企みを持つ彼によって、八房のもとにあった雪之丞の右腕は奪われ、何と饕餮に喰らわれることに……

 と、今回も雪之丞のパーツを手にした第三勢力の戦いと思いきや、いきなりそのパーツが失われるという意外すぎる展開に驚く間もなく、強敵を前に手を組む雪之丞と八房。
 これまでもそれぞれの弟子と言うべき林檎丸とチカが、共通の敵を前に共闘することはありましたが、この二人が手を組むとは、これは盛り上がる展開であります。

 さらに彼らをサポートする――というより腐れ縁の人間の側も、鷹ノ助と典妙に加え、以前登場した異能の怪奇小説家・米津弦太郎が再登場。その魍魎を具現化する筆を活かして雪之丞たちを助けるのですが、それがまた思わぬ事態に繋がって――と、物語は全く予想もしなかった方向に転がっていくことになります。

 この辺り、ちょっと拍子抜けという印象もなきにしもあらずなのですが、しかし派手なバトルだけでなく、緊迫しながらもどこかすっとぼけた味わいの怪異が描かれるのも、またらしいといえば本作らしいという印象があります。
 そしてその中に、雪之丞と八房の「人間性」(の違い)というものがチラリチラリと窺えるのも、また面白いところなのですが……


 さて、右腕が失われるという思わぬ展開はあったものの、残る雪之丞のパーツは心臓と首のみ。うち心臓の所在は既に明らかになっているのですが――第5巻の後半で、ついに首の在り処が判明することになります。
 意外なその在り処に、林檎丸が、そしてチカが、これまた意外な形で迫るのですが――しかしさすがは雪之丞の首というべきか、一筋縄ではいきそうにありません。

 果たして首を手に入れることができるのか、そしてその先に何が待っているのか?
 振り返ってみれば、シンプルなようで意外な展開の連続であった本作。この先の展開も、やはり予想だにしないものとなるのでしょう。サブレギュラーも増え、賑やかになってきた本作の向かう先がいよいよ気になってきたところであります。


『魍魎少女』(白石純 徳間書店ゼノンコミックス) 第4巻 Amazon/ 第5巻 Amazon

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