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2020.11.28

『新諸国物語 笛吹童子 第一部 どくろの旗』

 時は応仁の乱の後、丹波国満月城は赤柿玄蕃率いる野武士の群れに攻められ落城、明に渡っていた城主の子、萩丸と菊丸が帰国する。しかし都の惨状に嫌気が差した菊丸は武士を捨てて面作りとなり、萩丸は家老の上月右門と共に満月城に乗り込む。奮戦虚しく捕らえられた萩丸の運命は……

 このご時世で遠出も出来ずあまり楽しいこともないと思っていた今年ですが、京都ヒストリカ国際映画祭がオンライン上映(つまりはレンタル視聴)を行うというのでラインナップを見てみれば、「スーパーヒーロー前史 子ども時代劇エボリューション」と銘打って、東映の子供向け時代劇・ヒーローものが実に45本公開されていたではありませんか。
 さすがに全て観るのは不可能にしても、今まで観ていて当然だった作品はこの機会に観ておきたい――というわけでレンタルした一本が本作であります。(Prime Videoでも観れるとか言わない)

 『笛吹童子』といえば北村寿夫脚本のラジオドラマシリーズ『新諸国物語』の第二作、そしてそのラジオドラマの翌年に公開されたのが、この東映の映画版三部作であり――その人気から、その後もテレビドラマ、人形劇として幾度も映像化された作品であります。


 応仁の乱の後の天下が麻のごとく乱れた時代、髑髏を旗印とした悪漢・赤柿玄蕃(月形龍之介)率いる野武士の群れに攻められた満月城。家老の上月右門は落城前に姿を消し、城主の丹羽修理亮は自害し、丹羽家は完全に滅んだかと思いきや――実は城主の子である萩丸(東千代之介)と菊丸(中村錦之助)は明国に留学中でありました。

 萩丸は武芸に、菊丸は面作りに励んでいた中、菊丸の作った白鳥の面と師の作った髑髏の面が独りでに動き出して戦い、白鳥の面が割られるという怪事が発生。
 日本に戻る兄弟は、途中の無人島に灯る火を見つけ、立ち寄ってみれば、いたのは急を知らせに向かう途中に難破した右門――城主の証である白鳥の玉を託されてきた右門と共に、兄弟は満月城に向かうのでした。

 しかし、途中立ち寄った都の惨状に心を炒めた菊丸は、自分は文化で世を平和にしたいと武士を辞めて面作りとなると言い出し、萩丸は白鳥の玉を弟に託し、袂を分かつことになります。そして右門と二人、満月城に乗り込んだ萩丸は、落とし穴に落ちて囚われ、右門は追われた末に、彼に恩義のある武者・斑鳩隼人の機転によって救われるのでした。

 玄蕃に白鳥の玉の行方を問われるも頑として拒否した末に、菊丸の師の髑髏の面を被せられ、顔から取れなくなってしまった萩丸。そして隼人と、彼を庇った右門の娘・桔梗は捕らえられて磔刑に処されることになるのですが――その時、にわかに空がかき曇り、黒雲と稲妻の中から龍が現れ、二人を攫って天空に消えたではありませんか。これなん妖術師・霧の小次郎(大友柳太朗)の仕業で……


 と、三部構成の作品(公開当時は週替りで三本連続公開したというのですから驚き)の第一部ということで、原作のちょうど三分の一までを映像化した本作。しかし一年間のラジオドラマの三分の一をわずか45分で描いたものですから、展開が早い早い! 
 特に大きな場面転換がある時には、あまりの急転換に驚かされるのですが――そして実際その時には、かなり原作で描かれていたディテールが省略されているのですが――しかしこの一種のスピード感が、シンプルと言えばシンプルな物語展開と相まってなかなか気持ちいいのであります。

 そして主役は若き東千代之介と中村錦之助(萬屋錦之介)、脇を固めるのは月形龍之介と大友柳太朗――という、今になってみればびっくりするようなキャスト。特に東千代之介の颯爽とした若武者ぶりは実に格好良く、中盤のただ二人敵陣に殴り込んでの大立ち回りは、本作のクライマックスというべきでしょう。

 もっとも、その大立ち回りの直前、大将の玄蕃の前にいきなり萩丸が乗り込んできたり(絵に描いたような野武士の宴会中で油断していたとはいえ)、隼人を庇うつもりの桔梗の行動がどう見ても足を引っ張っているだけだったりと、どうかなあという部分も少なくないのですが――この辺りを今の目で云々するのはやはり野暮というものなのでしょう。

 大友柳太朗演じる霧の小次郎が絵に描いたような呵呵大笑を見せて続く、というクリフハンガーぶりもいっそ気持ちよく、残る二部も近日中に紹介したいと思います。


『新諸国物語 笛吹童子』(東映ビデオ DVDソフト) Amazon

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