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2020.11.25

『ゴールデンカムイ公式ファンブック 探究者たちの記録』 濃すぎる作品の濃すぎるファンブック!

 アニメ第3期の放送も始まり、連載の方もいよいよ佳境の『ゴールデンカムイ』、初の公式ファンブックであります。既に単行本全巻を持っている方にも楽しめる、いやそんな方だからこそ楽しい解説や初出の情報満載の、間違いなくファン必携の一冊であります。

 2014年から連載を開始し、この11月までで単行本第23巻までが刊行された『ゴールデンカムイ』。本書はそのうち第21巻(北海道編の再スタート)まで(一部最新巻までの登場人物も掲載)を中心に構成されています。
 本書の主な内容を挙げれば――
・黄金神威人物総覧(キャラクターガイド)
・実録!! ゴールデンカムイ(年表、アイヌ語・ロシア語ガイド、登場動物紹介等の企画記事)
・黄金資料館(描き下ろし漫画、作者への質問箱・インタビュー、エッセイ等)

 このとおり、まずファンブックとしては定番の内容であります。ありますが、その密度と情報量が(ページによっては)尋常ではないのであります。

 特に本書のかなりの割合を占める人物総覧は、一キャラクター多くて4ページ、大半は1、2ページなのですが、そのスペースに誕生日、身体情報などの基礎データや作中の活躍などを詰め込んでいるので密度がえらく濃い。
 私は電書版で購入したのですが、8インチ弱の画面では拡大しないと読みきれない密度のため、これは書籍で購入したほうが良かったか――と思いきや、書籍を購入された方からは拡大できる電書がよかったという声もあり……まあ要するにそれだけの密度なのであります。

 もちろん、基本的に作品を読んでいればほとんど把握できる情報ではあるのですが、そこにこれまで明らかになっていなかったフルネームなど、ちょこちょこと新情報が含まれているので油断できません。
 そして何よりも、各キャラクターに付されている作者からのひとこと(これも定番といえば定番ですが)が、キャラクターの誕生秘話や作中の位置づけ、作者の想いなどが散りばめられていて必見なのであります。特にただ一人、全くひとことでは済んでいないあのキャラクターへの熱い想いなど特に……

 一方、「実録!! ゴールデンカムイ」は、まあいわゆる企画記事コーナーで、正直なところ評価に困る部分も多いのですが――ただ一つ、「増補改訂版 ゴールデンカムイBACKGROUND」は、公式サイトの年表の完全版というべきかなり丁寧な内容で大満足。
 何よりもこれまで明記されていなかった(はず)の、物語の始まりの時期が1907年2月と示されたのは、年表マニアとしては何よりの収穫と感じます。

 そして「黄金資料館」は、まさに宝の山というべき内容で――描き下ろし漫画4本のうち3本は、まあ単行本のおまけページの延長的な内容だとしても、残るエッセイ的な1本は、大げさに言えば、今の社会におけるアイヌ文化の需要の在り方と、本作の姿勢を描いた内容なのが印象深い。

 また、インタビューと質問箱は貴重な作者のコメントばかり。また、そして何よりも二つ収録されている作者の雑記(エッセイ)、「スギモトサイチのこと」「なぜ鶴見中尉の名前を篤四郎にしたのか」は、タイトルに表れる本作の重要人物二人のモデルを語った文章なのですが――特に後者が凄まじい。
 一通の書状の記述から、一人の人物の隠された過去を辿っていく様はほとんど歴史ミステリというべき内容で、これがあの作中の衝撃のエピソードに繋がったのか! という驚きがあるのです(そしてラスト一行に凝縮されたものの凄みたるや……)。


 その他にも、作中でのキャラクターたちの移動経路を記したピンナップが結構便利だったり、「誰? このひと」の謎の人物の正体が判明(?)したりと、とにかく濃い本書。記述の所々からは、物語が既に終盤に入っていることが伺われるのですが、その時点でこうして作品を一度振り返るのも面白い――そう思います。


『ゴールデンカムイ公式ファンブック 探究者たちの記録』(野田サトル 集英社ヤングジャンプコミックス) Amazon

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