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2020.10.15

『啄木鳥探偵處』 第十一首「逢魔が刻」

 病身の啄木に代わり、依頼人・成田屋から、一ヶ月前に拐かされた子を探して欲しいという依頼を受けた京助。彼の周囲で既に四件の子供の拐かしが起き、しかしすぐに返されていたという京助の話から、啄木はある推理を立てる。一方、成田屋に脅迫状が届き、京助は胡堂とともに受渡場所に向かうが……

 前回、京助との友情で、どん底状態からようやく這い上がることができた啄木。しかし相変わらず頬は痩け唇はカサカサという状態で、小説は諦めて歌人に戻ったものの、歌集の書き出しも覚束ない状況であります。そんな中でも、京助に頼らず生活しようと探偵處の依頼を受けたという啄木ですが――相変わらずチョロい京助さんは、まんまと丸め込まれ、代わりに依頼人のもとに行くことに……
 と、既に啄木の体調がかなりマズい状況なのを除けば、ラスト一話前にしてはかなりおとなしめの事件が描かれる今回。ベースとなっているのは原作の第四話――時系列的には最後の事件となる、同題のエピソードであります。

 同じ無尽講に属している五つの家で次々と子供の拐かしが起こり、しかも依頼人以前に拐かしがあった家では、すぐに子供が返されていた――という謎が、物語の中心となる今回。
 すぐに子供が返された先行の犯行と、一ヶ月経っても帰ってこない成田屋の件で何が異なるのか。それ以外に異なる点はないのか、あるとすればそれは何故か? という点から、安楽椅子探偵的に啄木が真実を突き止めることになります。もっとも、彼は彼で、またも起きた告発者X絡みの殺人事件の謎を追っていたのですが――その辺りは次回語られるのでしょう。

 何はともあれ、体調不良の彼に代わって京助が依頼人の下へ――というのは原作通りですが、そこに(そもそも原作に登場しない)朔太郎が同行するのは本作のオリジナル展開。もっとも朔太郎、前回の啄木の言動がよほど腹に据えかねているのか、同行は最初だけ、その後は彼にしてはかなりきつい口調で断るのが、ちょっと可笑しいところであります。
 さらにその後の脅迫状騒動の際には、京助に拝み倒されて胡堂が出馬、逃げる犯人に投げ銭一閃! というのは、これは言うまでもなく後に胡堂が発表することになる銭形平次オマージュで、ちょっとニヤリとできる展開でありました。

 さて、結末ではさすがに啄木が出馬して事件の真相を解き明かすのですが――原作を読んだ時はちょっと強引に思えたそれも、ビジュアルで見せられるとそれなりに納得させられます。もっとも、そこに絡む殺人事件の方は、ダイイングメッセージが直球過ぎて、これはカットしてもよかったのではないかなあ、と思わなくもありませんが……
(原作でちょっと強引に感じられた犯人からのメッセージが、本作では少し理にかなった印象に改変されているのは面白いところではあります)

 ちなみに原作ではこのエピソードは、被害者親子(そして○○親子)とある意味対比するような形で、啄木の家庭事情が重ね合わされ、何とも重く侘しい味わいが生まれていたのですが――それぞれに結婚し、家庭を背負っている原作の(そして史実の)啄木と京助に対し、本作はそもそも妻の影も形もないという状態。そこでこちらでは、啄木が京助との友情に絡めて自分が歌を詠む理由を再確認するという、どこか寂しくも明るさを感じさせるものになっているのですが、これはこれでアリでしょう。


 さて、これまでかなり原作の内容にアレンジ(多くの場合取捨選択)を加えていた本作ですが、今回は原作の事件そのものはかなり忠実に描いていた印象の今回でしたが――本作も残す所はあと一話。
 第一話から要所要所で語られる、告発状絡みの殺人事件に関わってきた告発者Xとの対決がラストに描かれるはずですが――啄木との接点が微妙なために今ひとつピントが合ってこなかったこの告発者Xの存在を、どこまで印象的に描くことができるのか。

 そして第一話から予告されてきた、避けられない運命である啄木と京助の永遠の別れをどう描くのか――全ては次回であります。

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