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2020.11.05

『半妖の夜叉姫』 第5話「赤骨御殿の若骨丸」

 妖術で次々と人の骨を抜き取る妖怪の出現に、退治に向かうせつなととわ。その正体は、かつてもろはに倒されたという妖怪・檮コツの息子・若骨丸だった。若骨丸を追う二人は、取り損ねた檮コツの首を狙うもろはと合流し、赤骨御殿に乗り込む。しかし檮コツは麒麟丸の配下の一人だった……

 前回、戦国時代に戻ってきた(やって来た)主人公たちですが、何となく日常――といってもあくまでも彼女なりの――に戻った今回。
 結局夢の胡蝶探しに燃えているのはせつなだけで、とわは妖怪退治屋に戻り、もろはは賞金稼ぎに――という殺伐とした日々に戻るわけですが、そこで早速妖怪退治屋に持ち込まれたのは、骨を抜かれてぶよぶよになった(冷静に考えるともの凄くグロい)死体の数々であります。

 どうやら橋の上で通りかかる人間(や獣)の前に現れては、口から骨を抜き取っている奴がいる――というわけで、何となく『犬夜叉』に似たようなシチュエーションがあったような気がしますが、まさにその時のこともあって、飛来骨を受け継いだ翡翠ではなく、せつながこの仕事を請け負うことになります。
 一方、さっそく三つ目上臈と根の首の残骸を屍屋――妖怪の賞金首や残骸などを商う、何となくモンハンっぽい商売――に持ち込むもろはですが、店の主には散々買い叩かれた末に、以前彼女が首なしで持ち込んだ大妖怪・檮コツの首を探してこいと借金絡みで言いつけられ、付け馬としてあまり可愛くない狸妖怪・竹千代を付けられる始末。この辺り、ある意味実に戦国時代っぽい世知辛さというか、もろはあんなに明るいのにえらく苦労して――とさらに好感度が上がります。

 そしてこの妖怪・若骨丸(七人隊とは無関係)こそは、もろはに倒された妖怪・檮コツの息子であり、父を復活させる材料として、骨を集めていた――というわけで話が繋がり、若骨丸を追いかけてきたとわとせつな、檮コツを探してきたもろはが若骨丸の根城の赤骨御殿で合流することになります。
 しかしここで、実は檮コツを倒したのはもろはではなく(というかもろはかどうかは不明)で、彼女が気が付いたら目の前に檮コツが倒されていて、しかも彼女の赤真珠はその時に奪ったものだという、何だか締まらない真実が判明。もろはを父の仇と狙う若骨丸こそいい面の皮ですが――ここでさらに意外な事実が判明します。

 もろはにくっついてきた冥加(っていたんかお前!?)によれば、檮コツは大陸から渡ってきた四凶の一人であり、彼らを束ねる者こそが、時代樹から聞かされた麒麟丸だというではありませんか。
 思わぬところで因縁が繋がり、ここで若骨丸と檮コツを倒してしまえば、そのままなし崩し的に麒麟丸との戦いに続いていきそうなところではありますが、そこで逡巡するようなもろは、そしてせつなではないわけで、容赦なく戦いはスタートすることになります。

 そしてここでついにもろはの覚醒技とでもいうべき「国崩しの紅夜叉」モードが発動。犬の大将が奥方に送った紅(って犬夜叉が桔梗に送ったやつかしら……?)を唇に塗ると一分間だけ超パワーアップ! というわけで、てっきりライバルになるかと思った若骨丸はあっさり粉砕。
 復活しかけた檮コツも、唐突に「謎の旅のお坊さん」の言葉を思い出したせつなと、色々と躊躇っていたけど吹っ切れたとわの前に倒されるのでした。(まあ、四凶の中では一番逸話が少ないからなあ……)


 というわけで、ある意味通常営業的な妖怪退治エピソードではあるものの、内容的にはもろはの主役回的な印象の今回。彼女の稼業の様子や紅色真珠を持っている理由、名前だけは以前から出ていた「国崩しの紅夜叉」姿の登場と、彼女のキャラクター・設定の掘り下げが行われた形であります。
 もっとも、もろはが冥加をお供にしているわりには両親のことをあまり覚えていないのは相変わらず不思議、というか説明を伏せすぎに思えますが……

 一方、何だかいまいちな印象だったのはとわ。若骨丸を見て美少年だから倒すのは可哀想とか、もろはが檮コツを倒したのは誤解なんだから話せばわかってもらえるだろうなどとズレた発言の連発で、戦国育ち組との対比なのだとは思いますが、視聴者の反発を買うようなキャラ付けにしかなっていないのは残念なところでした。
 せつなの方は、そんな姉よりももろはの方を認め始めた印象すらありますが――さてこの先三人の関係性はどうなるのでしょうか。


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公式サイト

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