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2020.10.11

久正人『ジャバウォッキー1914』第4巻 そして可能性の竜が掴んだ明日

 第一次世界大戦を背景に描かれてきた冒険活劇『ジャバウォッキー1914』もいよいよ最終巻。ついに動き出したジャンゴの狂気の野望、そして明らかになる17年前の真実。南極を舞台に繰り広げられる文字通り人間の運命を賭けた死闘に、人間と恐竜の絆は打ち克つことができるのか!?

 アルプスでの戦いで、サモエドに対する謎の執着を見せたジャンゴ。かつてリリーとサバタの前に立ち塞がり、いまは殻の中の騎士団に所属するこのアロサウルスの狂気の行動から、第4巻は始まります。

 飛行船で行われる騎士団最高幹部十人の会合――見るからに強そうな二つ名を持つ彼らがある行動を決定した直後、ついに本性をむき出しにしたジャンゴ。彼の凶弾によって、騎士団は思わぬ結末を迎えることになります。
 そこに現れたのは、騎士団幹部抹殺の命を受けた最強の傭兵エージェント・エイトことヤツフサ――強い相手と戦うことを条件に数々の戦場を渡り歩いてきた剽悍な戦士、そしてシェルティの父親(!)であります。

 その圧倒的な戦闘力でジャンゴをも追い詰めるヤツフサですが、しかしそこでジャンゴが発揮するのは、常識を超えた恐るべき能力――かつてサバタによって片目を奪われた際に得たその能力の正体とは……


 と、冒頭からあまりの情報量と展開の速さに圧倒される第4巻。その勢いとテンションは、ラストまで変わることなく続くことになります。

 辛うじて生き延びたヤツフサからジャンゴの行動を知ったブースロイドに促され、いまや世界で唯一リリーのみが知る、ジャンゴが潜む南極の秘密基地に向かうこととなったリリーと二人の子供たち。その地こそは、17年前、イフの城と袂を分かったリリーとサバタがジャンゴと対峙し、そしてリリーただ一人が、後にサモエドとなる卵を抱いて生還した場所なのであります。

 一人かの地に潜むジャンゴは、彼が、そしてブースロイドが「可能性の竜」と呼ぶサモエドを使って何をしようというのか。サモエドに秘められた真の能力と、その発動の鍵とは。それを阻むべく非情の決定を下したブースロイドと、依頼を受けたヤツフサの動きは。そしてリリーとサバタは……
 ここに『ジャバウォッキー』から続く人間と恐竜の物語は、完全な結末を迎えることになります。


 というわけで、ついに描かれることとなった、前作から持ち越しとなった因縁の決着――そして人間と恐竜の「明日」の行方。まさしく一気呵成に描かれるそれは、こちらの予想を遥かに超えるスケール、そして作者のSFマインドとビジュアルセンスの奔流で、ただ圧倒されるとしか言いようがありません。(前作に比べると伝奇味よりもSF味が強く感じられてきた本作ですが、ここではっきりとSFとしての姿を前面に出してきたと言えるでしょう)

 正直なところ、これまで敢えて匂わす程度の描写であったサバタ、そしてイフの城の運命が、ここではっきりと、悲しい形で明かされたのは、前作ファンとして確かにショックではあります。また、シェルティの父親、つまりはリリーの相手であるヤツフサも、なるほど満を持して登場するに相応しい強豪ではありますが、なぁ――と複雑な気分になってしまうのも確かでしょう。

 しかし――こちらのそんな気持ちはお見通しのように描かれる最終回は、ただお見事! というほかない展開の釣瓶打ち。
 特にここで描かれるサバタの言葉と行動は、まさにこちらのそんな気持ちにキッチリと応えるようなもので、「サバタ! ああサバタだなあ」という気持ちで胸が一杯になると、いうほかありません。

 そして人間と恐竜と――生ける者とそうでない者、全ての可能性を結集した末に、彼らが掴み取ったもの。それこそは前作から繰り返し語られてきたもの――全てのヒトの「明日」にほかなりません。
 それを示すラストのナレーションはまさに感無量。良い物語を読んだ! と笑顔でページを閉じることができるのです。

 『ジャバウォッキー』――人間と恐竜の物語、ここに見事大団円であります。


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