高橋留美子『MAO』第6巻 深まりゆくなぞ そして五人目……?
平安・大正・現代を結んで展開する怪奇/伝奇アクション漫画『MAO』の最新巻であります。失われた摩緒の過去と兄弟子たちとの因縁、そして摩緒の婚約者である紗那の存在。平安時代から900年の時を経て大正の世に繰り広げられる物語は、いよいよ謎を深めていくこととなります。
呪禁道の家系として知られた御降家の宗家、すなわち師匠の娘・紗那の婿として選ばれながら、その実、残酷な後継者争いの贄として、木火土金水それぞれの術を操る五人の兄弟子の標的となる運命にあった摩緒。
その直後に起きた猫鬼の一件によって師匠と紗那は命を落とし、摩緒も不死の呪いを受けたわけですが――どうしたことか、五人の兄弟子たちも、一種の不死者と化して、大正時代に摩緒と菜花の前に次々と姿を見せることになります。
そのうち、百火と華紋は成り行きで摩緒と行動を共にするようになったものの、第三の兄弟子・水の術者である不知火は京から幾度となく摩緒たちを狙い、ついに東京に乗り込んでくることに。そしてその傍らには、紗那と瓜二つ(?)の女性・幽羅子の姿があるのでした。
そして不知火に協力する金の術者の術によって、摩緒は捕らえられ……
と、物語が進むにつれて、謎が謎呼ぶという表現が相応しい内容となってきた本作。この第6巻の中心となるのは、金の術者――すなわち第四の兄弟子・白眉の存在であります。
日露戦争で重傷を負ったという触れ込みで素顔を奇怪な鉄面に隠した怪軍人・白州――奇怪な術で大量の人間を平然と殺める、軍部の始末屋というべき彼の正体こそは、やはりというべきか白眉その人。
御降家の中でも特に師匠の信任厚く、数多くの呪詛を行っていたという白眉(ちなみに文字通りの外見なのがちょっと面白い)。やはり平安時代から不死者として生き続けている彼ですが、その因縁の相手が、何と百火というのが意外で面白いところであります。
というのも、一番最初の兄弟子として登場しながらも、威勢の良さと喧嘩っ早さとは裏腹の、妙に抜けたところのあるキャラクターとして描かれてきた百火。作者の作品には大抵彼のようなキャラがいるような気がしますが――どうしてもコメディリリーフ的な役回りで、明らかに菜花にも舐められていたその彼が、意外な活躍を!
という表現はいささか失礼ではありますが、ここでの彼の活躍は火の術者としての面目躍如たるものがあり――そして何よりも、兄弟子同士の戦いにおける、重要なルールがここで示されることになります。果たしてそれがこの先如何なる意味を持つことになるか、それはまだわかりませんが……
そして――その百火や菜花たちが、摩緒の代わりに妖怪医として奮闘するコミカルなエピソードを挟み、この巻のラストには、「土」を用いる謎の術者が登場。
さらに不知火や白眉との対決の行方、そして死んだはずの紗那生存(?)の真実と彼女に課せられた役割、猫鬼誕生の秘密に至るまで、いまだ明かされぬ謎は数多い――というよりも、謎は解けるどころか、次々と増えていっている状況にあります。
もちろんこれは伝奇ものとしては大いに理想的な状況というべきもの。この先の展開も、大いに気になることは言うまでもないのであります。
それにしても、作中の「この家の存在を快く思わない表の陰陽師」という言葉を見るに、今後展開によっては、御降家以外の陰陽師も絡んでくることもあるのでは――と、こちらも少し期待してしまうところなのです。
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