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2020.11.16

「コミック乱ツインズ」2020年12月号(その一)

 号数の上では今年最後となる「コミック乱ツインズ」。12月号の表紙は『鬼役』、巻頭カラーは『仕掛人 藤枝梅安』。そして今号で最終回の『いちげき』は、表紙で「最終回!!!!!!!」と、!マークを七つもつけて紹介されています。今回も印象に残った作品を一つずつ紹介いたします。

『仕掛人 藤枝梅安』(武村勇治&池波正太郎)
 前回で白子屋菊右衛門との決着がつき、江戸を売ってほとぼりが冷めるまで熱海で温泉に入っていた梅安(本作の定番の時間潰しですな)。そんなところに追いかけてきたのは彦さん――音羽の元締めから白子屋の仕事料を預かってきただけでなく、梅安が京で鍼修行をしていた頃からの友人が病で明日をも知れない身となり、家族が梅安に診てもらいたがっているとの知らせを持ってきたのであります。
 さらにもう一つ厄介事がと言い出す彦さんですが――と、今回は新章「梅安影法師」のプロローグというべき内容となっています。

 白子屋を倒したとしても、彼がいわば一つの組織を作っていた以上、それを継いだ者がいるわけで、その残党が梅安を狙う――という展開なのですが、ここで送り込まれるのは石墨の半五郎と三浦十蔵という二人の仕掛人。この見るからにただものではない二人に加えてもう一人、白子屋との決戦直前に梅安を狙って失敗した(そして梅安の怒りに火を付けてしまった)鵜ノ森の伊三蔵も雪辱に燃えることになります。
 もっとも、この三人は三人で色々と問題がありそうですが、なにはともあれいきなりの強敵三人の登場に、果たして梅安はいかに抗するのか――物語はこれからであります。


『いちげき』(松本次郎 永井義男)
 前回、ついに因縁の宿敵であった伊牟田との決着をつけ、一人生き残った丑五郎。やはり精も根も尽き果てていたらしい益満のおかげで、トヨとともに無事生還し、そして故郷に帰る彼女とともに丑五郎は旅立って――とはなりません。まだ決着がついていないとトヨに告げ、一人江戸に残る丑五郎ですが――しかし既に戦う理由も何もかも失ったはずの彼に、何が残っているのか?
 憑かれたように枯れ野原で刀を振り回す彼の姿と重ね合わされるように、慶応三年末から明治二年までの史実の流れが描かれ、物語は終わりを告げることとなります。

 その激動の時代の中で、一つの大きな役割を果たした一撃必殺隊。しかしその事実を知る者は、いや一撃必殺隊の存在そのものを知る者もなく、時代は変わっていく――ある意味実にらしい結末を迎えることとなった本作。
 果たして丑五郎は「決着」をつけることができたのか(私はできたのだと思いますが……)そしてその後彼は如何なる運命を辿ったのか――物語冒頭に登場したあるものを描き、余韻を残して『いちげき』完結であります。


『勘定吟味役異聞』(かどたひろし&上田秀人)
 ようやく京に到着したものの、探索はまったくはかどらない状態の聡四郎一行。そんなところに紀伊国屋文左衛門は、島原遊郭で妓から話を聞いてみては、と言い出し、聡四郎もそれに乗ることに――と、言ってももちろん紅さんに鉄拳制裁されるようなことはせず、紀文の金で豪華宴会という楽しいことに相成ります(またここで描かれる料理が滅茶苦茶旨そうで――もぐもぐ食べている玄馬がかわいい)。
 そこで何となく自然な流れ(?)で出てきたのは、貨幣改鋳にかかわる京の後藤家のお話。後藤家の貨幣改鋳といえば、そもそもの聡四郎と紀文の因縁の始まりだったわけですが――その帰りに、聡四郎ストーカーとなった永渕さんが登場、わざわざ後藤家のことについてヒントを出してくれたりするのも親切(?)であります。

 ここで何となく情報を得た気分で江戸に帰ることになる聡四郎ですが(何だか来た目的と違う内容のような)、よせばいいのにまだ陰謀を巡らす奴らが――という引きで次回に続きます。
 しかし後藤家の秘密については既に以前、吉宗と江戸の後藤家の密談で大枠は語られていたような気がしますが、さて……


 次回に続きます。


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