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2020.10.19

『半妖の夜叉姫』 第2話「三匹の姫」

 十年前、双子の妹・せつなと生き別れとなり、現代にタイムスリップしたとわ。かごめの弟・草太の養女となったとわは、現在では不良との喧嘩に明け暮れていた。一方、戦国時代では、妖怪・三つ目上臈と対決していたもろはとせつなが、それぞれ虹色真珠を奪われた末、共に現代に現代に現れることに……

 前回が実質的に『犬夜叉』の後日談であったのに対して、ようやく本編が始まった、という印象のこの第2話。三人の主人公が現代と戦国時代に分かれて生きてきたことを反映して、物語は現代パートと戦国パートで並行して展開することになります。

 幼い頃、せつなと共に平和に(といっても両親の姿が映らないのは、たまたまなのか何か理由があるのか)暮らしていたところを、山火事の中で離れ離れになった末、自分は時代樹の力で現代にタイムスリップしてしまったとわ。そこで彼女が出会ったのは立派に成長したかごめの弟・草太で、さすがに姉があんな目に遭った経験から何かを察知したらしい彼に引き取られ、日暮家の子として育つことになるのですが――しかし十年後のとわは、(もちろん正義感からとはいえ)不良相手に喧嘩三昧、そのたびに転校を続けるという、まあ立派な問題児に……

 アフターコロニー時代まで残りそうな伝統ある聖ガブリエル学園に転校したものの、メガネ・パーマ・チビ・カクガリというどこかで見たような懐かしさを感じさせる不良相手に早速喧嘩を繰り広げて遅刻するとわ。それどころか、兄貴分を連れてきた不良どもに、妹の芽衣と大ママ(祖母、すなわちかごめのママ)とじいちゃん(曽祖父、つまりかごめのじいちゃん)を人質に取られて――と、時代伝奇ものかと思ったら、昔懐かしの伝奇バイオレンス学園もののような展開であります。
(しかし不良の一人がバタフライナイフをチャカチャカやって芽衣に突きつけたのには少々びっくり。考えてみればあの騒動から二十年以上経っていますが……)

 一方、戦国時代では、もろはが、彼女を村を荒らす妖怪と勘違いした翡翠・せつなと一触即発状態。言うまでもなくそれぞれ犬夜叉とかごめの娘・弥勒と珊瑚の息子・殺生丸と?の娘――というのは、もろはとせつなについては今回まだ明らかになっていないのですがそれはさておき――と、親の代では深い深い関わりがあった面々ですが、少なくとももろはの親のことは知られていないようであります。
 とはいえ喧嘩っ早さは父親ゆずり、封印の矢を操る霊力は母親ゆずりのもろはは、そこに現れた真の敵である三つ目上臈に早速突っかかるのですが――しかしダメージを与えたと油断したところに、何やら大事なものらしい赤色真珠を奪われる有様。そしてパワーアップした三つ目上臈に、せつなも自分の金色真珠を奪われ、一転大ピンチになるのでした。

 この二つの真珠、虹色真珠なる存在のようですが、もう一つの真珠は、そう、現代のとわのもとに――というわけで、再び時代樹のタイムトンネルが開き(ここで前回登場した根の首の力が作用した?)、団子状態で現代兄飛び出すもろはとせつな、さらに三つ目上臈。ちょうどそこには、我慢できずに半妖の力を発揮して不良を圧倒した(やっぱり伝奇バイオレンスチック)とわの姿が――と、三人の主人公が揃ったところで次回に続くことになります。


 冒頭に述べたとおり、実質第1話の今回ですが、『犬夜叉』を踏まえつつ、新キャラクターたちの紹介と新たな物語の幕開けを手際よく描いてみせた、という印象があります(主人公たちが対峙する最初の妖怪が、『犬夜叉』の最初の妖怪・百足上臈の孫というのも、何とも楽しい因縁)。
 まだとわ以外の二人のキャラクターはちらりと描かれたのみですが、もろはは上に述べたとおりどうみてもあの二人の娘以外の何者でもなく、そしてせつなも剣呑なまでの無愛想っぷりとモフモフ(?)はやっぱり父親譲りと、いかにもなのがまた楽しいところです。

 もちろん前作の影に囚われ過ぎるのは問題であって、本作には、前作ファンもニヤリとさせつつも、しかしあくまでも親は親であって、主人公たちが自分たち自身の冒険を繰り広げる――つまりは、自分たち自身の生を生きる――物語を期待したいと思います。
 何よりもそれは、今回悩める(というにはいささか物騒な)姿を見せたとわが、最も望むものでしょうから……


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